♯9.5 村人Aとして外に連れ出す01

眠っているソフィアを椅子から寝室へ運ぶ


軽いな


気疲れと満腹で疲れたのだろう



今のうちに風呂に入ってしまおう


風呂は必ず溜める派なのでお湯を溜める


その間にアニメを1本と日課のソシャゲを回す


良くあるスタミナ消費系のソシャゲだ


ソシャゲなんてと思っていた時期が僕にもありました


ストーリー重視の過去の英雄を召喚して戦う感じのやつだ


原作も好きな事もあったが、このソシャゲのエピソードのひとつがアニメ化された際に興味を持って始めたら見事にハマってしまった


アニメを1本見るとちょうど良い具合に風呂が溜まるのだ


今日は全然劣等生じゃない劣等生のアニメを観ようかな





朝風呂の気持ち良いこと


寝室を除いてみるがソフィアはまだ寝ている様だ


今のうちに仕事をしてしまおう



フリーランスのグラフィックデザイナーとして働いている為、ある程度自分で仕事をコントロール出来る


この仕事でなかったら、ソフィアの面倒を見るのは難しかったかもしれない


今日やる仕事はアクアリウムメーカーの定番商品と付属品のブローシャーだ


商品画像の差し替え、テキストの修正、レイアウトの変更と行った事が主となる


仕事をいただいてから3年目か、昔働いていた会社の伝手でいただいた仕事だ


ブローシャー16ページ、初年度はデザインから何から1から作製する為、重たい仕事ではあったが


翌年からは新商品を少々差し替える程度なので負担は少ない


午前中で終わらせてしまう事にする


ソフィアを起こしては悪いので、ヘッドフォンをし音楽を聴きながら仕事を開始する


今日は「ぎなぎなや」女性ヴォーカルの曲にしよう




13:00頃だろうか、ソフィアが起きてきた


「おはよう」と声を掛けてみる


ソフィアも少し間はあったが「おはよう?」と返してくれた


ソフィア側もコミュニケーションを取ろうとしてくれる姿勢が嬉しかった


笑顔で頷き正しい反応であると伝える


ソフィアは俺の後ろに回り込んだ


俺が何をしているのか気になるのだろう


裏表紙の修正で完了するので終わらせてしまおう


ソフィア少し待っていてくれ


ソフィアは俺の作業をじっと見ていた


彼女は俺が何をしていか分かるだろうか?


ソフィアが魔法を使えるという事と食事の反応から勝手に異世界物お約束の中世世界の様な環境と文化レベルだと決めつけてしまっているがどうなのだろうか?


タブレットにもそう驚かなかったしな



それはコミュニケーションが取れないとどうしようもないな


いつまでここにいるかもわからないし






ブローシャーは完成した


元請へデータを入稿して印刷会社へ印刷依頼をかける


こういった仕事の場合多くがデータの入稿で完了する


ここは紙媒体での納品がお望みだ


初回は3000部の依頼だ


年間増刷がおよそ2000部程なので


先に5000部依頼をかけておき、2000部は在庫として保管しておき


リピートが来た際に在庫から発送する事にしている


初回の分の見積りに2000部と送料も含めておく


リピート依頼の際は手数料分くらいで残りは粗利となるのでそこそこおいしい仕事だ


2000部の在庫もたいして場所も取らないし、この会社だけだからな




「仕事も一段落したし出かけるか?」


ソフィアが聞き取れたであろう部分だけ復唱する


「でかける?」


13:30


もしかしたらお腹が減る頃かもしれない


朝結構食べてたから、まだお腹は空いていない可能性もある


散策しながら腹が減っている様であれば途中で店に入ればいいか


晩飯の準備も必要だしな


晩飯はカレーにしようと思う


カレー嫌いな奴はそういないだろう・・・


待てよ


ソフィアの世界では1日が24時間ではない可能性もあるんだよな


2日活動して2日寝るなんて可能性も十分にある訳か


色々な事をこちらの世界ベースで考えてしまっているな


気を付けなければ



あとショーツだ


なにせソフィア今ノーパンだからな


コンビニに女性物の下着・・・あったよな?


買いに行かされた記憶がある


洗濯する分も考えて2.3枚購入すればいいだろう


イベント発生までの繋ぎだし


スマホで決済しているが、今回はお金も持って行く


ソフィアに会計をしてもらおう


良い勉強になるだろう



出かけるにあたってやはり耳は気になるな、結構目立つ


帽子で隠せば良いかな


デニム生地の大きめのマリンキャップを渡す


好きな漫画家さんの画集についていたバッジがいくつか付いている


シルエットやシンボルといった外に付けて行っても分からない物だけ付けている


個人的にキャラ物は外出時に身に着けるのは抵抗があるので使用しない


帽子を被ってもらおうと思ったがシュシュが邪魔だな


シュシュを外す様指示をし、帽子を被ってもらう


髪に跡がついてしまっているが・・・気にする様であれば自分で直すだろう


手櫛でちゃちゃっと直していた


耳は帽子に収納してもらう


耳を収納するのも我慢してくれる様だ


物分かりが良くて助かる


何か納得した様な顔で頷いている


甚兵衛にマリンキャップ


気にする程でもないから良しとする


キャップ似合いすぎるだろ



尊い




ソフィアが掃き出し窓に向かって歩いていく


外に出るのはそっちじゃないですよソフィアさん


ソフィアの手がガラスに当たって立ち止まる


異世界あるあるガラスに驚くイベントですね


おっさんは察しましたよ


走り出さなくて良かった



窓だとは気づいたらしい


もう少し見守ろうか



スライドさせる構造なのは気付いたらしい


鍵にも気付いたね


そうそうレバーを下げるんだけどもストッパーがあるんです


これは流石に難しいかな


見かねてソフィアが理解出来る様に鍵を開ける


ソフィアがこちらを見て何やら偉そうに頷く


ベランダへ飛び出し、外を見て驚いている様だ


空を仕切りに気にしているが・・・何かある?


