♯21 村人Aの家で異世界2日目の入浴を

サクラにこの世界の文字を学ぶ本を与えられた


願ってもない事だった


たぶれっとと併用する事で、音も一緒に理解出来るのは非常に分かりやすい


そして何よりブリュンヒルデがいる事でお互いの間違いの指摘が出来るので



一人より断然捗るというものだ




しばらく経つと部屋に良い匂いが立ち込めて来た


これは昨日の「かれー」の匂いだな


もう夕食の時間らしい


『姫様、この香りは・・・』


『この世界の「かれー」という料理の香りだ、昨日サクラと私とで作ったのだ』


野菜を洗っただけだが、間違ってはいないだろう


野菜を洗っただけで、沐浴を終えたら出来上がっていた訳だが、間違ってはいないだろう


『姫様が料理を・・・?信じられません』


失礼な奴め


料理くらい出来るわ!城ではブリュンヒルデ達がいる手前、やる機会がなかっただけじゃ


・・・野菜を洗っただけだがの


サクラは「こめ」の準備をするらしく、ブリュンヒルデが代わると申し出た


私が邪魔をしては悪いなと自重する


「こめ」はどうやら水で何度か洗うらしい


手の広で米を容器に擦り付ける様にして


「こめ」を洗った後の水が白から透明に変化するまで続ける


ブリュンヒルデが教わるのを眺めていた


米を洗い終わると、サクラは米を洗った容器を魔道具に入れて起動させる


あとは放っておけば「こめ」が出来上がるのであろうな



サクラに「ふろ」を奨められたので入るとする


「ふろ」は毎日入る様だ


さすが綺麗好きの民よ


サクラに昼間購入した物の中からごわごわした物を渡される


どうやら体を洗う物とのこと


こんな物まで用意してくれるとは・・・感謝する


『姫様どちらへ?』


『沐浴じゃ、狭いから一人ずつ入る事になるの』


『・・・』


『昼間のサクラの股間を思い出したか?』


『ばばばっばば、バカな事を言わないでください!』


煽り甲斐のあるヤツだ


『まずは、私が入るから待っておれ


 後程、こちらの世界の沐浴法を教えよう』


ブリュンヒルデにはそう告げて先に「ふろ」へ入る


顔、髪、体と洗って昨日貰った髪留めを使用して湯舟に浸かる



くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ


なんという気持ち良さか・・・


そういえば、昨日は湯に色を付けておったな


あれは確か・・・


裸のまま脱衣所へ向かう


・・・床は後で拭くとしよう


脱衣所の棚を探すとそれらしき物を見つけた


これか、森の香りを封じ込めた粉末だな


箱に無数に収納されている


黄色い物もあるの・・・


袋を見ると果物の様な絵が描かれている


これは果物の香りを封じ込めた物なのだろう


こちらにしてみよう・・・


勝手に使用する訳にも行くまい


サクラに聞いてみる


脱衣所から手と顔だけを出して、サクラに使用する旨を伝える


「だいじょうぶ」との返答があった


感謝する



それでは早速



袋を勢いよく引き裂くと脱衣所に黄色い粉が・・・盛大に舞った




それはもう粉雪の様に


・・・


しまった


湯舟の上でやるべきであった


サクラもそうしていた気がする


・・・


それよりも、まずはこの粉末を片付けなければなるまい


パタパタパタ


私の体から滴り落ちる雫が粉末の上に落ちてしまったせいで


粉末から黄色い液体へと変わって行く




ああああああああああああっ




こうなってしまっては拭き取るしかあるまい


「たおる」でふき取るが黄色い液体が伸びてしまった上に「たおる」に色が付いてしまった


いかん


こんな所を見られてしまってはサクラに追い出されてしまうやもしれぬ


裸で必死に脱衣所の床を拭く王女・・・こんな姿は見せられぬな



こういう時はそう・・・


ぴえん



うまく拭き取れぬ・・・悲しくなって来た


『姫様?どうかされましたか?』


脱衣所の扉が開く


ブリュンヒルデが音を聞きつけ見に来た様だ


『ブリュンヒルデ、これはだな・・・』


ブリュンヒルデに向かって尻を丸出しで四つん這いという間抜けな姿を晒してしまっている』


パタン


脱衣所の扉が閉まる


おのれ、ブリュンヒルデめ・・・見捨てたな


床は水浸しで粉末が溶け、黄色い液体と化し、床を覆っていた


『仕方あるまい、魔法で対処するか』


水魔法を展開し床を一通り濡らし浚う


これにより、水に埃や汚れが吸着する


そのまま、水分を掌の上に集め、そのまま風呂場へと流した


魔力を消費してしまったが、微々たる物だ


問題はないだろう


粉末を散らかした時より綺麗になったので良しとする


感謝されても良いくらいであろう



すまぬ、サクラよもう一つ使わせていただくぞ・・・


果実の香りを封じ込めた粉末を今度は浴槽の上で開ける


今回は綺麗に空ける事が出来た


同じ失敗は二度しない




柑橘系の良い香りに包まれ、ゆっくりと湯舟に浸かる


異世界2日目を振り返る


ブリュンヒルデの来訪と、こちらへ来た経緯を思い出せたのは収穫だ


急いで帰る必要もないという事が分かったので、こちらの世界を満喫したい所だが・・・サクラの懐事情も気になる


村人であろうサクラが二人も増えた食い扶持を養えるだろうか・・・


そこは今後の課題としよう、金を稼ぐ方法などいくらでもあろうと言うものだ


こちらの世界の物が珍しい様に、私達の世界の物がこちらでは珍しいといった事もあろう


それを商売にすれば良い


その為にまずは言語周到となる・・・最終的に何をするにもここに落ち着くな


サクラが学ぶ為のツールを一式揃えてくれたのはありがたい


ブリュンヒルデもいる事だし少しでも早く習得出来る様に予定を組もう


ただ漠然と取り組むのではダメだ


明確な目標と、その目標の達成予定期日、進捗状況把握し修正する事が必要だ


後程それは考えるとしよう



湯舟に浸かっているとブリュンヒルデが着替えを持って来た様で脱衣所から声がする


『こちらが姫様の着替えだそうです、置いておきますので』


『すまぬ、感謝する』


「ふろ」を終え着替える


用意された新しい服も昨日と同じだが色違い(紺色)の物だ


次はブリュンヒルデの沐浴の番だ


着替えはすでに用意してもらったらしく、脱衣所と「ふろ」の使い方を教える


『温かい水を雨の様に降らせるのですね・・・』


『かなり気持ちが良いぞ』


こちらの「ふろ」の機能を一通り教え大部屋へと戻る


サクラが「どらいやー」を持って来たので、たぶれっとを準備し昨日の椅子の前へと座る


サクラが髪を乾かしてくれている間、言語習得の準備に勤しんだ



人に髪を乾かしてもらうの気持ち良いな!

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