第13話 オカマッスル!
「これは!?」
「あらぁ知らない?
「だったら、負けなければいいだけだ!」
俺の先行で勝負は始まった。
最初の手札はお互いに4枚。先攻でのドローは無しだから完全に4枚からの開始。
肝心の内容は……そこそこいいな。防御手段はあるし、比較的有利にゲームを進められるかもしれない。
「俺は
大型の
あの何でも屋漫画に出てくる、100tハンマー並みの大きさを誇る武器に襲われたくはないと召喚した自分でさえ思ってしまう。
その大きさにビビっている俺に対して、ウッド・ハンマーは腰をひねってこちらを確認し、グッと親指を立ててみせた。
ウッド・ハンマーのおっさん……!
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
「俺は召喚に成功したウッド・ハンマーの効果を発動。手札の
「あらぁ~、早速手札交換? 手札が悪かったのかしらぁ」
「言っていろ。俺はカードを1枚セットしてターンエンド」
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朝陽 手札2枚
●モンスター
●スキル
伏せ1枚
カルンガ 手札4枚
●モンスター
なし
●スキル
なし
――――――――――――――――――――
よし、
ウッド・ハンマーの能力は高いものだし、防御手段の伏せスキルもある。この布陣は上出来だ! 楽には突破できないはず!
「ワタシのターン、ドロォ~!」
勢いよく左腕の
なんだろう、それに加えて飛び散る星やハートのマークが見える……。
ふざけているみたいだが油断はできない。
何せ、あのインヘリタンス・エンキドゥを操っていた巨漢の雇い主であるからだ。
いきなりあれより強力なモンスターが出てきてもおかしくはない。
「ふっふ~ん。ワタシはまずノーマルスキル、『フォートレスラー入場!』を発動するわぁ」
「フォ、フォートレスラーだって!?」
「この効果により、ワタシはデッキからコストが1以下の『フォートレスラー』と名のつくモンスター1体を手札に加えるわ。これで
俺の頬を一筋の冷や汗が流れる。まずい、これはまずい相手だ。
フォートレスラーといえば、一時期はブレイクコードの環境でトップシェアになっていたカテゴリ。
使用できるカードが規制されて少なくなったり、後から出たパワーの高いカード達に埋もれはしたものの、その力は未だ健在だ。
モンスターを召喚するコストがコストじゃないとよく言われるのは記憶に根強く残っている。
「さぁて、ビッグフット・スタンプは
分厚く口紅が塗られた口がにんまりと歪む。
そしてカルンガは手札を1枚だけ右手に取って
「手札を1枚コストとして、フォートレスラー ビックフット・スタンプをしょうかぁん!」
相手のフィールドに現れたのは、全身焦げ茶色の毛むくじゃらで、アンバランスに太い両足を備えた猿人。
俺がいた世界ではUMAとして有名なビックフットをモチーフとしたモンスターだ。
そして、フォートレスとプロレスラーが由来であるフォートレスラーの名の通り、あの猿人は鉄壁の如き筋肉を備えたプロレスラー。
しかしなんだってんだこの世界は!? 男と男型のモンスターはマッチョしかいないのか!?
カルンガと同時にサイド・チェストし始めて気持ちが悪い!
――――――――――――――――――――
フォートレスラー ビックフット・スタンプ
――――――――――――――――――――
「さぁてと、今コストとして墓地に送ったのは『フォートレスラー キャリー・ファイアーマン』よ。なんで送ったカードを教えたのかわかるわよねぇ?」
「……フォートレスラーと名のつくモンスター召喚のためのコストとして墓地に送られた場合、デッキから自分よりコストが低いかコスト0のフォートレスラーを手札に加えられるためだろ」
「ごめいと~う! 後でカルンガ商店スタンプカードあげるわね。ワタシはこの効果で、デッキからフォートレスラー アロー・ファルコンを手札に加えるわ!」
異世界でもフォートレスラーの
共通効果だから、フォートレスラーと名のつくモンスターは『全部が』デッキから仲間を手札に加える効果を持っている。
だから召喚のためのコストが実質0だ。インチキだろ!
「さらにワタシは、一度発動したらずっとフィールドに残るオブジェクトスキルを発動するわ。この『フォートレスラーの
「げっ!?」
「フォートレスラーの
まずい、非常にまずい。フォートレスラーの
さらに、ビッグフット・スタンプには戦闘した時に発動する厄介な効果がある……!
「さぁ行くわよ! ビッグフット・スタンプで
「全然ラブリーじゃない!?」
毛むくじゃらの猿人がパチンとウインクをし、宙に高く飛びあがる。そのままウッド・ハンマーのおっさん目掛けて自由落下し、巨大な両足で彼を踏みつぶした。
同時に起こる衝撃波が俺に襲い掛かる。でも、その衝撃はハリボテみたいなまやかし――
「っ!? がっ――!?」
衝撃波に全身を殴りつけられた。
後ろに、吹き飛ばされて――
「ぐっ!? ああ゛あ゛!?」
「あっはっはっはっは! きれ~に飛んじゃったわねぇ!」
「な、にが――」
何度も芝生の上をバウンドした俺の体がやっと止まる。
手のひらは地面と擦れて傷ができているし、衣服は多分、潰れた草の水分と土で汚れまみれだ。
何が起こった? さっきの勝負はこんな衝撃はなかったはず。なんで俺の体、こんなに痛んで――
「きちんと働いているようね。強制的に衝撃を上げる装置は」
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