♯10 村人Aと共に外出を02
先ほどの店の名は「こんびに」というらしい、サクラが教えてくれた
店の前で、サクラは私の持っている袋を受け取り、飲み物を1本私に渡してくれた
もう1本はサクラが飲むようだ
変わった形の容器だ
逆さにしても零れない、上部は窄まっていて口に含めるくらいの大きさになっている
蓋を思いっきり引っ張るが開かない
確かに零れぬ様密閉する為にはこれくらい固くしておく必要があるか・・・
開けるのに苦労しているとサクラが開け方を教えてくれた
蓋を捻るとプシュッという音と共に蓋が開いた
蓋の接合部分を見ていると、螺旋状の複雑な形をしている
ここが噛み合って、閉まっている訳か・・・良く考えられている
こんな加工をこの精度で作れる職人が私の居た世界に果たしてどれほどいるか・・・しかも大量生産となると
こちらの職人の技術力の高さに驚く
そんな事を考えながら、サクラから受け取った飲み物を口に含む
!?
おれんじじゅーすとは味が異なるしゅわしゅわの飲み物だが
これも美味しい
くぅ、またしても胸が・・・
ケプッ
この腹から出る音もコントロール出来る様になったぞ
どうだサクラよ・・・何を笑っておる!
む、聞こえていたか
サクラから音は出ない・・・一体どの様にしているのだ
サクラは飲み物を飲んだ後、先ほどと同じ様に捻って蓋を閉めた
そうやって必要な分だけ飲む事が出来る訳か、便利だな
私も同じように蓋を閉める
くっ、回す方向が逆か!
無事閉める事が出来たぞ、どうだサクラよ!
サクラは私が蓋を閉めたのを確認すると、家とは反対の方向を指差した
また別の所へ行くのだな
分かったが、蓋を閉めた事を褒めよ!
先ほど家からこんびにに歩いて来る際に気付いたのだが、このズボン腰の横に収納らしい穴が開いているのだ
最初見つけた時は穴が開いているのかボロ布かと思ったが、袋状に閉じているので収納で間違いないだろう
ここに飲み物を入れる事にする
サクラにその事を身振り手振りで伝えると少し驚いた様な顔をしていたが頷いた
ズボンの収納袋に飲み物を入れた
すると、飲み物の重さでズボンがズリ落ちた
!!!???
迂闊だった、思わず叫ぶ
「はわわぁぁーーーーー!」
サクラも口に含んでいた飲み物を吹き出す
「ぶーーーーーーっ!」
サクラはすぐさま近寄り、結構な勢いでズボンを腰まで上げた
そのまま腹の中央にある紐をキツめに結んでくれた
周りに人はいなかったし、上着の裾が膝上まであったので誰かに見られたであろう心配はなさそうだ
サクラは飲み物を収納袋をから取り出し持ってくれた
「ソフィア、××××××」
サクラが何か伝えたい様だ
おそらく謝罪だろうな
公衆の面前で王女として下半身を晒すなどあってはならん
サクラよ・・・見てはいないよな?
ぐぬぅぅ・・・聞く術を今は持たぬ
こちらの言葉を話せる様になったらこの事は追及せねばなるまい
もし見ていたのならその時は・・・
サクラの後ろを付いていくと、大きな音が鳴り始めた
サクラが立ち止まる
む!警鐘か!?
目の前の柱の上部にある丸い物体が赤と黒に明滅する
黄色と黒の縞模様の棒が目の前に下りてきて、腰の位置で止まった
魔物襲来の合図だろう
空か!?
空を警戒するが上空には何も見えないし、感知も出来ない!
どこだ!!
地鳴りがしている事に気付いき、音の聞こええて来る方を見る
くるまの倍以上ある塊がこちらに向かってくる
「サクラ!!」
「だいじょうぶ」
サクラは再び私の前に守る様に立ち塞がった
目の前を大蛇の様な物体がとてつもない速さで轟音と共に通り過ぎて行った
中には人がいた・・・気がするが、あれもまさか乗り物なのだろうか
サクラはあれを「でんしゃ」だと教えてくれた
でんしゃが通り過ぎると警鐘と柱の明滅は止み、縞模様の棒は上へと上がって行った
呆然としていたが、サクラが肩を叩き「いくよ」と声を掛けてくれた事で我に返った
大量の人間をあのスピードで運べる乗り物が存在するとは・・・
異世界おそるべし!
すれ違う人々の視線が刺さる
彼らを見て気付いたが、髪の色が黒い人々が多い様だ
この世界の特徴なのか、私の様な髪の色は珍しいのだろう
サクラの後を付いて行くと、商人街の様な場所へ辿り着いた
そこには様々な店が立ち並ぶ、食べ物を売っている店は分かるが他の店は見ただけでは用途が判断出来ない物が多い
良い匂いがするからここは食堂だろうか?
まだ腹は減っておらんからな、また今度にしよう
何を見ておるサクラ!入るかじゃと!?
・・・まだ良いわ!
いや、ちょっとだけ入ろうかな?
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