♯18.6 村人Aごときの股間を

「たぶれっと」と呼ばれる映像記録機能のある魔道具でこの世界の事を学ぶ事となりました


姫様が映像に触れる事で、画面が次々と切り替わります


仕組みが気になります


この板に保存されているのでしょうか、それとも別の場所に保管されている物を表示しているのでしょうか


気になります


人間族がこの世界の主となる種族なのでしょう


異種族の映像は少ない様です


しかし「たぶれっと」を観るこの体勢・・・微妙に大変です


この「たぶれっと」二人で観るには少々小さいですね


一人用なのでしょう


見かねたサクラが、「たぶれっと」を立てる道具を持って来てくれました


ありがとうございます



姫様と同じ金髪で肌は若干褐色の人間族の女性が映し出されました


歳も姫様と同じ150~180歳前後といった所でしょう


いや、人間族はもっと成長が早いのでしたか


一体なんの記録映像でしょう


『姫様、この記録映像は一体・・・』


『さっぱり分からんが・・・この者の着ている服は良いな、私は好きじゃぞ』


『確かに姫様には似合いそうですね・・・あ、何か食べる様ですね』


姫様が着れば似合うでしょう


しかしスカートの丈が短すぎるのではないでしょうか


肌着が見えてしまいますし、防御力も低そうです


『これもいずれ食べてみたいな』


薄く焼いた生地に、様々な具材を詰め込んだ料理の様です


映像を注意深く観ていましたが、どれがこの食べ物を差す言葉なのかは分かりませんでした


後程サクラに確認を取りましょう


『ブリュンヒルデよ、この「おけまる」という仕草どう思う』


先程の人間族の女性が多様していた言葉ですね・・・私も気になりました


『なかなか可愛いと思います・・・私がするのはちょっと・・・』


私がやるにはいささか、可愛すぎる仕草ですね


『いや、そうではなくて使う場面だ・・・』


恥ずかしい勘違いをしてしまいました


『これは失礼しました、同意、決定、合意といった場面で使用している様に見受けられます』


『うむ・・・確かにそういった意味合いの様だ、サクラに使用して確かめてみるか』


流石です姫様


『「おけまる」です』


早速使用してみます


私も気になる単語がありました、提言してみましょう


『それであるなら姫様この言葉はどうでしょうか「まじやばい」』


『「まじやばい」確かに頻繁に使っているな・・・驚嘆、だろうか?』


流石です姫様


『そうですね、物を食べた後、店の外観を見た時、看板を見た時などに使用しているので・・・おそらくそれが正しいのではないでしょうか』


『ブリュンヒルデそれ「まじやばい」』


そう返して来るとは・・・姫様にしてやられました


『っ・・・!!姫様・・・』


流石です



二人で話合う事で、色々と考察が進みます


一人では中々進まない事もあるものです


言語化し意見交換する事は大切ですね







「ソフィア、ふろはいるね」


サクラが別の部屋を指差しながら、姫様に話しかけました


「おけまる」


姫様が、先ほどの言語をさっそく試しています


サクラが何を言ったかも姫様は理解していた様です


サクラにも通じたらしく頷いています


『やはり、同意、了承の際に使う言葉で問題ないようだ』


『そのようです』


もう一つ提言しましょう


『姫様この「がちでうまい」これは美味しいという意味の様に思います』


『確かに!食べ物を食べた後のこの顔を見るや連呼しておるしの、概ね間違いなかろう』


やはりそう思われますか


『ただ、この「がちがちがち」というのも気になります』


『うむ、こちらも合わせて連呼しているな・・・似た様な意味だろう、実践で確かめよう』


それが良いでしょう


「がち」が形容を意味する言葉の可能性も考えましたが、それでは「がちがちがち」と連呼するのは腑に落ちません


名詞なのでしょうか?検証が必要ですね


『わかりました』


『これ、こういう時は「おけまる」じゃ』


そうでした


『「おけまる」』


サクラが戻ってこないので、どこへ行ったのか気になったので姫様に問いかけます


『サクラはどこへ行ったのですか?』


『ちょっと、呼んできてもらえるか?サクラで言葉が通じるか検証してみよう』


さっそく実践ですね


かしこまりました


『「おけまる」』



サクラが入って行った部屋へと向かいます


何をしているのでしょうか


「サクラ?」


この部屋は何の部屋なのでしょうか?


