♯12 村人Aと共に食材を購入する

サクラに付いて行くと商人街を抜け、巨大な建物の前に到着した


商人街は人通りもかなり増えた


気になる店の誘惑に打ち勝ち、なんとか辿り着いたのだ


我ながらかなりの忍耐力だ


目的地であろう巨大な建物、領主の屋敷くらいの大きさはあるのではなかろうか


いや、それ以上だろうか


ここも勝手に開くガラス扉だ


この世界の店はどこもこの様式らしい



サクラと共にその建物に入ると、まず目に飛び込んで来たのは陳列された野菜だった


どうやらここは食材を取り扱う店らしいな



サクラはまず店の入り口に置いてある灰色の籠を手に取る


見たこともない材質で出来ているな


そのままサクラは店内へと入っていく、振り向きこちらを確認する


付いて来いという事だろう


サクラが袋に入った野菜を籠の中へ入れる


形状から自分のいた世界における芋の様な物だろう


購入したい物を店内を回って自分で選別し籠に確保する訳か


人が並んでいる入口付近の所が会計所だろう


数人同じ格好をした者が品物を確認している様が見受けられる


実に合理的だな


最終的にあの場所で支払いをするのか


外出してからサクラにばかり物を持たせ事に気付いた


すまぬ、その籠は私が持とうと籠の取ってに手を掛けると、サクラは手に持っていた飲み物の入った袋を渡して来た


こちらを持てという事らしい


分かった!まかせよ!





サクラは赤い棒状の野菜と、丸くて白い野菜を籠へ入れた


どれも透明な袋に4~6個入っているようだ


初めて見る野菜だな



しばらく進むと肉の陳列されている棚へ到着した


白い入れ物に小分けにされており、透明な紙で封がしてある


すでに加工されているので、どんな魔獣の肉かは分からない


サクラに任せるしかないな




店内を見渡して見るが、元居た世界の店舗とは商品数の桁が違う


とてつもない種類と数が棚に並んでいる


この店が特別大きいのだろうか?


ぱんと飲み物も種類が豊富だ


豊富過ぎる


この中から選ぶとなると・・・くっ、拷問に近いな


商品の数に圧倒されて、サクラにただついて行く事しか出来なかった


!?


目の前に階段が現れる


2階もあるのか?


2階にサクラと共に上がる


真ん中の通路の棚に入って行き、小箱が棚いっぱいに並んでいる所からひとつの箱を籠の中へ入れた


この世界は箱の中身は絵で外箱に表示してあるのだったな


サクラが籠に入れた物を籠から取り出し確認してみる



茶色の液体に先ほど購入した野菜が投入してある様だ


スープの様な物だろうか


白い豆・・・にしては小粒の様だが


その上にかけるのか、一緒に入れるのかは絵では判断出来かねるが


サクラはこの箱の料理を作ろうという魂胆らしいな


この世界の飯は、見た目は悪くとも美味しいのは確認済だからな!


楽しみにするとしよう



それにしてもかなり多くの人間がここで購入している様だ


老若男女様々だが、人間族しか見当たらないな


髪の毛の色はほぼ黒、この国の人間の特徴か



しかし、陳列している箱の絵を見てもどういう物なのかまったく想像が出来ないので興味が惹かれる


いずれ制覇してくれよう



どうやら2階での目的はこの箱のみだったらしい、1階へ下りて支払いの場所へと向かう


ふむ、並んで支払いを順番に処理して行く訳か


しかし、皆綺麗に並ん静かに並んでいるな


統制の取れた種族だ


村人達がこのレベルで規律正しくしているのだから、戦闘の時なども同様なのだろう


軍の戦闘している所も見てみたい所だ



並んでいると目の前の黄色い野菜が飛び込んで来た


黄色い棒状の物が根本で繋がっている


どうやって食べるのだろうか・・・?


その野菜を見ているとサクラが野菜を手に取り籠に入れた


しまった


じっと見ていたのを気付かれてしまったか


『た、食べたかった訳ではなくてだな!』


通じないとは分かってはいたが、サクラに弁明する


「だいじょうぶ」と一蹴されてしまった


くぅ、違うのだぞ



私たちの支払いの番となった


品物に魔道具を近づけるとピッと音がする


何をしているのだろうか?


別の魔道具に文字の様な物が表示され、品物に近づける度に表示が切り替わる


商品の名前か・・・いや価格か?


これだけの種類の商品だ、価格も覚えてはおれまい


その為の魔道具と行った所か


しかし、どういった仕組みか分からぬ


術式が施されているとして


1.商品を読み込む術式


2.読み込んだ情報を正しく精査する術式


3.正しい情報を表示する術式


少なく見積もっても3つの工程が必要だ


術式単体の構成であればそう難しくはないが


それを連動させ、一瞬でとなると、高度な技術が必要となろう


魔法で実行するには支払うコストが大きく非効率だ


どう解消しているのだろうか



技術面でも大きく進んでいるな


この世界で学ぶべき事がまたひとつ増えたな


「×××××××」


店の者がサクラに何かを伝えると、サクラは貨幣を取り出した


先程と同じ紙切れを2枚私に渡してきた


支払えと言うのだな


まかせよ!


「ありがとう!」


と店の者に貨幣を渡す


店の者は貨幣を受け取り、目の前の魔道具の中へ貨幣を入れる


紙は魔道具に飲み込まれ、硬貨が排出される


魔道具が自動で計算を行うのか・・・平民で計算が出来ぬ者がおるかもしれんからな


これであれば、計算が出来ない者でも働ける・・・か


釣銭を受け取る


先程は良く見なかったが、この硬貨の素材は銅と銀と金だろうか?


一番大きな硬貨と銀色の方の硬貨は銀にしては少し軽い気がする


金かと思った硬貨はどうやら金ではないらしい


一番小さい硬貨に限っては軽すぎる


これも金属なのだろうか


穴が開いている硬貨もある、どんな意味があるのだろうか


詳しい知識がない為分からないが・・・


鉱石を貨幣と使用するのは共通の様だ


面白い共通点だ


サクラに硬貨を返す


店の者が籠に白い袋を入れると、サクラがその籠を持って移動する


こちらの台で商品を袋に詰める訳か


周りを見渡すと同じように人々が支払いを終えた後各自で商品を袋に詰めている


面白い仕組みな上に、効率も良いな




購入した商品をサクラが綺麗に袋に詰めて行く


こやつ中々に几帳面な様だ


この店で購入した商品はサクラが持ち、こんびにで買った飲み物と肌着は私が持つ事になった


サクラが全部持つつもりだった様だが


何から何まで世話になる訳には行かぬ


これくらいは手伝わせてくれ



サクラはこの店の名は「すーぱー」と教えてくれた


すーぱーを後にし、サクラと共に家へ帰宅した




この世界・・・というよりこの国は、生活水準が高く豊かな国の様だ


サクラの家だけでも結構な数の魔道具がある


複雑で精度の高い動作のする魔道具を安価で入手出来るのだろう


元の世界への帰還方法を見つける事が出来たなら、こちらの技術は持ち帰りたいものだな



お、サクラよ料理をするのだな!


手伝うぞ!


む?


料理を手伝おうと思っていたのだが、サクラは別の部屋へと私を案内した


ここはなんだ・・・


水場にあった様な管があり、サクラが奥の装置を回すと水が出て来た


沐浴の為の浴室だろうか?


!!??


しかも水ではなくお湯


狭いがここは風呂という事か


ここに湯を溜めるのだな


確かに外出して多少汗をかいたからな


相分かった!


風呂に入るぞ!

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