気が済んだのかドヤ顔でこちらを見つめる


よし、行こうか




玄関へ誘導する


ソフィアが怪訝そうな顔をしている


狭いとか思っているのだろうな


日本のマンションなんてこんなものよ?




コンビニとスーパー行くくらいだからサンダルでいいか


自分は黒いサンダル


ソフィアには白いコンフォートサンダルを履かせる


百合の紋章の付いた物だ


百合の紋章付きの物を集めていたそんな時期が僕にもありました


その頃の一品だ


しかし見事にバラバラのコーデだな


ソフィアの元が良すぎるのでなんか似合っているぞ



ちょっと待ってね


鍵を閉めるから


階段を下りマンションの外へ出る


ソフィアはアスファルトと空を確認していた


太陽・・・ソフィアの世界にはあるのだろうか?


今は7月末、熱い・・・



歩き始めるとソフィアはちょこちょこ付いてきた


歩き始めてからすぐだった


目の前から結構なスピードで軽自動車が突っ込んで来る


「サクラ」『×××!』


ソフィアが俺の前に飛び出し手を掲げた


まずい!


魔法を使う気だ


『×××・・・』


ソフィアの前に飛び出し、掲げた手を抑えて下へ向ける


ソフィアの目をしっかりと見つめ伝える


「だいじょうぶ」


自動車がそのまま通り過ぎて行った


良かった車は無事だ


考えなしに魔法を使うんじゃありませんソフィアさん


「車」という名だとソフィアに伝える



今度はバンが後ろから来た


ソフィアにあれも車だという事を指差しながら伝える


危険はないと分かってくれただろう



ソフィアは俺の後ろを歩きながら


周りの様々な物に気を取られながら付いて来る


転ばない様にね


ソフィアを気にしながらコンビニへ向かう


数人とすれ違うがやはりソフィアは目立つな


皆ソフィアの方をちらちら見ている


金髪美人さんだからしょうがないな


耳は隠しているから美人な外人さんくらいの認識だろう


コンビニの前で足を止める


ソフィアもちゃんと付いて来ている


自動ドアに驚き、店内に入るとまた驚いていた


初めて見る商品と商品数に驚いているのかな?


入って右に曲がる、だいたいこの辺りの棚にショーツはあった気がする


置いて行かれると思ったのかソフィアが小走りで追いついて来た


子供か!


ソフィアはマスカラが気になるらしい


マスカラの箱をソフィアに渡す


ソフィアはまじまじとその箱を見ていた


そんなソフィアを見ているとソフィアが箱を開けようと指をかけた


!!!


ちょちょちょ!


ソフィアからマスカラの箱を取り上げる


「ソフィア、開けちゃだめだよ」


残念そうにしているがマスカラは今は必要ないからな


後ろの本も気になるらしい


海外の人もコンビニの品揃えには驚くという物な・・・


あったあった


一番下に女物のショーツを3つ手に取った


サイズは・・・Mでいいよな


ソフィアが渡せと手を差し出して来る


持ちたいのかな?


ソフィアに渡すと嬉しそうに抱えた


そのまま奥を通ってからレジへ向かう


ソフィアの足が飲み物の陳列ケースの前で止まった


大丈夫


おっさんは察しましたよ


飲み物が欲しいんだね


しこたま驚いているもの


落としていますよ


あなたのショーツ


それを拾い上げ、


飲み物を指差し、選べと促すとソフィアの目が輝く


年齢もはっきりしないので酒はだめだ


コーヒーも異世界人にはハードルが高いだろう


オレンジジュースはお気に入りだったからジュースで良いだろう


この棚からね


ソフィアは理解した様でかなり真剣に悩み始めた


意を決して扉を開ける


冷気に驚いている


いや、そんなに冷たくないでしょうよ


見ている分には面白い


しかしまだ選ぶのに時間がかかりそうだ


先にショーツは買ってしまおう


おっさんがこんな物持ってたら怪しいもんな


サクっと会計を終える


ソフィアの所へ戻ろうとすると


ソフィアは飲み物の陳列棚の前で肩を落としていた


「ソフィア?飲みたい物なかった?」


凄い勢いでこちらを向くソフィア


「サクラ!」


大きい声で俺の名を呼ぶ


??


涙目だ・・・置いて行かれると思ったのかな?


ごめんごめん


「おれんじじゅーす!」


ソフィアが飲み物の陳列棚を指差しながら告げる


炭酸のオレンジジュースとエナジードリンク系の飲み物を一本ずつ陳列棚から取る


「ソフィア 行くよ」


レジを指差しソフィアに伝える


「いくよ!」


ソフィアが元気よく復唱した


可愛いな


思わず噴き出した




レジにて店員に飲み物を、ソフィアに硬貨を渡す


ソフィアに説明しようとしたが、察してくれたらしい


ソフィアの世界にも貨幣があるのだろうか?


しっかり店員に渡しつり銭も受け取っていた


この世界での初めての取引だ


ソフィアはしっかりこなし俺へ釣銭を渡してくれた


店員から飲み物を受け取っていた


店員に「ありがとう」と俺が告げるとソフィアは真似をして「ありがとう」と店員に伝えていた


自分が見本となる事も大事だな

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