♯16.3 村人Aごときと外出を
部屋に光が差し込んで来ました
朝の様ですね
部屋の外で気配を感じます
サクラも、もう起きている様ですね
昨日サクラが敷いてくれた寝具を畳んで片付けます
姫様は・・・いつも通りアホ面で寝ています
異世界でも変わりませんね
神経が太いというかなんというか・・・
『姫様起きてください、朝です』
『んー、そうか』
姫様がこんなに簡単に起きるのは珍しいですね
『ブリュンヒルデよ、私はこちらへ来る前の記憶が転移の障害か、曖昧だ
先ほど夢で朧気に見たのだが・・・勇者が攻め入って来たと父上は言っていた様な気がするのだが・・・』
私にはそういった症状は出ていない様です
記憶もはっきりしています
『問題ありません、火事の原因は王の寝たばこです
勇者来訪ではございません』
『・・・そうか・・・それならば問題ないな』
姫様は安堵と落胆が入り混じった様な溜息を吐かれました
分かります
『サクラも起きている様だな
我々も行こうか』
『かしこまりました』
姫様が起きた後のベッドのシーツを綺麗にしておきます
私がそれを終えるのを確認すると姫様が寝室から出ました
『厠へ行こう、こちらの世界では「といれ」と言うそうだ』
『「といれ」ですか』
覚えました
サクラはやはり起きていました
「ソフィア、ブリュンヒルデ、××××」
サクラが話しかけて来ました
姫様が「おはよう」と返します
『「おはよう」とはこちらの世界の朝のあいさつらしいぞ』
かしこまりました
では、わたしもサクラに返します
『おはよう』
「といれ」には姫様が入ります
サクラの視線を感じます
キッ
サクラ何を見ているのですか
不届き者め
!?
厠から水が流れる様な音がします
どういった厠なのでしょうか
姫様が出て来た様です
私に入れと?姫様と同じ場所でなど、とんでもない
『ここは、異世界じゃぞ?
それにサクラの家にトイレはひとつしかないのだから気にするな』
そうでした、ここは異世界でしたね
『かしこまりました』
厠へ入ると用の足し方を姫様が教えてくれました
変わった様式ですね
魔法は極力温存する様に言われました
確かに魔力の補充方法が分かるまでは、使用は控えた方が良さそうです
ここを押すと水が出るのでしたね
ピッ
という音と共に腰の下から音がします
見えないので少し不安です
!!??
『ひぁっ!!』
不意打ちです
しかし、これならば確かに清潔に保てそうですね
『くくく・・・どうじゃ、ブリュンヒルデよ
驚いたであろう?』
『っ失礼しました・・・これであれば魔法は不要な様です』
変な声を聞かれてしまいました
不覚です
この後はこの紙で拭くのでしたね
筆記用には向かない紙の様です、専用の紙という事でしょうか
なんと贅沢な使い方を・・・この世界の技術力の高さを感じました
最後に奥のレバーを引くのでしたね
!?
浄化魔法でしょうか?
綺麗な水へと変化しました
厠ひとつに結構な技術を投入ししている様です
侮れませんね、異世界
「といれ」を出るとサクラと目が合いました
先程の声は聞こえていたのでしょうか
くっ、なんという事を!
『先ほどの声は忘れなさい!良いですね!』
『通じぬと言っておろうに・・・くはははは』
分かってはいるのですが、言わずにはいられません
「×××、×××」
サクラは謝罪の言葉をかけている様ですが、誠意を感じません
死にたいのですね
あら、飲み物ですか?
いただきます
許しましょう
飲み物をいただきます
姫様の隣に座るのは憚られます
『何度も言うが、ここは異世界じゃ
そなたは私を妹と思って接するが良い』
姫様がそうおっしゃるのであれば、善処いたします
『はっ
かしこまりました』
姫様の隣に座り、飲み物をいただきます
昨日のしゅわしゅわの飲み物をいただきます
「おれんじじゅーす」という飲み物だそうで、少しずつ飲めばあの下品な音は出ないとの事
最初に教えてください、姫様
私への嫌がらせだったのでしょうけれども
サクラには私の恥部をまだ出会って一日も経っていないのに、結構見せてしまっています
元の世界への帰還方法が見つかれば、やはり消しておきましょう
いや、まぁ夫になるというのであれば殺す訳には・・・っと
私は何を考えているのでしょうか
今のはなかった事とします
「ソフィア、×××××××××」
姫様がサクラのかけた言葉に対し「でかける?」と返答しました
姫様はサクラの今の言葉が分かったのでしょうか?
