第25話 文化祭実行委員
「はいはいはーーーーーい!」
数日後の朝のホームルーム。
黒板には『文化祭実行委員決め』の文字が書かれている。
こういうときなんの躊躇もなく手を挙げてしまえるのがイオちゃんのいいところだ。
「おお! さすが積極性オデコおばけ」
「いいぞー」
黒板前に立つ学級委員がおずおずと「三年生はムリに出さなくてもいいと言われてるけど」と問うが「いいの!」と一蹴する。
すでにあのZAZENが文化祭に来るということは公式にアナウンスされている。
イオちゃんにしてみればこの行動は当然のことと言えるだろう。
「ええと、出すなら二人出せと言われているんだけど相方に立候補する方は?」
僕はちょっとだけ考えたのち、そっと手を挙げた。
「いいの!?」
とてもじゃないがこの状況を傍観者として見ている気にはなれなかった。
その日の放課後、各学年各クラスの文化祭実行委員はさっそく顔合わせとして生徒会室に集まることになった。
ほとんどが一、二年生だったがそこには知った顔もある。一人は生徒会長であるマンンガンこと西園寺礼子さん。僕とイオちゃんの姿を見かけるや嬉しそうに微笑んでくれた。
それにもう一人――
「文豪大魔王こと英ちゃんじゃん。いろいろ忙しいのにこんなことやってていいの?」
「バカ野郎。青春は一度しかないんだぜ。ってゆうか今しかないんだぜ」
「おっ。詩人だねぇ。きっしょぉー」
まずは担当割から会議はスタートする。各役職三~四人づつ割り当てたいとのことだ。
イオちゃんが僕と英二に耳打ちする。
「やりたいのがあるんだけど一緒にやってくれないかなー」
二人とも苦笑しながらもうなづいた。
「えーっと。ではまずは会計係――」
生徒会長による手慣れた進行で担当割がどんどん決まっていく。
わかってはいたことだけど彼女には『マシンガン』のときのクレイジーサイコ人格以外にこういった一面もあるのだ。妙に感心してしまう。
「ええと。次は『メインステージ係』――」
会長がそう言った瞬間、
「はいッッッッッッッ!」
イオちゃんが衝撃波が出るくらいのスピードで手を挙げた。
あまりの勢いに会長はクスっと笑う。
われわれ腰巾着BOYZも彼女に続いて挙手をした。
全体会議を終えて僕、イオちゃん、英二の三人は一旦教室に戻る。
メインステージ係の第一回の打ち合わせを行うためだ。
「ほら見てよこれ! 去年のメインステージのセット!」
イオちゃんのスマートホンをのぞきこむと、校庭中央に設置された豪華なステージセットの写真が写っていた。
「すごいね。照明もちゃんとしているし、プロのステージで見るジャングルジムみたいなヤツまである」
「ははは。あのホネホネの柱みたいなやつは『トラス』ってうんだよ。ちなみに全体のことをステージテントといいます」
「なるほど。さすがドルオタ」
「メインステージ係だったら特等席で見れるじゃんとか去年思ったんだよね。ふへへ……ザゼン……生ザゼン……」
なんだろうとてつもなくイヤな予感がする。いや予感とかそういう問題でもない。
「と、り、あ、え、ず。出場者募集をしないとねー」
生徒会から借りてきた画用紙とポスカを使用してメインステージ出場者募集ポスターの作成を開始する。
「えいずぃー……相変わらず絵がバキクソに下手だね」
「うるせえなぁ。つーかイオちゃんも人のこと言えなくね?」
「よし! 絵は全部セイくんにやってもらおう!」
なんとかこの流れを食い止めたいと思ってもどうすることもできそうもない。
「よし。あとは応募用紙投函用のボックスを作って――と」
「どこに置くの?」
「生徒会室の前」
「去年使ったやつとかないのか?」
「えーいいじゃん作ろうよぉ」
流されるように人一倍テキパキとメインステージ係の仕事をまっとうしてしまう。
「よおし。これでオッケー。あとは待つだけだね。秋は松茸だね」
「本番当日まではこれだけだっけ? こんなちょっとでいいのかなあ仕事」
「たぶん会長が受験生ってことで気い使ってくれたんじゃないの。美人のクセに性格もいいとか神かなあ? おっぱいも八十九センチメートルと非常に大きいし」
一仕事を終えいったんほっとしたが、むろん本当に安心することなどできなかった。
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