第49話 恨みはすべて魔王のせい!③


「マサト様……誠に申し訳ありません。私は嫌われたとしても、仕方ありません。ですが、これ以上マサト様を騙すようなことなど……」


 これは、良くない、このノリはまずいよ? 

 あ、その曇りのない瞳を俺に向けないで。

 心臓止まりそうだから、俺が罪悪感で死んじゃうから。

 今までのほとんど嘘だから。


「私にはもうできません! マサト様。それを私はこの身を捧げてでもなど……愚かなことを考えて」


「……え?」


 今、アンネ、何て言った? 

 ……捧げる? 

 身を……捧げるって、

 こんな絶世の美少女メイドが?


 なんとぉぉぉぉーーーーーー!!!!


「マサト様にそんなものは必要などころか……軽蔑されるだけだったのに……」


 えぇぇぇーー!!

 そんなことないよぉぉ!

 その方が頑張ったよ! 命かけた! きっとかけた! 人生もかけたよ!!

 じゃあ、何か?

 もし、マオに魔王押し付けられてなくて、マオが魔王としてこの国にちゃんと攻めてきたら、俺は今頃……アンネに誘惑されていたと。

 昨日も夜までマオを探してることもなかった。

 こんな苦しい、五日後にはバレる確定の嘘もつかなくて済んだと……。


「頭にきた……」


「はい……申し訳……マサト様、私はどんな罰でも受けます。でも、魔王だけは……この国だけは救って」


「違う! そんなことを言ってるんじゃない!」


「え?」


「俺が許せないのは……マオだ!」


「……!? マオ……魔王?」


「そうだ!」


「魔王が(居酒屋に)現れなければ……アンネは今、こんなこと(体を捧げるのは間違いとか)を考えずに済んだんだ! マスローさんだってこんな(素晴らしい)命令を……アンネが(せっかく体を捧げると覚悟をしてたのに)嫌になるようなことはなかった!」


「マサト様……」


「俺は絶対に魔王を許さねぇぇ。本当だったら今頃……アンネと(した後のはずで)お茶を飲んでたはずなのにな! アンネ!」


「は、はい!」


「俺は行ってくる! 連絡は頼んだ。影丸! 行くぞ! 絶対に見つけるぞ。いや、ぶっ殺してやる!」


 俺は湧きあがる真の怒り……童貞男子の怒りによって、城を飛び出した。




 部屋に残されたアンネは……放心するように自分の胸に手を当ててしまう。

 不思議と顔も熱いが、心臓が……、


「私、こんなに……ハッ! いけない! すぐに報告と連絡をしなくては!」


 アンネは顔色を変えて、雅人の足を引っ張らぬように足早に部屋をでる。


「マサト様……いえ、勇者様……」


 そのアンネの顔には一切の影がない、自分の為すべきことを知った人間の顔をしていた。



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