大きな鏡が設置されています


部屋の奥にもう一枚扉があります


気配がするので、奥の部屋にサクラはいる様ですね


もう一度声を掛けようとすると扉が開きました





・・・



・・・・・・!?



そこには裸のサクラがいました


はい


殿方の裸をこうはっきりと・・・明るい所で間近で見るのは・・・は、初めてですね


敵を殲滅する際に装備が剥ぎ取れたりして、うっすら見える事などはありましたが・・・


その様な形をしているのですね


えーーーー


こういう時はなんと言うのでしたか


・・・そうです



「まじやばい」




サクラが無表情でそっと浴場の扉を閉めました


これはあれですね


やってしまったやつでね





あ゛あ゛っーーーーーーーーーーーーーーーーー!!



殿方の裸をこんな形で見る事になるなんて!




ゆっくりと振り向くとそこには姫様はニヤニヤしながらこちらを見ていました


・・・


『姫様!やってくれましたね!』


顔はやめておきますね


姫様の胴に向けて拳を本気で打ち込んで行きます


『うはははははは、良い経験だったであろう?』




この程度ではいなされてしまいますか、ちょっと痛い目に合っていだだきましょう


ギアを一つ上げます


私は近接特化型ですので、遠距離砲弾型の姫様に近接戦で負ける事など・・・





ありえません!!




腹部を打ち抜こうとした瞬間、扉が空きサクラが出てきました


拳は姫様に当たる直前で止めました



姫様の事は後回しです、サクラに謝罪をせねばなりません


『大変失礼しました、申し訳ございません』


深々と頭を下げ、謝罪の意を示します


サクラは姫様の差し金と分かってくれている様でした


申し訳ございません



姫様には釘を刺しておきます


『姫様、この事は忘れませんからね!』


『サクラの股間をか?』


っなっ!!


『っ!違います!』


『落ち着け!サクラに迷惑がかかるであろう?良い物が見れて良かったではないか!』


『知りません!』


確かに良い経験にはなったのは事実です


実物を見たのは初めてでしたからね、忘れる事はないでしょう・・・


もう夫にするか・・・殺すしかないのでは?


私は何を言っているのでしょうか


忘れましょう


暴れてサクラに迷惑を掛ける訳には行きません


私の姫様への怒りは一度心の奥底へ仕舞います




姫様と共に「たぶれっと」で異世界学習の続きです


先日姫様が視聴したという「あにめ」と「あにむす」という記録映像を観ました


『姫様、これは素晴らしいです』


こちらの世界の歌に感動して震えました


『これは歌だからな、私たちが覚えて、あちらの世界で披露すれば良い』


『なるほど』


確かにそうです、王妃様、部下達に是非とも聞かせたいと思います


ピンポーン


!?


