♯26 村人Aと共にいざしんじゅくへ

3人で「しんじゅく」という所へ出かけるらしい


ブリュンヒルデと二人でサクラに付いて行く


「しんじゅく」とはどういった店なのだろうか・・・


わざわざ着替えたという点も気になる


それなりの店という事だろうな


王族としての立ち居振る舞いを発揮すべき所やもしれぬな


こんびに、たこやき屋、大きなすーぱーへ


ブリュンヒルデはこの大きな店は初めてだったか


商品数に驚いている


すーぱーの3階の扉を抜けると雰囲気が変わった


しばらく進むとサクラが壁に向かい硬貨を投入し、出て来た紙切れを私とブリュンヒルデへと渡した


ここが「しんじゅく」なのだろうか?


サクラに地面を指差し「しんじゅく?」と聞くと、ここは「えき」だと教えてくれた


まだしゅんじゅくではないらしい


『姫様あれを!!』


ブリュンヒルデが声を掛けた方を見やると、「でんしゃ」が今いる建物の下を通過した


サクラが「でんしゃ、のる」と告げる


まさか・・・


これから・・・あの、でんしゃに搭乗するというか!?


良いのか!?


『どうやら、でんしゃに乗るという事らしな』


『その様ですね』


サクラも私達に渡してくれた紙を持っていた


紙を箱に入れると扉が開き、先に進める様になった


これが「でんしゃ」の搭乗する為の資格という訳か


サクラを真似て紙を箱に入れると、一瞬で紙が飲み込まれた



これを再度取るのだな


ブリュンヒルデも同様に後を付いて来る


紙はサクラが回収した


階段を下りると地面から少し高い位置にある高台の上に出た


そこには複数の人間が並んでいる


サクラは一番奥まで私達を連れて行く


『この者達も「でんしゃ」に乗るのだろうな』


『我々の世界で言う、馬車便や飛竜便の様な物なのでしょうね


 運べる人数の桁が違う様ですが』


『見よ!ブリュンヒルデよ!来たぞ!』


サクラが手を引き、後ろへ引っ張る


この線より後ろで待てと?


危険だからか


でんしゃの正面に一人、人間が見える


『あ奴が御者かの』


『一人でこの巨大な電車を制御しているのでしょうか?


 結構な量の魔力が必要かと思いますが、御者から魔力は感じられませんね』


『うむ、魔力とは異なるエネルギーで動かしているのだろう


 これ程の物体を動かく魔力に代るエネルギーか・・・是非とも知りたいものだ』


目の前で「でんしゃ」の一番前の箱が停止し、扉が開く


サクラが先に入り手招きをする


『行くぞ、ブリュンヒルデよ』


『はっ』


意を決して電車へと乗り込む


中は広く数十人乗れる様な広さで椅子もある


こういった部屋がいくつか連なっている


『この部屋の下にそれぞれ車輪が取り付けられていて、この先頭の部屋が引っ張っているのだろうな」


『姫様、こちらから御者が見えますよ』


一番前の部屋に入った事で、御者の操作方法と進行方向が良く見える


サクラが気を使ってくれたのだろう


ありがとう


御者が目の前の棒や突起を動かすと「でんしゃ」が動き出した


あれが「でんしゃ」の「こんとろーらー」という事だろう?サクラよ


サクラも頷き肯定する


『あの二本の鉄の棒に沿って走る様ですね』


『定期便という事であれば、乗り場と運航ルートは一定なのだろうから


 固定してしまった方が良いという事だろう


 見て見よ、隣は進行方向が逆のでんしゃが走っておる』


『実に効率的ですね』


よく考えられているな


私達の世界でもこういった「仕組み」は取り入れていきたい物だ


サクラに座る様に奨められたが


御者と進行方向を見ていたいので断って御者の後ろに張り付いていた



『結構なスピードで走るのだな』


『飛竜種と同じくらいのスピードでしょうね


 揺れも少ないですし、馬車や飛竜より快適に感じます』


まったく揺れない訳ではないが、それほど大きな揺れは感じないのでやはり乗り心地も良いのだろう


帰りは座ってみるとしよう


また別の「えき」に止まり、人々が乗り降りする


『利用価格が気になる所だな』


『そうですね、これほどの物を利用するとなると高額に感じられますが


 子連れ等も見かけますし、平民が気軽に利用出来る様な価格設定なのでしょう』


運べる人数を増やし、運行回数を増やせば低価格でも運用可能か・・・


馬や飛竜が動力でなければ、疲労による運行時間も一定を保つ事が出来るかもしれないな


人に限らず、物流に置いても革命を起こす事は可能だろうな


「でんしゃ」はぜひとも私達の世界で再現したい物だ


御者の話す声も部屋の中に響き渡る


『こんな機能まであるのか・・・』


『運行ルートの案内でしょうか?』


この機能があれば後ろの部屋にも声が届くという事だろう


この世界の物は、私達の世界では想像が出来ない様な事を実現しているな


『我々の世界でこれを再現するとなると・・・』


『現実的なのは念話になるでしょうが、これだけの人間に一度に接続するとなると・・・


 相当な術者でなければ不可能かと』


魔法を使用しての実現だと、どうしても個人の能力による制約が出てしまう


魔力の保有量に左右されず、誰でも同じ力を発揮できる魔道具・・・か


『姫様、見てください


 巨大な塔がいくつも見えます』


「でんしゃ」の外の様相が変化してきた


巨大な塔・・・建造物が増え始めた


『「しんじゅく」とは大都市、王国といった所を差すのでしょうか?』


ブリュンヒルデも外の様相に少々興奮気味だ


「くるま」も大量に走っているし、人も多く賑やかだ


「でんしゃ」の中の人もかなり増えた


皆、目的地は「しんじゅく」なのだろう


『姫様!あれを!道が途切れています』


「でんしゃ」の進行方向を見ると道が途切れ、「えき」の中へ入って行く様だ


あそこが終点らしい


「でんしゃ」が止まると扉が開き乗車していた人間が一斉に降りる


!!!!!


