第19話 ZAZEN(2)

 神奈川県某所の温泉宿にて。

 和服の少女が二人。部屋を真っ暗にして録画したテレビ番組を見ていた。

「ふうん。アヒトさんどう思われますか?」

「愁子殿が思うのとまったく同じように思っている」

「するとつまり――」

 愁子は手していた湯飲みを両手で握りつぶした。

「なにがジャパニーズなんたらだ。こんなのただ奇を衒ってるだけのクソみたいなオナニーでやろうと思えば誰だってできる。そうおっしゃいますね?」

「是。愁子殿がそういうのならばそうだ。そう以外のなにものでもない」

「こんなのが注目のアーティストなんてイミがわからない! 死ねばいいのにということですね?」

「是。死ねばいい」

「アヒトさんがそこまでおっしゃるのなら。どっかで会ったら潰しましょうねえ」

 それを聞いたアヒトは以外なほど器用な手つきで手元のスマートデバイスをいじり始めた。

 ――そして。

「どうやら近々共演の機会があるようだ」

「ほおぉ……」

 愁子の目がギラりと光った。

「ではすぐに『彼』に連絡しましょう」

「なぜ?」

「やつらを潰すためのものを作ってもらうのです」

「ぎょ、御意……」

「イヤそうですねぇ」

「……男性は苦手だ」

「ははは。しかも彼はちょっとチャラチャラしたタイプですものね。でも腕は確かです」

「それは存じている。ちゃんと連絡しますよ」

「うん♪ よろしくお願いしますね」

 愁子はアヒトの頭を愛おし気に撫でた。

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