第8話 仲の悪いメイド達
「では次は相手を増やすぞい。2対2じゃ。」
師匠のアナウンスとともに戦闘が開始された。レオが索敵を開始する。
「あっ、まずい。タクミ岩陰で伏せて。」
飛んできたのは炸裂弾だった。スピードがない分だけ影響範囲が広い。タクミとレオは共に避けきれずに少し光ってしまった。
光ると相手から視認されやすくなり不利になる。これは怪我をした場合に不利になることを想定した設定だった。
「索敵で位置がバレたみたい。移動するよ。タクミは発射地点を襲撃。僕はそれを援護する。」
「”了解。”」
タクミは一気に前方に駆け出した。レオは潜まずに見晴らしの良い高台に姿を見せて援護兼陽動の構えを取る。レオの腕ならあの程度の砲撃は撃ち落とせるため、射出の準備をしていれば脅威ではない。今すべきはもう一人の位置と武器の確認であった。
そこで背後から気配を感じた。考えるよりも速く前方に飛び出して落下しながら後ろを見ると、ラピルの剣撃がレオの残像を切り裂いていた。
(ラピルか、危なかったなぁ。)
高台から低い位置に落下しながらレオはラピルに三連の矢を放り込む。ラピルはそれを剣で叩き落とした。
「プロテクト:ムーブ」
レオは狙撃に備えて、もう一人がいると想定される方向に向けて自分の動きに追随するシールドを張った。これで防御と攻撃を同時にできる。
案の定、もう一人から砲弾が飛んできた。その砲弾の着弾予想位置がレオとラピルの間であったため、レオは標準をラピルから外して砲弾を射抜き、そのまま軌道を曲げてラピルを狙った。射抜かれた砲弾が激しく発光したせいでラピルは光に紛れた矢を見失い、足に被弾してしまう。
(やっぱり発光弾だった。それにしてもラピルとソラリスは相変わらず仲が悪いなぁ。ラピルに対発光装備が無いのに発光弾を撃つんだもんね、場を乱してあげるから後は勝手に何とかしなさいとか思ってそう。これでソラリスの位置がわかったからラピルを仕留めてタクミと合流だね。)
「煙玉。」
レオが射た矢はラピルの足元手前に刺さり、大量の煙を吐き出した。ラピルはレオの能力を知っているため迂闊に突っ込めない。剣術ではラピルの方が上だが、真面目で搦手の苦手なラピルはレオにとって簡単な相手だった。
「投網。」
全方位シールドで防御しているであろうラピルに向かって、シールドごと拘束するために網状に広がる矢を放つ。煙の中で薄く光って見えるラピルの足を目印にした。
目的通りに網はラピルを拘束してそのまま後方に吹き飛ばした。ラピルは剣で網を切って脱出を謀るが、そこに追撃の矢が殺到する。何本かは打ち落としたが、網を切ることで対応が遅れたため、ラピルは為す術なくその全身を光らせた。リタイアである。悔しいのか、しゃがみ込んで項垂れている。
「さて、タクミの方を援護しなくちゃ。」
レオが砲撃発射地点の方に向かおうとすると、爆発とともに何かが勢いよく上空に飛び上がるのが見えた。光り輝く泣き叫ぶソラリスだった。
「良かった、あっちも制圧したんだね。」
落ちてくるソラリスはタクミに受け止められて、そのままお姫様抱っこでレオのところに連れられてきた。ソラリスは両手で顔を隠している。顔が真っ赤だった。
「今回は連携無しだったね。あの爆発は何だったの?」
「”相打ち狙いだと思うけど、このメイドさんが真下に弾を撃とうとしたから、このトンファー?みたいな武器を捌いて遠くに着弾させたんだよ。それでそのまま蹴り上げた。”」
ソラリスのお腹には二本のトンファーのような形状の物が乗っていた。
「ああ、形がトンファーに似てるね。それはランチャーの魔術具だよ。指定した効果の砲弾を撃ち出せるんだ。近接格闘にも使えるようにそんな形をしてるよ。でもそれにはこの服を光らせる効果は無いから殴ってこなかったでしょ?」
「”めっちゃ殴りかかってきたぞ。”」
「あら。」
「あのー、そろそろ降ろして頂きたいのですが・・・。」
気まずそうに抱えられていたソラリスがやっとの思いで口にした。
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