うおおおおおおっ


『なんという数の人間だ!』


『今日は祭りでもるのでしょうか?』


ぞろぞろと同じ方向へと歩いて行く人々に驚愕する


呆然としていると私達にサクラが声を掛けて来た


やはりここで降りるらしく、先ほどサクラが回収した紙切れを私達にそれぞれ渡した


「えき」を出る時に同様に箱に入れるのだな?


分かっておるわ!


・・・


箱には入れたが出て来ぬぞ!


え?


降りる時は出て来ないのか?


そうであったか




サクラが床を指差し「しんじゅく、えき」と告げた


「しんじゅく」は地名か国名の様だな


そして、ここは「しんじゅく」の「えき」という事か


『まるで神殿の様な作りだな』


『この様に綺麗に装飾と、均一な柱に床の大理石?


 でしょうか・・・美しいですね』


異世界ともなると、建築の様式もかなり異なるな


サクラに付いて行くと、動く階段に出くわした


『見よ!ブリュンヒルデ!


 階段が動いておるぞ!!』


黒い階段が競りあがって動いている


自動で人を運ぶ仕組みか・・・


『これは、城に欲しいな』


『魔法士を一人床下に待機させれば可能かと』


『ふむ、考えると間抜けだの・・・その為だけに人を配置するのも馬鹿らしいな』


『賢明な判断かと』


「えすかれーたー」というらしい


乗るタイミングが掴めずにいると、サクラに背中から押された


ちょ!!


心の準備という者があろう!


覚えておれよ!


サクラは私の次に乗り、ブリュンヒルデの手を引いて「えすかれーたー」へと導いた


サクラよ


扱いが違うのは気のせいだろうか・・・




「えすかれーたー」は唐突に終わりを迎える


階層を移動する為のものなのか


外を見ると巨大なガラス張りの壁で、外が見える状態になっていた


『おお!ここは地上から結構高いのだな!』


人と車が行きかう地面が見える


人の多さよ


『かなり栄えている様ですね


 そしてこの建築物・・・大きな塔がこんなにも・・・』


建築物の高さにも驚かされるな


サクラに呼ばれ付いて行く


どうやら店に入るらしい


見るからに飲食店の様だ


先程、朝食は食べたが・・・また食べるのか?


店内に漂うこの香りは・・・そうだ


サクラがいつも飲んでいる「こーひー」と呼ばれるあの泥水の様なそれだ


先に席に座るのではく、注文をするらしい


「××××××××××××××××××」


サクラが何か呪文の様な物を唱えると、店の者が応える


伝わっている?今のが注文なのか?


魔法の詠唱かと思ったぞ


サクラが店の者の前に絵と文字が描いてある紙を指差す


まだ「ひらがな」しか学んでいないから、まだ読めぬぞ


好きな物を頼めという事らしい


『ブリュンヒルデよ、何を頼む?


 こちらの世界の飲食店ではこの様に注文書に絵が付いておるのでわかりやすいぞ』


『では・・・』


「だーくねすもかちっぷふらぺちーのをべていさいずで」


!!??


なんだと!?


ブリュンヒルデが愉悦の表情でこちらを見る


『ブリュンヒルデよ・・・それは?』


『サクラと同じものを注文しました』


一瞬であの詠唱の様な注文を覚えたというのか・・・優秀なやつめ!


わたしはこの赤い奴にする!


指を差して、サクラに伝える


サクラは再び詠唱の様な注文を繰り返し、清算を済ませた


商品を受け取らずに、サクラが移動する


後は席に座っていれば、店の者が持ってくるのだろうか?


先舗の場所から少し横に移動した所でサクラが足を止める


棚から中を覗いてみると、店の者が商品の準備をしているのが見えた



『見る限り、「こーひー」ではない様だな』


サクラが店の者に話かけると、こちらに微笑み掛けた


何を言ったのだ?サクラよ


透明な入れ物に赤い物体を流しこみ、その上から白いふわふわの物を乗せる


容器に何かかいて渡してくれた


そこには「ひらがな」で「そふぃあ」とかかれていた


私の名前か!!


ありがとう


意外に嬉しい物だな


商品を受け取る


ブリュンヒルデの商品も同様に「ぶりゅんひるで」と名が記されていた


『読める様になった事もあり、嬉しい物ですね』


『お主もか』


サクラが私達の商品それぞれに「すとろー」を差す


これは飲み物なのか?


それにしてはやたらと冷たいが


サクラの分も出来たらしいので受け取って


席へと座る


どこでも良いらしく


空いている4人掛けのテーブルへと座った


サクラが飲めと言うので、飲んでみる



!!??


これは昨日飲んだ


「しぇいく」のたぐいのものだな


わたしのは「すちょろべりぃ」なんちゃらというヤツだ


詠唱が長くて一度では覚えられなかったが、美味しい


『姫様、こちらも飲んでみますか?』


『色がな・・・泥水の様ではないか』


『いえ、甘くて美味しいですよ』


ブリュンヒルデの分も少し分けてもらう



!!??



うむ、こちらも美味である!!!

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