『姫様これは?』


突如部屋に音が鳴り響いたので、警戒態勢を取ります


『分からんが、警戒せよ』


こういった時は・・・そうです


「まじやばい」です


サクラは特に気にせず入口へと向かいます


『来客を知らせる合図でしょうか?』


サクラの警戒心の無さを見るに来客の可能性が大です


『念の為、警戒しておこう』


何かあってからは遅いですからね


姫様とサクラは私がお守りいたします


サクラの後を付いて行くと、来訪者から荷物を受け取りました


受け取った荷物の中身を姫様に見せます


『姫様、これは?』


『食べ物のようじゃの?』


『先ほど食べたばかりでは?』


『こちらの世界では1日3食食べる様なのだ』


『なんと!?』


元居た世界では、昼と夜の2回のみです


3回も食事が出せる程、こちらの世界は飽食という事なのでしょう


食が豊だからこそ、料理にもバリエーションが生まれるのでしょうね


姫様に連れられ手を洗いに向かいます


『今なら分かります、これがスライム除去剤なのですね』


先程観た「あにめ」にこの様なお話がありました


そのまま食べるのは体を壊す原因になりかねないとの事


従いましょう



大部屋へ戻るとテーブルに食べ物と飲み物が置かれていました


サクラに全て任せてしまって申し訳ありません


本来であれば私がやらなければならない仕事だと思うのですが・・・


ありがとうございます


そして、いただきます


3人で食事をいただきます


紙に包まれた物は「ぱん」でしょうか


肉と野菜をぱんで挟んだ料理の様です


これはフォークなどは使用せず、このまま食べるのですね


『んーーーーーー』


『姫様、これは美味しすぎます』


この肉に付いているソース?でしょうか、甘くて肉とぱんにとても合います


そしてこのぱんもとても柔らかく食べやすいです


一緒に置いてあるこの円柱状の物が飲み物でしょう


いただいてもよろしいでしょうか?


『姫様、これはどうやって飲むのですか、液体の様なので飲み物ですよね?』


『この筒を吸う事で、中の飲み物が口内まで上がって来るのだ』


どういった原理でしょうか


試してみましょう


ちゅーーーーー


ズゾゾゾゾゾ



『これはなんとも不思議な食感です


 飲み物かと思いましたが微妙に違う様です』


飲み物かと思いましたが、半固形物の様でした


氷を細かく砕いた様な物を食べている・・・と言った感じでしょうか


初めての体験なので形容し難いです


姫様に感想を伝えます



姫様?なんですかその顔は?


サクラに先ほどの言葉を試してみます


『こういう時はそう・・・』


「がちでうまい」


どうですか?使い方は合っていますか?


姫様も続きます


「がちがちがち」


サクラは「おけまる」と返してくれました


どうやら、使い方は正解だった様です


しかし何故が微妙な表情ですね?気のせいでしょうか


一歩前進ですね、この調子で行きましょう



もうひとつの料理をいただきます


『姫様、これはおそらく芋を炒めた物でしょうね』


『うむ、その様だ』


私達の世界では、主に芋は茹でる調理方法が一般的でしたが、炒めるとどんな味なのでしょう


!!??


外はカリッカリ!中はふんわり、絶妙な塩加減が最高です


これはかなり私の好みです


『ただ、炒めただけではないのかもしれませんね』


芋を炒めるとこんな味になるのですか


試したことがありませんでしたね


サクラは小皿に赤と、白・・・これは今朝の「まよねーず」と呼ばれる物でしょう


この二つを入れて私たちの前に差し出しました


これを付けて食べてみてという事なのでしょう


試してみましょう


これも美味しいですね・・・ですが


『私は塩のみの方が好きです』


『私は・・・こうしてこうだ!!』


姫は気に入った様です


しかも両方付けるのが好みと


??


サクラがさらに先ほど飲んだ半固形物の飲み物に付ける様奨めて来た


姫様は興味津々の様だ


『姫様、これはその、なんといいますか・・・甘い溶けかけの氷と言いますか


 その様な感じです』


ちゅうーーーーー


『上がって来ぬぞ!!ブリュンヒルデよ』


『姫様!もっと強くです』


『分かった』


ズルッ!


ドスッ!


ゲホッゲホッ!ウォェェェェ!


えぇぇ・・・


姫様・・・不器用過ぎません?


どうやったらそうなるのですか?


『姫様、加減を・・・ブフッ!』


我慢出来ず吹き出してしまいました


容器の蓋を開けて芋をつけて私も試してみます


・・・


私の口には合いませんでしたね


『美味しい』


『私は苦手です』


これは、好みが分かれるかもしれません


はんばーがー、ぽてと、しぇいく


食べ物の名前は覚えました


後々調理方法も調べるとしましょう



食べ終わるとサクラはこれから外出する様で、その事を伝えて来ました


姫様と私は「おけまる」と答え、帽子を被り外出の準備をしました


異世界での刺激的な生活に私も少し浮かれてしまっているかもしれません

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