『姫様、今サクラはなんと?』
『「こんびに」という所に買い物へ行く様だ
「でかける」は外出という意味らしいな
こんびにとは・・・店だ!』
どうやら店に買い物に行くという事らしいですね
私が姫様の後を追ったのは、姫様がこちらへ飛んでから一時間程後・・・こちらの世界へ来てさほど時間は経っていないはずですが・・・
やはり姫様、頭だけは本当に良いですね
姫様は寝室へと走り出し、寝室から帽子を持って来ました
しかもすでに被っています
出かけるのに帽子を被るとは、よほど日差しが強いか、魔物に襲われる可能性があるという事でしょうか
私が付いていれば防具など不要ですが
サクラも寝室へ行き、帽子を持って来ました
やはり外出には必要な様ですね
しかし防御力の低そうな装備ですね、魔物から体を守れるとは思いませんが・・・
サクラは持って来た帽子を私に被せました
!!
またも不意打ちです!
大丈夫です
心を落ち着かせます
『ブリュンヒルデよ、こちらの世界・・・というかこの国は人間族の国らしくてな
耳を隠さねば目立ってしまう様なのだ』
そういう事でしたか
理解しました
私の耳をサクラが帽子に収納します
くっ、私の体に気安く触れるなど・・・
しかしこの帽子、前方にのみツバがあるのですね
変わった形状で・・・!!!!!!!
サクラが顔を覗き込んで来ました
ボッ!
何をじっと見ているのですか?私の顔、変でしょうか?
スンッ
一瞬顔が赤くなってしまった様な気がしますが大丈夫です
私は冷静ですよ
姫様何が可笑しいのですか?
姫様は靴を履いて家の外へと出てしまいました・・・早い
サクラと共に入口へと向かいます
サクラが立ち止まると話しかけながら、また私の前に跪きました
この男が私に跪く行為・・・なんでしょう
色々感情が揺さぶられてしまいます
「ブリュンヒルデ、××××××××」
そういうと、私の足の丈をまくり上げました
!!!
確かに・・・丈が長かったですからね
引きずってしまっては行けません
「×××××××××××?」
どうやらこの靴を私に履かせたい様です
『何を照れておる、ブリュンヒルデよ、耳まで真っ赤だぞ』
『ばばばばばばば、バカなことを!そんな事あり得ません!』
姫様が私をからかって来ますが、私はいたって冷静です
冷静ですとも
サクラは私が靴に足を乗せたのを確認すると、靴の紐?を止めてくれました
しかし、これは結び目などはない様です
どういう仕組みなのでしょう
もう片方は自分でやってみる事にします
サクラがやった様にやってみます
これは・・・粘着剤が付いている様子はありませんね
剥がすとビリッという音と共に剥がれますが、再び貼り付ける事が可能です
粘着性の衰えも感じません
不思議な仕組みですね
しばらく仕組みを観察していましたが、姫様達をお待たせする訳には行かないので切り上げます
サクラの家から外に出ます
サクラの家・・・というか部屋はこの大きな建物の一室という事なのですね
やはり村人、一般人といった身分の様ですね
今は明け方でしょうか、外を歩いている人もまだいません
『姫様はすでに外出された事があるのですか?』
『昨日、外出したぞ
店と食堂に連れて行ってもらったな』
ん?
おかしいですね
『・・・昨日?』
『昨日じゃな』
『私がこちらへ【異界の門】を使ってこちらへ飛んだのは、姫様がこちらへ飛んでおよそ1時間程後の事です』
『ほぅ・・・時間のズレが発生する様だな
単純計算だとこちらの1日がむこうの世界で1時間という事になるが・・・
一定とは限らぬ、結論を出すのはいささか早計か』
『そうですね・・・』
姫様がこちらの世界について、いくらか知識があるのはその為ですか・・・
『それと、ブリュンヒルデよ
冗談で言ったんじゃが、サクラを意識し過ぎではないか?』
!!
