ガチMMO廃の俺、知識チートで無双する ～最速レベリング、格上狩り、隠しジョブ、何でも知っている俺を新人冒険者だと舐めて後悔したところでもう遅い、Lv1から最強冒険者へと成り上がる～

164

「ねえおにいちゃん、あのベスクって人を助けてあげないの？　もうあんまりHPがなさそうだよ」

　孤軍奮闘（こぐんふんとう）する彼を見てリズが言った。

「そうしてあげたいけど、助けていいかどうかを聞かなきゃいけない。もし彼がエリートモンスターをソロで倒したいのなら横槍は禁物だ。経験値やレアアイテムを独り占めしたいかもしれないし」

「でも狩場にはそんなルールはないんでしょ？　そんなの横暴な独占行為じゃない」

　すかさずコトハが口を挟む。

「当然ないけど昨日の一件を振り返れば分かることさ。冒険者によって様々な考えがある。事前にトラブルを回避したいのなら聞いておいて損はない」

「確かに……無理矢理文句を付けてくる冒険者は少なくないのだ。皆（みな）が皆（みな）、良心的だと思っていたら痛い目を見る。それはバルドレイヤで嫌というほど実感したのだ」

　フィイが有無と頷く。かたわらのコトハもまた納得いったように首肯（しゅこう）していた。

　異論もなくなったようだし、早速ベスクに状況を聞いてみよう。

「なあそこのあんた！　かなり苦戦しているみたいだけど手伝いはいるか？」

　男は戦闘中ながらも、すぐに視線だけを寄こした。

「おおぉ、これはちょうどよかった！　野暮用でな、この馬鹿（ばか）烏（がらす）を仕留めんといけんのだが、いかんせん強すぎる。どうやら手前（てまえ）には荷が重すぎたようだ、加勢とあらば心強いぞ！」

　ベスクは俺の意見をあっさりと承諾（しょうだく）。

　緊急事態ゆえに彼をパーティーへと招いての共同戦線となった。

「おぉ、勝手にHPが回復しておる……これはいったい……」

　身に纏（まと）うハート形の小型ロボットを見てベスクが目を見張る。

「リズのスキル、ヒーリングドローンだ。そいつが付いている間は継続回復状態となる。これでしばらくは安心だろ」

「そうさな、おかげさまでようやくアレに集中できる。まったくカアカアとうるさい鳥め。食物連鎖の上下関係を分からせてくれるわ！」

　ベスクの怒号に応じて、俺たちもまた武器を取り出す。コトハと彼は前線で、俺は中遠距離からダメージを出し、フィイとリズは支援に徹する形となるだろう。

　冒険者が増えたことで仕切り直しとばかりに咆哮（ほうこう）するフレースヴェルグ。ターゲットをコトハに定めて、嘴（くちばし）から雷属性の息吹を掛け放つ。――直線状が焦土と化した。

　それでも事も無げに躱（かわ）してのけるのは〝バーサーカーⅢ〟により迅速さを高めた狂戦士。大技をもらうほど彼女はビギナー冒険者ではない。

　空いた隙を見てベスクが大烏の元へと駆（か）け馳（は）せる。

「消し炭となってしまえ――レパードクラッシュ！」

　振り下ろした大斧がフレースヴェルグの満身を切り裂く。同時に、モンスターに防御力減少デバフが付与された。レパードクラッシュによる追加効果だ。

「はあああぁぁ！」

　これを好機と見たコトハが反転する。ひとたび二刀を舞わせれば幾度（いくど）となく怪物の体が斬り刻まれる。その斬撃は目で追うことすら難しい。

　さらに空から降り注いでくる弓矢の大群がエリートモンスターのHPを掠（かす）め取（と）る。スキル、フェリルノーツだ。

　彼女たちにヘイトが向けば俺がダメージを叩き出せる。反対に俺が狙われれば、前衛二枚がフリーとなる。後方支援も手厚い、たとえエリートだろうが俺たちの敵にはならないだろう。予感は正しかった。

「これで――終わりよ！」

　戦闘開始から一時間。俺たちはひとりとして犠牲者を出さずに〝突然変異フレースヴェルグ〟を討伐。膨大な経験値とレアアイテムを獲得した。そしてシステム音声が業績の解放を報せる。

〝新たな業績を獲得しました　黒森地帯の覇者〟

　見事、快勝を収めた俺たちはガッツポーズで祝杯を上げた。