桃色不老婆~の金曜日。。。Ⅰ

姑兎 -koto-

第1話 いつか… また…

その人のしなやかな指が

優しく 僕を脱がしていく

温かい部屋 柔らかなタッチ

僕は溶けそうになりながら

「まだ、早い…」と…



ゆらゆらと秋風に揺れるブランコ

僕は、こっそり、

部屋でくつろぐその人の姿を眺めるのが

好きだった

 

その人は、時折

窓辺に立ち 遠く 空を眺める

そのまなざしが 優しく 寂しげで…

僕は、その人を怖がらせないよう

庭の柚子の木の陰に

用心深く 身を隠す


晴れた日の昼さがり

その人は、思わせぶりに手を伸ばし

丁寧に柚子の実を摘む

その手が僕に触れる事は無いのだけれど

僕はドキドキしていた


最後の実を摘んだ後

その人の目が僕にとまる

そして

柔らかく微笑んだその人に誘われ

部屋の中へ


その人は、小さな箱を用意して

金紙を小さく切り始め

そして、お話は、巻頭へ…


ありのままの姿になった僕が寒くないように

そっと包んでくれた掌は

春のように温かく 柔らかく

僕は、もう一度

「まだ、その時ではない」と…。

溶けそうな感覚…

混濁する意識…。


「あー 彼女は、あの日、

病室の窓から飛ばした紙飛行機を覚えているだろうか…」

え? 彼女? あの日?

そうか…

「その人」は、彼女だったんだ…。


そして、僕は…

僕の死を思い出した…。



あの日、二人の願いを書いて飛ばした紙飛行機…

「いつか… また…」と。


小さな箱に移された僕は、

せっせと金紙を身にまとう

それを嬉しそうに眺めながら

彼女は、

柚子の皮をむき ジャムを作る


柚子の木に戻された僕は

秋の陽に キラキラ包まれて

彼女は 窓辺で 柚子茶を飲みながら

飽くことなく 僕を見つめる



彼女は気づくはずもないのだけれど……。

この時間だけで充分幸せだ…。



時が来れば

僕は、また、遠い空へ…


でも…


僕はきっと戻ってくる

姿を変えても

覚えていなくても

僕たちの

ラブソングは終わらない





その時は…

出来れば…

みのむし以外でお願いしたい

この姿は…

やっぱ… ね^^;


ー完ー



お題2週間分『柚子茶・ブランコ・脱ぐ・元恋人・とても長い曲・紙飛行機・包む』

全部盛り盛にしたら、こんなん出来ましたww









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