第14話 立ち上がる理由とは
「この
衝撃最大限の機構・機能? ふざけるな。カードゲーム世界の勝負だと、どう見ても違法だろそれ……!
痛む体に鞭を打って立ち上がる。興奮させる物質とかで痛みは少なかったんだろうけど、段々とズキズキとした痛みがやってくる。
「何を使っているの! 同意をとっていない過度な衝撃を与えるなんて、
「悪いけどワタシ、
吹っ飛んだ俺の姿を見たリームがカルンガへ叫ぶが、彼は口元に手を当てて笑うだけだ。
さすがは無理矢理女の子を捕まえて売り飛ばそうとする極悪人。性根が腐っている。正々堂々とした
「そ・し・てぇ、戦闘で相手モンスターを破壊したビックフット・スタンプはここで効果を発動するわぁ。ワタシはデッキから『フォートレスラー』と名のつくモンスター1体を手札に加える! この効果でフォートレスラー ボストン・クラブを手札に!」
さっきはアロー・ファルコンを手札に、今度はボストン・クラブを手札に。
あの2体は厄介な能力を持っている。本当に危ない状況になってきたんじゃないか……!?
俺は足を引きずるように進み、元のプレイしていた場所まで戻る。やっとこさ戻ってきた俺を待っていたのは、カルンガの下劣な嘲笑。
そして勝負が再開したためか、俺の目の前にライフの表示が出てきてその数値を減らす。
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朝陽
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「あっらぁ~? 一撃でボロボロじゃな~い。今勝負を投げ出したのなら、これ以上痛い目は見なくて済むわよぉ?」
「誰が勝負を投げ出したりなんかするか! いつつ……」
見栄を張ってみせたが、正直怖い。だけど、これ以上ダメージを受けなければいいだけの話だ!
今の手札には、クロンのもう一つの姿である
次のドローで何とかする!
「な、何を言っているの!? 私のためにあなたが傷つく必要なんて!」
リームが血相を変えて叫ぶ。確かにあの人のために俺が傷つく必要はないんだけど……今、あの人を救える人は俺だけだ。
クロンにあの人を助けようって、自分から言ってしまったし。
――ああ、わかっている。俺がこんなにも必死な理由は、多分あの出来事があるからだ。
「あらそぉう? じゃ、ワタシはこれでターンエンド」
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朝陽
●モンスター
なし
●スキル
伏せ1枚
カルンガ
●モンスター
フォートレスラー ビックフット・スタンプ
●スキル
フォートレスラーの
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「俺のターン、ドローッ!」
声を出すと体が痛む。だけど、気合だけでもアイツに負けないように力を振り絞ってカードを引く。
……引いたカードはダメージをパワーに変えるエレキ・チャージャーか。ベストじゃないけど、このカードを使ってやれるだけやる!
「俺は手札から
「このターン中の? まさかぁ、自分でダメージを受けるカードを仕込んでいるとでもいうの?」
「その通りと言うけど、その前に墓地に存在するウッド・ハンマーの効果を発動! 自分の手札から
墓地から手札に舞い戻るドワーフのおっさん。これでエレキ・チャージャーを捨てた分のコストはチャラとなった。
本当に便利なカードだ、さすが
そしてこれなら、
「俺は手札の
俺とカルンガの間で天へと突きあがるように発生する竜巻。
地面の木の葉と土を巻き込んで吹き上がるその中から姿を現したのは、蛇の神と言ってもいい姿の竜。いや、漢字で書くなら龍か。
これが本当にあの騒がしいクロンが変身した姿だとは思えない。
でも龍の姿でも感じられる雰囲気は、
「ド、ドラゴンッ。来たわねぇ」
『リームならずアサヒさんにまで酷いことを……許せません!』
「ク、クロン? そのままで喋れるのか?」
声を発しているというよりは、空気の振動で脳に響いてくるような感覚。もしかしたらテレパシーのようなものかもしれない。
『はいっ! それよりも、エレキ・チャージャーさんの電撃でパワーアップです! あのゴリラ男を倒してしまいましょう!』
「そうだな。サイナス・クーロンの効果! このカードが場に出た時、俺は1ポイントのダメージを受ける! だけど、エレキ・チャージャーの効果でそれをサイナス・クーロンのパワーに変換!」
『グオオオオッ!』
龍としてのクロンによる、怒りを含んだ咆哮。彼女の周囲に暗雲が発生し、黄色の雷撃を彼女の体に流し込む。
だけどそれは、攻撃ではなくて彼女の能力を上げるエネルギー注入だ。
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「はあっ!? 何よそれぇ、自分でダメージを受ける効果がそのドラゴンの能力なのぉ? ただのデメリットじゃない。上級ドラゴンなら、普通は1枚で完結するような能力を持つはずだけどぉ。まっ、姿はそこそこ奇麗だし鑑賞用商品ね」
『黙ってください! 私も、リームも商品なんかじゃありません! あなたを倒してリームは返してもらいます!』
「よし、バトルフェイズだ! サイナス・クーロンでフォートレスラー ビックフット・スタンプを攻撃!」
『虚空のサイクロン・ブラスト! カミナリプラス!』
サイナス・クーロンの口から放たれる、電撃をまとった竜巻。それが筋肉質な猿人を巻き込み、その姿を緑と黄の奔流の中へと消し去った。
カルンガ
『やりましたよアサヒさん! これであのゴリラ男は――えっ?』
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