村人Aとして異世界転移者にチュートリアルを

♯14.5 村人Aとして夕食を

ソフィアの髪を乾かし終えた

あ

ブラシがないな・・・櫛で良いか

櫛で髪をとかして完了だ

ソフィアが「ありがとう」と声をかけてくれた

気にしなくて良い、慣れている

調理に戻ろう

あとはカレーのルーを入れて煮込むだけだな

料理が気になるのかソフィアも後を付いて来た

ガスコンロに火を付けるのをじっと見ている

沸騰してから、ルーを投入する

良い匂いがしてきた

ソフィアに味見をしてもらおと、小皿にカレーを取りソフィアに渡す

ちゃんと冷ましてからな

ソフィアがふーふーっと息を吹きかけおそるおそる味見する

たこ焼きの件があるから慎重になっているのだろう

「んーーーーーーーーーーー！」

幸せリアクションいただきました

辛くて食べられないという事はないらしい

カレーだし不味く作る方が難しいので味は大丈夫だろう

あとは少し煮込んで終了だ

調理が終わったのを確認するとソフィアはソファーへ座り・・・寝転がった

寛いでるな・・・いいけども

寝転がるならと、人をダメにする系のクッションを枕替わりにソフィアへ渡す

頭を沈めて幸せそうにしている

初めてだとそうなるのよね

分かるよ、ソフィアさん

自分の仕事用の机へ向かう

時間は17:00

日課のMMORPGにログインする

と言っても最近は少し休み気味でマーケットの出品を少しいじって金策するだけだ

ログインすると同じカンパニーに所属するフレンドのFoxcatさんがいた

「こんこん」

「こんこんー」

チャットで挨拶をする

ネットで知り合った同じ年齢のどこぞの会社の代表取締役の方だ

たまにこんな時間だが、リモートでログインしている事がある

その昔格闘ゲーム好きが高じて、オンラインで毎週末、格闘ゲームのオンライン大会を開催して生配信をしていた

その時に知り合った友人だ

デザイナーという事もあり優勝者にはSNSのアイコンを作製してプレゼントという形で始めた生配信だった

そのゲームではトーナメントモードがあり、8人部屋で自動マッチングするシステムだ

毎週土曜23:30から生放送で出場者を募るエントリー枠

24:00から試合開始といった流れだ

8人のトーナメントが30分程で終了するので程よい時間だった

開催当初は一人で全てを運営していたのだが、出場者が徐々に増えていった

人が増えてくると

エントリー枠　23:00～24:00

Aブロック24:00～24:30

Bブロック24:30～25:00

決勝ブロック(AブロックとBブロックの勝者)が25:00～25:10頃

となる訳だ

これが、4ブロック程まで増えると

エントリー枠　23:00～24:00

Aブロック24:00～24:30

Bブロック24:30～25:00

Cブロック25:00～25:30

Dブロック25:30～26:00

決勝ブロック(Aブロック～Dブロックの勝者)が26:00～26:20頃

翌日休みとは言え、参加者誘導しつつ2～3時間近く喋る事になる

これが、おっさん一人で運営するのは体力的にキツくなり始めた

参加者の歳の近い人達に「配信やればいいじゃん」と半ば強引に声をかけ

まんまと運営に引きずり込んだ

参加者も年の近い人たちが多かった為自然と協力してくれる人達が集まった

運営が増えた事により

エントリー枠　23:00～24:00

A～Hブロック24:00～24:30　※運営による同時進行/配信

決勝ブロック(A～Hブロックの勝者)が24:30～25:00

参加人数　MAX64人

所要時間　1時間半

という割とコンパクトな大会となった

毎週参加者は増え、最大で100人くらいだっただろうか

規模は小さいが楽しくやっていた

今では参加してくれていた人達の中から、プロゲーマーになった人達もいたりする

