第17話 勇者の仲間たち⑧


「はわわ!」


「アホ騎士といい、ミアといい、この国は適材適所っていう言葉を知らんのか!?」


 憤激する俺の横でリンデマンさんが今頃になって、ミアの経歴を調べているようだ。

 だから、そういうのは事前に確認しろよ。


「あ、いや! これは力を測った後に開けてくれと言われたのですぞ! えー、何度も学園は騎士団への入団はどうかと説得はしたらしいのですが、ミア殿本人の強い希望で……」


「ぐう……そ、そりゃあ、確かにこれを実際に見なけりゃ、信じられんかもしれんが」


 まあ、マッツやミア本人の希望が通っているという意味では良い国とも言えるけど……。

 どうすんだよ、こいつら。

 チーム編成がまったく思いつかんぞ。


「マサトさーん!」


 そこにミアがホッとしたような眩しい笑顔を見せつつ、こちらに駆け寄ってきた。


 返り血まみれの姿で。


「見てくれましたか!? 私のサンダーブラスト。お役にたてそうですか?」


「お、おう……見てたぞ? でも、ミア? あ、あれは魔法じゃ……」


 うん? と可愛らしく首を傾げるミア。

 全身がオーガの返り血で染め上げられているが。


「サンダーブラストです」


「え? いや……あれは物理的な拳で」


「私の得意魔法サンダーブラストです」


「……」


 こ、この子、あくまで魔法と言い張る気だな。

 本当にいい子なのかな?

 それに血まみれでちょっと生臭いよ、あなた。


「サンダー……ブラスト……ですよ? マサトさん……」


「ひっ!」


 気のせいか、血まみれのミアの表情が変わったように……。


「あ、ああ、見たぞ! あまりに見事な魔法で本当に吃驚したよ! そ、その……惨打・武羅麈屠? す、すごいじゃないか、ミア! 魔王討伐に推薦されるだけのことはあるわ!」


「なにか、発音が違うように感じれらますが、サンダーブラストですよ?」


「ああ! 分かってるよ! 惨打・武羅麈屠だろ? ほ、ほら俺は違う世界から来たから、発音が下手なんだよ。あはは……」


「他は問題ないと思うんですが……そうですね! 魔法の名前は言いづらいんですね!」


「お、おう! そうだぞ!」


 やだ、この子、ちょっと面倒くさい。




 勇者のパーティーメンバーの能力の披露は終わり、全員、天幕に集まってきた。

 マスローさんとリンデマンさんが真剣な顔でこちらを見ている。

 というより、カッセル王国宰相と大臣としての表情を作っている感じで、何故かイラつく。


「勇者マサト殿、これがカッセル王国の各方面から派遣された魔王討伐に推薦された者たちです」


 俺はこれから戦友になるだろうこの三人を見渡す。

 まだ、目を覚ましたばかりで顔色の悪い騎士、マッツ・ロイス。

 何かをやり切った表情で何故か顔がツヤツヤしているホルスト・メリーノ。

 全身をオーガの血でまみれた魔法使いミア・ゾフィー・シュバンシュタイン。


「…………」


「それでいつ、魔王討伐に!?」


「行けるか!!」




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