♯11 村人Aと共に食堂へ入る

サクラと共に食堂らしき店へと入る


中には机と椅子が並べられていて、客も数人いる様だ


香ばしい香りが食欲をそそる


先程まで、腹は減っていなかったはずなのに!!



店の者とサクラが話をし、案内された席は目の前にガラスがある調理台の前だった


どうやら客の目の前で調理する様だ


面白い趣向だ


店の者が布とこっぷを私の前に置く


こっぷの中は水のようで、氷も入っている


水を冷たく保つ為の工夫だろうか


布は温かく、丸めて棒状にしてある


あっつい!


想定よりかなり熱いではないか!


サクラはその布で手を拭いている


流石は綺麗好きの民、これにもきっとスライム除去剤が染み込ませてあるのだろう


サクラと同じように手を拭く


うむ・・・これは気持ちが良いな


店の者がサクラと私の前に大きめのこっぷを置いた


中には透明のしゅわしゅわと氷が入っている


サクラが先程、店の者と話をしていた時に注文していたのか?


気が利くではないか!


飲んでも良いのかサクラよ?


サクラが店の者に「ありがとう」と告げていた


同じ様に私も店の者に「ありがとう」と伝える


おそらく感謝、ねぎらいの言葉なのだろう


今後そういった時に使用してみよう



黄色い果実がこっぷに刺してあり、白い筒が入っている


白い筒には穴が開いており、その穴は貫通している


これは一体どう使うのだ?


サクラが白い筒を口に含むと、こっぷの飲み物の中が減って行った


飲み物を飲む為の物なのか?何の為に?


しかしどういう原理なのか、試してみなければなるまい


白い筒をサクラと同じ様に咥える


・・・


一向に飲み物が上がってこない


・・・・・・


飲めないではないか!?


サクラに目で訴える


サクラが身振り手振りで教えてくれる


どうやらこの管を吸い上げる事で飲み物が飲めるらしい


詳しい仕組みが分からぬがこれも魔道具か何かなのだろう


なるほどまかせよ!


スゥゥゥゥゥ



ドスッ!


ゲホッゲホッ!ウォェェェェ!


管はそのまま喉の奥に直撃した




サクラは笑いながら私が飛び散らかした液体を拭いている


サクラ貴様・・・


涙目でサクラを睨む


すると今度はサクラが私の飲み物に管を差して指で固定した


この状態で飲めと?


よかろう、今一度だけ乗ってやる


ちゅぅぅぅぅぅぅ


!!??


飲み物が管を上がって来る!何故だ!?


ちゅぅぅぅぅぅぅぅ


そしてこのしゅわしゅわの飲み物の爽やかさたるや


そしてこれはいつまで吸い続ければ良いのだ


息が・・・続かぬ!


ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!


全て飲み切ってしまた所でサクラが私の頭を掴み、管をこっぷから抜いた


いかん!!


あれが来る!


サクラが私の口に布を当てる


気が利・・・


ゲェフォイ!


サクラのおかげでかなり消音出来た


周りの客もさほど気にしていない様だ


良かった、聞こえなかったらしい


この管で飲む際は、口で管を固定しつつ吸い込めば良いのだな?



サクラが私に板を差し出した


どうやらこれがこの店の料理らしいな


絵も付いているとは親切だ


だが一体何なのだこれは・・・肉団子か?


どれも似た様な料理で上に乗っている物に差異がある様だ


この料理の専門店なのだろう


一番大きく描かれてるこれがメインの料理か


これが良いぞ、サクラよ


一番大きく描かれている絵を指さすと、サクラが店の者を呼んで注文したようだ


飲み物は「じんじゃえぃる」と言うらし


この端に刺さっている黄色い果物は食べて良いのだろうか


口に含もうとした瞬間、サクラが止めに入ったが遅かった


!!!!!!


なんという、なんという酸味!


これは食べる物ではないな・・・まだ熟れていないのではないだろうか


「れもん」というらしい、この果実は危険だな



目の前には料理人が立っていた


鉄板で焼く料理らしいな・・・鉄板には穴が開いている


鉄板の穴の中に何かを塗って、白い液体を流し込む


肉だんごではなかったか


白い液体の中に赤い切れ端を入れる・・・肉だろうか?


良い匂いが鼻をくすぐる


料理人が両手に巨大な串を持って


とてつもない手捌きで料理をひっくり返して行く


あまりの光景に思わず声を出して立ち上がる


『おおぉぉぉぉぉぉ』


立ち上がった勢いで目の前のガラスに頭をぶつけてしまった


帽子が脱げそうになるのをサクラが押さえてくれた


そうか耳は隠さねばならんのだったな



料理人も驚かせてしまった様だ・・・すまぬな、続けてくれ


丸い物体をコロコロ料理人が転がすのは見ていて面白い


焼きあがると、串で器に移してくれた


器に盛るのもなんという手際の良さか


そしてその丸い料理に黒い液体を塗りたくる



えぇぇぇぇぇぇ



その黒い液体は必要なのか?


おいしくなさそうだぞ・・・


さらに緑の粉と木くずの様なものを振りかける


最後に白い液体を満遍なく掛けて出来上がりの様だ


店の者が私の前にその料理を置く


店の者に「ありがとう」と伝え、サクラを見る


サクラは少し驚いた様に頷く


使い方は間違っていなかった様だ



変わった料理だ・・・


しかし私は知っている


こちらの世界の食べ物の美味しさをな!


まず匂いを嗅ぐ


!!


くぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!


これは!?


この木くずと、黒い液体からはなんとも食欲をそそる香りが漂ってくる


涎が出る・・・王族ともあろうものがはしたない


細い串が料理に刺さっているのを確認すると、それで食べろとサクラが促す


良かろう、この香り間違いあるまい!



ん?


なんだ?サクラよ


冷ましてから食べろと?


ふーふーして?


出来立てだしの、確かに熱そうだ・・・口の中を火傷する所であった


息を吹きかけ、少し冷ましてから一つ口に放り込んだ



!!??



ほふっほふっほふっ!



あちゃちゃちゃちゃ




ぽーーーん!!



口から料理が飛び出してしまった!


目の前のガラスに直撃し、貼り付いた


サクラは私に水の入ったこっぷを渡してくれる


すまぬ!あまりにも熱っついのだ!


水を飲み干し舌を冷やす


サクラは目の前のガラスに貼り付いた料理を回収し、店の者に謝罪していた


世話をかける



次はちゃんとやれるぞ?


ホントだぞ?



息を念入りに吹きかけ、今度はひとつ丸ごと口には含まずに齧り取った



ほふっほふっほふっ!



う、美味い!



なんという美味しさよ!



外側はカリッと、中はトロットロだ


黒と白の液体が実に合う


木くずかと思っていた物も風味が良い


残りを食べるとコリコリとした触感の物が歯に当たる


これは・・・途中で入れていた赤い物体か


触感からして肉ではなさそうだが・・・


不思議な味?触感だな


多少甘味がある?か?


「たこやき」という料理らしい


気に入ったぞ!


たこやき!!


全て食べてしまった・・・サクラ・・・すまぬ


サクラの分まで・・・


「だいじょうぶ」


サクラは告げた


この「だいじょうぶ」という言葉は


問題ない、任せろといった意味になるのだろうか


サクラが良く使う言葉だ


この言葉を聞くと心なしか安心する


「だいじょうぶ?」と問いかけてみた


サクラは私の頷き頭をなでた


なななななななっ!


『子供扱いするでない!バカ者め!』


「××××××」


サクラは謝罪しているようだが、世話になっておる身だ


まぁ良い、今回は特別に許す



サクラが席を立ち、店の者と話を始める


支払いをしている様だな


貨幣を確認しておこう


???


そんな紙切れが貨幣になのか


持ち運びには便利そうだな


支払いを見届けると、店の者に「ありがとう」と告げ店の外へ出た


店の者も私に向かって「ありがとうございました」と声を掛けて来た


うむ、少しずつではあるが意思の疎通が出来る様になって来ているのではなかろうか




そして、たこやき



またいずれ食べに来るとしよう





そう心に誓い、サクラの後を再び付いて行く

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