運営に参加した友人達とはたまにオフで飲みにいったり、オンラインで一緒にゲームをしたりと今も交流がある

その中の一人がFoxcatさんだ

Foxcatさんは映像、音楽関係に造詣が深く、創作物に関しても客観的に評価出来、信頼のおける人物だ

今のこの状況・・・相談してみようか

いや、完全に頭おかしいと思われるな・・・

「落ちるねー、おつおつー」

あ

悩んでいるうちに、Foxcatさんはログアウトしてしまった

仕事に戻ったのだろう

ソフィアの事を相談するかは一旦保留としよう

ソフィアの方から歌が聞こえて来た

俺のマイリストをタッチしたのだろう

「一発撮り」という動画チャンネルだ

メジャーシーンで活躍するアーティストのパフォーマンスを一発撮りで収録したチャンネルだ

ソフィアが今聞いているのは「rena」というアーティストの「ANIMUS」という曲だ

彼女のパフォーマンスは初めて聞いた時、震えた

この企画のコンセプトはアーティストがプロたる所以を感じる事が出来るのでとても好きなチャンネルだ

寝転がっていたソフィアが起き上がって真剣に聞いている

分かりますよ、ソフィアさん

震えるよね？

ソフィアが涙を流している

歌詞は分からないだろうから、アーティストの歌に込めた感情が伝わったのだろう

気持ちは非常に良く分かる

ソフィアにタオルを渡す

ソフィアは呆然としていたが、タオルに気付くと受け取って涙を拭いた

言葉の通じない人をここまで感動させる歌って凄いよね

人間の生み出した文化の極みですよ

そう感じませんか？ソフィア・ディアノートさん

ソフィアの世界では、こういった文化はなかったのかもしれない

良い機会だから異文化にはたくさん触れて欲しいものだ

ソフィアは深呼吸して心を落ち着かせている様だ

そんなソフィアを見て

感情を揺り動かす書物や、映画を所持する事を禁じられた国に住まう主人公が、感情を抑制された世界で書物に触れ感情を取り戻し、国に反逆するといった映画があった

その映画の事をふと思い出した

ちなみにアクション映画だ

観ると良い

次にソフィアが選んだのは、「雀蜂」というアーティストの「灼炎」

アコースティックギターとヴォーカルの音域が広くとても心地よい歌声で感情がとても伝わるパフォーマンスとなっている

ソフィアと一緒に聞くが、やなり何度聞いても良い

初めて聞いた時は同じように泣いた、いや、今でも泣ける

「ららら～ら～ららら、らら～ら～ら～ららら」

ソフィアが曲を口ずさむ

おおお

異世界人にもしっかりと伝わったらしい

ソフィアはもっと聞きたい様で、タブレットを俺の所へ持ってきた

先程の2曲をプレイリストに入れリピート再生にする

異世界ソング、ヘビロテするが良い！！

今のうちに米を炊いておこう

準備をし炊飯器のスイッチを押す

明日の仕事の件でクライアントに連絡しておかねばと部屋を出て電話をする

その後、ニュースサイト巡り、スマホゲーのスタミナ消費を行い19:00頃になったのを確認する

・・・ソフィアまだ聞いているのか

気に入ったようだ

晩飯には良い時間だろう

ソフィアに声をかける

ソフィアがタブレットを指差しメロディを口ずさむ

曲名が知りたいのかな？

「アニムス」だと教える

もう一曲の方も教えたいが、現状細かいコミュニケーションは難しい

一緒になってしまってはマズいだろう

今度教えよう

椅子を引き、座る様に促す

カレーは既によそってソフィアの席に準備してある

「カレー」という食べ物だと教える

飲み物は氷水だろう

個人的にカレーにジュースは邪道だと思っている

インドカレーのラッシーは許す

個人的な好みだ、すまんな

手を合わせて「いただきます」と言うとソフィアも真似て「いただきます」

くぅ

可愛いな

庇護欲ぅぅぅ

ソフィアはカレーを食べた後、すぐに水を飲んだ

多少辛いらしいが、野菜、肉と次々と食べているので問題はないだろう

米と一緒に食べてみて欲しいので、俺が食べてみせる

理解したらしい

ソフィアもカレーと米を一緒に口に含む

！！

はい、幸せリアクションいただきました

日本が誇るカレーライスの味ご堪能ください

カレーのルーと米のハーモニー的な何かを感じてくれ

ソフィアは米を指差してこちらを見るので「コメ」という名だと教える

異世界ファンタジーで米ってあまり出てこない気がするな

パンはあっても米を主食とはしない世界なのだろう・・・きっと

あっという間に皿を空にしたソフィアは少し物足りなさそうに感じる

おっさんは察しましたよ

おかわりですね？

カレーはおかわりしますよね！！

普段小食の人でも、ついおかわりしてしまうカレーの魅力たるや

念の為、皿を指差して聞いてみる

「カレー　食べる？」

「かれー　たべる」

ソフィアはノータイムで返して来た

おそらくおかわり希望という事で良いだろう

返事が早かったので思わず笑ってしまった

カレーをよそって、水も空だったので注ぐ

俺ももう少し食べよう

ソフィアはおかわりの分も全て平らげ満足そうだ

皿を片付けて洗う

調理中、道具は常に片付けならが作るタイプなので、食べた後の食器を洗うだけだ

後回しにすると溜まってしまって、腰が重くなるからね

振り向くとソフィアが朝食後同様、椅子でうつらうつらしていた

何？

君は食後に絶対寝る民なの？

子供か！！

皿を洗い終わるとソフィアは完全に寝落ちしていたのでベッドへと運ぶ

20:00か

いつも寝るのは深夜1:00～2:00なので、まだかなり時間があるな

3時間自由時間、3時間仕事としよう

先に仕事だな、遊びを先にしてしまうと止め時の逃してずるずるとやってしまうパターンだ

今回の仕事は店頭什器の提案案件で3Dモデル作製し、店内に配置した状態と仕様書のカンプを作る

今回はスーパーに設置する袋入り調味料のプロモーション什器だ

コスト的に素材は紙かな

運送費の面で折りたためてコンパクトになり、納品後に店で組み立てるのが一般的だ

簡単なラフ画を描いて寸法を決める

商品の3Dモデルを作り、テクスチャを貼って完成

これは簡単だ、ゲームの様に360度で見る事はない

片面にだけ貼り付ければ良いので、UV展開は不要だ

ジュース等の円柱の物だったりすると裏側までしっかりと作る事もあるが、そこは時間との相談だ

3Dモデルを作ったら、次はテクスチャ用のデザインだ

ここはまだざっくりとで良い

案件が確定すれば、素材をクライアントから貰い本デザインへ移る

最初の提案では、用途とコスト、商品訴求についてのプレゼンだ

テクスチャを貼り付け、レンダリングする

レンダリング中はPCの処理が重くなので、あまりPCは触りたくない

丁度良いので休憩しよう

コーヒーを飲みながらニュースサイト、SNSを閲覧しながら風呂が沸くのを待つ

風呂から上がると23:00だった

レンダリングも終わっているので、トリミングして店内写真に貼り付ける

ライティングも違和感ないのでこれで良し

あとは展開図を作って寸法まで入れてしまおう

0:00

作業完了だ

仕事の方が予定時間より押したが、その分明日休めば良い

今日はちょっと早いがもう寝るとしよう

ベッドはソフィアに使わせているのでソファーで寝る事にする

ソフィアが出て行くまでだ、たまにソファーで寝落ちもするしな

どこでも寝れるし目を瞑るとすっと眠りに落ちるタイプなので問題ない

良く付き合った女の子に「あんた寝付き良すぎ」と言われる

目を瞑ると案の定意識が途絶えた

物音で目が覚める

部屋の時計を見ると2:00だ

寝室の方から何やら物音がする

ソフィアが起きたのだろう

トイレか何かだろうと、その時は特に気にせずそのまま眠りについた