『意識などしておりません、姫様が変な事を言うから』
『処女のサキュバスなど笑えんぞ』
『ななななな!何故それを!?』
そうです
私、サキュバスなのです
齢270歳・・・経験はございません
ございませんとも
サキュバスと行ってもクォーターなので精が糧という訳ではないのです
普通の食事で生きて行けます
催淫スキルも継承しなかった様で実質サキュバス要素ゼロですが、何か?
『姫様、この事はくれぐれも内密に』
『誰にどうこう言うつもりはないが、母上も心配しておったぞ』
『お、お、王妃様が!?』
死にたい・・・王妃様にそんな心配をかけてしまっていたとは・・・情けない
『サクラ?これはなんだ?』
姫様が赤い大きな箱の前で立ち止まり、サクラに声をかけます
箱の表面を見てみるとガラス?で覆われており、何やら水筒の様な物が陳列されています?
『姫様、危険です
ミミックでは?』
『いや、魔力は感じぬし、この中の物は飲み物だ』
『飲み物・・・?』
どうやらこの陳列されている物は飲み物と事、やはり水筒の類でしょうか
サクラが箱に何か入れました
遠目からだったので、不確かですが貨幣の様に見えました
後で確認しましょう
水筒の下にある黒い突起部分が赤く光り出します
『この光った部分を押せば良いのか?』
姫様が、サクラに問うと彼は頷きました
伝わったのでしょうか?
姫様は悩んだ結果、赤い筒の飲み物を選び、光っている部分を押します
ガシャン!
何の音でしょうか
念の為警戒します
サクラが箱の下部へ手を突っ込むと、中から先ほど姫様が選んだ筒が出てきました
『おぉぉぉ』
思わず感嘆の声を上げます
飲み物を販売する魔道具という事でしょうか?
姫様はサクラに「ありがとう」と感謝を告げます
『姫様、この様な魔道具道端に置いていては、盗賊共の恰好の的では?』
『そうだな、恐らくトラップが仕掛けてあるのであろう
この魔道具を動かそうとすると爆発する・・・といったな』
『さすが異世界、抜かりありませんろね・・・』
サクラは再び箱に硬貨を入れ、今度は私に押すように促す
え?
私もいただけるのですか?
「だいじょうぶ××、××××××」
『「だいじょうぶ」とは問題ないという意味だ、貰っておけ』
『かしこまりました』
姫様はともかく、私にまで買っていただけるとは思いませんでした
『ありがとう、サクラ』
感謝をサクラに伝えます
どれにしましょう・・・箱にはかなりの種類の筒が並んでいます
異世界の飲み物・・・しゅわしゅわの飲み物は美味しかったのですが・・・
中身も分かりませんし、この絵が私の好みです
筒の柄で購入を決めました
サクラから飲み物を受け取ります
『この筒はこうやって、上部を捻って開けるのだ
さらに逆に回す事で閉める事も出来て、保存も出来るという代物だぞ』
姫様が開け方を教えてくれます
なんと便利な水筒でしょうか
この仕組みであれば蓋から漏れる心配もなさそうです
しかしどうやってこの複雑な形を作っているのでしょう
持ち帰る事が可能であれば、鍛冶士の所へ持って行けば金型は作れるでしょう
・・・問題は素材ですね
・・・っと、そんな話は後回しにして、飲み物をいただいてみます
泥水の様な色ですね・・・
匂いは
!!!
良い香りですが・・・味は・・・
『美味しい!この気品漂う風味はなんでしょう
お茶の様ですが甘いです』
何という飲み物か後でサクラに聞くとしましょう
『ぐぬぬっ』
姫様は筒の開け方が分からない様です
サクラが見かねて開け方を姫様に教えています
プシッ!
姫様が選んだ飲み物はしゅわしゅわの飲み物の様ですね
『見よ、ブリュンヒルデ
黒い液体だ』
黒い液体とは・・・しゅわしゅわとは言え、美味しいのでしょうか・・・
姫様は一口飲むと、気に入った様で一気に飲んでいます
姫様、しゅわしゅわを一気に飲むと
『これも美味しいぞ!ブリュンゲフゥ!』
『人の名前を変な風に呼ばないでください
はしたないですよ、姫様』
『気にするな!ここは異世界だ!』
『姫様、それに慣れてしまうと帰った時に大変ですよ』
こちらにいる間に緩めてしまうと、元の世界に戻った時に大変です
私がしっかりと見張っておかねばなりませんね
この飲み物は名前は「みるくてぃー」と言うらしいです
気に入りました
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます