♯11.5 村人Aとしてたこ焼き屋をごちそうする

ソフィアが足を止めたのはたこ焼き屋の前だった


そうだね、良い匂いするものね


中には2組程、先客が居た


14:00という微妙な時間帯なのでこんなものだろう



ソースの香りが食欲をそそる


昼食を取っていないので、軽く腹に入れる分には良いだろう



従業員に話かける


ソフィアが外人で日本が初めてだという事、調理している所を見れるカウンター席が希望だと伝えた


どうせなら楽しんでもらいたい


ついでにジンジャーエールを2つ注文した


飲み物を先ほど購入したばかりではあるが、持ち込みはマナー違反だろう


たこ焼きを焼く鉄板の前のカウンター席へと案内される


客席とはガラスで隔ててある


従業員がおしぼりとお冷を持って来てくれた


ソフィアはおしぼりに触れ熱がっている


油断していたな


おしぼりで手を拭く


おっさんとしては顔に当ててしまいたい所だが、ソフィアが見ているので自重する


余計な事は教えない様にしなければ


今後こちらの世界で食事の際に、誰に教わった?という話にもなりかねない



ソフィアが俺を真似て同じように手を拭いていると、従業員が頼んでおいたジンジャエールを俺とソフィアの前に置いてくれた


ソフィアは目を輝かせている


俺が「ありがとう」と従業員に告げると、ソフィアも俺を真似て「ありがとう」と従業員に告げる


拙い発音だが、俺も従業員も思わず笑みがこぼれた



俺がジンジャーエールをストローで飲むのをソフィアがじっと見つめていた



もしかしてストローが初めてだろうか


ソフィアは俺と同じ様にストローを咥える


・・・


・・・・・・


なるほど


これを使って「吸う」事が分からないわけか


吸うという行為自体は、授乳時に経験するだろうから出来るとは思うが・・・



ソフィアは目で訴えてくる


ジェスチャーで吸い上げるのだと伝える


分かってくれたらしく、再びストローを加える



スゥゥゥゥゥ


ストローがソフィアの口に吸いこまれた


スルッ


ドスッ!


ゲホッゲホッ!ウォェェェェ!


ストローごと吸引したせいでストローが喉に当たったらしい



それを見ていた、俺と近くにいた従業員は思わず吹き出してしまった


これは想定していなかった、またもソフィアへの気遣いが足りなかった


申し訳ない


従業員がすぐに台拭きを持って来てくれた


すみません


受け取り飛び散ったジンジャーエールやら何かしらの液体を拭き取る


涙目でソフィアが俺を睨む


ごめんごめん

ソフィアの飲み物のストローを手で押さえる


この状態で飲めと促す


しぶしぶ、ソフィアはストローを咥える


ちゅぅぅぅぅぅぅ


良し!上手いぞ!


ちゅぅぅぅぅぅぅぅ


ソフィアがテーブルに手を付いてストローを加えたまま尻を椅子から上げる


あれ?一気に行っちゃう感じ?


ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!


あー、止めるタイミングが分からなかっただけか


ソフィアの頭を掴み、ストローごと頭をコップから引き抜く形となる


行儀の悪い音を立ててしまったので、従業員と周りのお客にすみませんと頭を下げる


振り返るソフィアを見ると、苦しそうにしている


おっさんは察しましたよ


ゲップですね


今しがたお行儀の悪い音を立てたばかりだ


これ以上はマズい!


ソフィアのおしぼりをソフィアの口へ当てがう


ゲェフォイ!


かなり消音出来た


偉いぞ、ソフィア!


周りを確認するが、どうやら聞こえなかったらしい


良かった



まさかストローで一気飲みするとは・・・


ソフィアにメニューを渡す


好きなの選びなさい


これが良いと指を差したのは、スタンダードなたこ焼きだ


無難なのがいいか・・・従業員を呼んで注文をする


ソフィアがお気に召さなかった事を考えてひとつだけ注文した


俺はあまり腹が減っていない



ソフィアに飲み物は「ジンジャーエール」だと名前を教える


ふと目を離した隙にソフィアがジンジャーエールのコップの端に添えてあるレモンを口に含もうとしていた


止めようとするが間に合わず・・・


!!!!!!


