第27話 パノラマス大賞

「また来たのか。おまえやっぱり私のこと好きだろう。キスぐらいならしてやろうか」

「顔以外大っきらいだよ!」

 イオちゃんとドクター・ヘルの闘争は毎日のように続いた。

 しかし一向に事態が進展する気配はなく、いつのまにやらもう文化祭まで一週間。

「今日はアナタの犯罪の証拠を二兆個もってきたんだから!」

「おかしいな。五千億回くらいしかヤラカしてないはずだが」

 この日も理科室でバトルが行われていたが僕はずっと上の空だった。

 ――もっと重大なことがあったから。


「――結局今日もダメだったなァ。先公にもちっとも相手にされないし」

「くそが! くそがんもどき!」

「イオちゃん。もう明日がリミットだぜ。いい加減出演者決定しないとパンフレット班やらなんやらに迷惑かける」

「なんとしても止めて見せるって!」

 帰り道でのそんな会話も右から左へと通り過ぎていった。


 この日の夕食はホットプレート餃子。

 珍しく山口の両親が早めに帰ってきたので一緒に食べた。

 片付けやらなんやらして、風呂に入って自室に戻るともう二十一時。

(さて)

 僕は大きく息を吸ったのち、夏休みに小説を投稿した『パノラマス大賞』のHPにアクセスした。

(あれ? まだか。今日発表のはずなんだけどな)

 息を吐いて伸びをしたのち勉強机に座って教科書を広げる。中身はちっともアタマに入ってこない。僕はまたあいつに言われたことを考えていた。

(僕がモンスター……? 救世主……? 義務……? バカいうなよ。僕のやるべきことは違うぜ……!)

 異常な心拍数、おびただしい発汗、過呼吸。

(発表の前ってみんなこうなのかな? それともやっぱり僕がおかしいのか?)

 ――そんな状態がずっと続いた。

 なんども発表ページを見たり、教科書に目だけ落としたりしているうちに時間は二十三時四十五分。発表はまだない。

 5ちゃんねるの『パノラマス大賞スレ』も騒然としていた。

 スレを見ているうちにもう二十三時五十八分。

 今日はもう発表ないのかななどと思いつつもう一度HPを開くと――

(あっ! やっときた――!)

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