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〈カチ・カチッ!〉
目の前に真っ白い画面が現れた瞬間正直僕は固まってしまった。
正確にはキーボードから数センチ上の辺りで10本の指が浮いた状態だ。
ところで小説ってどう書くんだ??
そんな疑問が浮かぶのはそれ相応の理由がある。
学生時代、苦手科目は国語、更に言えば読書感想文は苦手中の苦手で
夏休み終了時に間に合わず10月末に提出するほど唯一僕を苦しめる課題
だったのだから。
端的に言うと普段から本を読まないから読解力がない、読解力がない人間
が文法に則りながら文字を操り、文章を通し読み手に伝えることなど出来る
はずがないのだ。
確かに頭に描くべきストーリーはあるにはあるが、それは明確なものでは
なくフワッと軽く透けて見えるのだから指がフリーズするのは当然だ。
小説の書き出しはどうする?
それより誰視点で書けばいいんだ?
ドラマみたいなナレーションも必要なのか?
CGアニメじゃないんだから情景描写は当然必要だよな。
ネット検索によると400字詰原稿用紙換算で250枚以上ってどんだけ
の枚数だよ~ いくら何でも多すぎだろ!
そもそも僕の物語は単行本一冊分に相当するぐらいボリュームがあるのか?
そんな愚痴にも似た疑問を抱きつつも前に進む事だけに集中し、とりあえず
その日その日、目に浮かぶシーン(カット)を僕は主人公目線で見たままを
出来るだけ丁寧に描き続けることにした。
〈カチャ!〉
〈カチャ!〉〈カチャ!〉……!「違うって~ この漢字変換腹立つな」
〈カチャ!〉〈カチャ!〉〈カチャ!〉……
……
…………
………………
こんな稚拙な文章でいいのかな?
あれ? 主語が3つもあるじゃんか。そもそもこの文章破綻してるよな。
会話はわりとスムーズなのにな~
まっ、どうせ完成出来っこないよ。ムリ、ムリ!
ホント文章ってまるでパズルだよな。ムズイ、かなりムズイ。
はぁ~ 学生時代もっと勉強しとけば良かったな~
その後も僕は目の前のワンカット、ワンカットを乏しいボキャブラリーを
駆使しながらとにかく空欄を文字で埋める作業に徹した。
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