口を米印にして涙目で悶えている


それは酸っぱいんですよ、ソフィアさん


悶え終わったソフィアに「レモン」と言う名前だと教えた




そんなやり取りをしていると、目の前で従業員がたこ焼きを作り始めた


興味深そうに調理を見ている


生地を鉄板に流し込むと良い匂いが立ち込める


従業員の串でたこ焼きをひっくり返す手捌きでソフィアが立ち上がり


『おおぉぉぉぉぉぉ』


っと声を上げる


そのまま興奮してガラスに突っ込み頭をぶつける


帽子が脱げそうになるのを、すかさず抑えて帽子のつばを横にする


耳ははみ出ない様にゆっくりとだ


従業員さんも苦笑いだ


ソフィアはそのままガラスにへばり付いて出来上がるのを見ていた


従業員や周りのお客も微笑ましいといった表情でソフィアを見ていた


申し訳ないですといった感じで回りに頭を下げた



器に盛られたたこ焼きにソースを塗り、青のりとかつおぶしを振りかけ、最後にマヨネーズでフィニッシュだ


ソースを塗られた辺りからソフィアは怪訝そうな顔をしている


大丈夫、おいしいから



従業員がたこ焼きを持って来てくれたのでソフィアの前に置いてもらう様に伝える


するとソフィアが従業員に「ありがとう」と伝えた


おおお


使い方は合っているぞ


感謝の言葉だと理解している様だ


ソフィアの学習能力の高さに感心する


ソフィアがドヤ顔でこちらを見ている


今回のはドヤ顔して良いですよ


ソフィアを見ながら頷く




ソフィアはまず匂いを嗅いだ


良い匂いだろう、そうだろう


串で食べるのだとジェスチャーで教える



ちょっと待って


熱いからね・・・良く冷ましてから食べてと、これもジェスチャーにて伝える


一生懸命ふーふー息を吹きかける姿は実に可愛い


冷まし終えるとソフィアは1個丸々口に放り込んだ


ほふっほふっほふっ!


冷まし方が足りなかったか・・・




ぽーーーん!!



ソフィアの口からたこ焼きが飛び出して目の前のガラスに貼り付いた


すぐさまソフィアにお冷を渡し、おしぼりでガラスに貼り付いたたこ焼きを回収する


従業員に謝罪しガラスを拭いた


ソフィアは申し訳なさそうにこちらを見ている


気にしなくて良いぞ、ソフィア


それより火傷しなかったかな


何事も初めては上手く行かない物だ




ソフィアはもう一度行く準備が出来たらしい


息を念入りに吹きかけ、今度はひと口ではなく半分食べる作戦らしい


学習している


ほふっほふっほふっ!


幸せリアクションいただきました


美味しそうに食べてくれるのは本当に嬉しいな


たこも大丈夫そうだ


気に入ってくれたらしい


「たこ焼き」という名だと教える


ソフィアは全て平らげた


やってしまったという顔でこちらを見るソフィアに


「大丈夫」


と声を掛ける


するとソフィアが「だいじょうぶ?」と問いかけて来た


!!!!!


やばい


庇護欲が刺激される



可愛い過ぎて辛い




思わずソフィアの頭に手を置き撫でた


ソフィアは顔を真っ赤にして


『×××××××××!××××!』


何か言っているが、顔からして怒っているというよりは照れている感じだ


迂闊だった


女性の頭を気安く触ってはダメだな


「ごめんな」


ソフィアは許してくれた様だ



従業員に会計をお願いする


ソフィアが覗き込んで来た


お金が気になるのだろう


紙幣での支払いも体験して貰えばよかったかもしれない


支払いが終わると、ソフィアが従業員に元気よく「ありがとう」と告げ店の外へ出た


従業員も俺達にに向かって「ありがとうございました」と声を掛けてくれた


ご迷惑をお掛けしました




この調子なら少しずつではあるが、コミュニケーションも取れる様になるかな




名残惜しそうにたこ焼き屋を見つめるソフィア





意を決してこちらに歩き出す


そんなソフィアの顔を見てアニメならここでハーモニー処理する所だなと思った

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