♯09 村人Aと共に外出を01

目覚めるとベッドの中にいた


満腹になり寝てしまったらしい


疲れと安堵からか気が緩んだようだ


またサクラに世話をかけてしまった



部屋を出てサクラを探す


サクラは大部屋の中央の奥に座っている


サクラは私に


「おはよう」と声をかけて来た


これは目覚めのあいさつやも知れぬ


「おはよう?」と返してみる


サクラは嬉しそうだ


どうやら正しい対応の様だ


目覚めのあいさつは「おはよう」だ




サクラは2枚の黒い板(大きなたぶれっとだろうか?)の前に座って作業をしている


サクラの前の大きなたぶれっとを覗き込む


たぶれっとが2つサクラの目の前に置いてあり


それぞれに絵が表示されている


サクラが筆記用具だろうか、黒い棒を手にしている


黒い棒を黒い板の上で動かす事によってたぶれっとに表示されている絵が動く


サクラがこの絵を作っているという事なのだろう


絵が出来上がって行くのは見ていて面白い



しばらく見ているとサクラが立ち上がった


「×××××××××」


聞きとれた部分だけ復唱してみる


「でかける?」


サクラは頷き私に紺色の帽子を渡した


変わった形の帽子だな生地はなんだろう


丸い金属の様な装飾が付いている


被れという事らしい


帽子を被るという事は外出するという事だな


後ろの髪を結っている輪っかを外して被る


サクラが私の耳を帽子に収納する



そうか魔族と知れては騒ぎになるのだな?


受け入れよう


そういえば実際に外を見ていなかったな


外出の前に確認しておく事にする


部屋の光が差す方へ行ってみると外は見たこともない様な様式の建物がたくさん建っている


外に出ようとすると手が何かにぶつかった


透明の・・・これは巨大なガラスか?


なんと透明度の高い物だろう


これにぶつかったらしい


大きな窓か?


窓枠は木ではない様だ


加工技術もかなり進んでいる様だ




・・・開かない


鍵が掛かっているらしい


窓の中央に鍵の様な物があるが開け方が分からぬ


このレバーを下に引けば構造上、開きそうなのだがレバーが下りない


見かねたサクラが手前の四角い出っ張りを上に引き上げながらレバーを下ろした


一体どういった仕組みか・・・


サクラよ大儀である


まぁ良い、そのままテラスへと出る


目の前に初めて見る様式の家が所狭しと並んでいる


村というよりは街の様だな


上を見上げてみると、どうやらここは4階建ての2階らしい


空に飛行型の魔物の姿はない


魔力も感じぬ


街の防衛はしっかりとしている様だな


よし準備は良いぞサクラよ


出かけるとしよう


サクラも出かける準備は終わっている様だ



サクラに先導され家の入口へ



ここがこの家の入口か?




・・・狭い




サクラが靴を履く


足の前方部分のみ覆われている履きやすそうな靴だ


私に用意してくれたのは、つま先の露出する足の甲の部分だけを覆う履物だ


ふむ


履きやすい


楽で良い




・・・楽観的に捉えているが


何の為の外出か理解していないな・・・


このまま奴隷商に売られたりすまいな?


魔力の蓄えもある


いざとなれば逃げ切れるだろう


警戒は怠らずにしておく事としよう


サクラと共に扉から外に出るとすぐに狭い通路に出た


サクラは鍵を閉めている様だ


どうやらこの建物のこの一室がサクラの部屋らしい




狭いな




階段を下り建物の外へ出る




道は石?だろうか綺麗に補装されている


太陽は真上より少し傾いている


時間は昼頃と行った所か


外は結構暑い


部屋は快適な温度だったが魔道具を使っていたのだろうか


人通りはそう多くない様だ



サクラの後を付いていけば良かろう


歩き始めてからすぐだった


目の前から結構なスピードで四角い箱が突っ込んで来る


「サクラ」『任せよ!』


サクラの前に飛び出し爆裂魔法の術式を組み上げる


『消しと・・・』


サクラが目の前に立ちふさがった


「だいじょうぶ」


サクラが私の掲げた手を押さえ、そう告げる





四角い箱がそのまま通り過ぎるのをサクラの後ろで確認した


中には人がいた


乗り物なのだろうか



サクラによると「くるま」というらしい


形状の異なる四角い物体が今度は後ろから来た


サクラはあれもくるまだと言う


そのくるまにも中に人がいた


くるまは乗り物で様々な形状があるらしい


魔力が感知出来ないが、あれも魔道具の様な物か


生物ではなさそうだ


このくるまという物は特に警戒の必要はないらしい


周囲を観察しながらサクラに付いて行く


この世界にも植物がある事を確認出来た


数人の人間ともすれ違うが魔力はやはり感じられない


すれ違う人間が私を見ている気がする


耳は隠しているし、魔力も抑えているから魔族とは分からぬはずだが・・・


くるまは白い線を基準に道の中央を通るらしい


道の端を人が通るというのがこの世界のルールらしい事は歩いているうちに理解した


家は大小様々で形もバラバラだ


城なども周りにはない様だ




緑の看板のある建物の前でサクラが足を止めた


ここに用事があるらしい



これは先ほどあにめで観た


買い物をする所、つまり店だな


サクラの後ろを付いて行く


サクラの家にもあった大きなガラス


これが扉の様だ


サクラが扉の前で立ち止まるとゆっくりと扉が開いた


うむ、ごくろう・・・!?


扉を開ける者が扉の横に控えているかと思ったが見当たらない


これも魔道具か


贅沢に使用しているな


これを元居た世界で再現するとなると相当コストが掛かるぞ


店内にも発光する魔道具が設置されており店内を照らしている






サクラ待って




サクラは店に入ると同時に右へ曲がる


多種多様な物が綺麗に陳列されている・・・


これら全てが売り物なのだろうか?


美しく陳列された商品とその量、店内の清潔さに衝撃を受ける


王族御用達の洋品店より高級感を感じる


これが一般的なのか?それとも高級店へ連れて来たのか?


やはり私をここで売る気なのか?


ふと棚に目をやる


箱の表面には中に入っている物が描かれている様だ


箱の絵から察するにどうやら化粧品か?


サクラが私が見ている物を手に取り渡してくれる


箱の全面を確認してみると図で使用法が描かれていた


目に使う化粧品の様だ


どの世界も女性は美しくありたいというのは共通か


中を確認しようと箱を開けようとする


「ソフィア×××××」


サクラに箱を奪われた


箱の中身は購入前は見れぬのか・・・


残念だ



後ろには書物がある


まるで実際にそこにいるかの様な絵が表紙の物もある


これらも中身は見る事が出来ない


商売上手め


気になったら買わざるを得ないではないか




サクラは棚の下段から袋を3つ取った


袋の絵からこれはどうやら女物の肌着らしい


私のを購入しに来たのか


なんと!?


見ず知らずの私の為に良く尽くしてくれる


良し私が持とうではないか


渡すが良い


手をサクラに差し出すと笑顔で肌着3つを渡してくれた


私が元の世界に戻った際には酒池肉林の贅を尽くしてもてなそう


しかしサクラよ金は足りるのか?


高級そうだが・・・



サクラに着いていき、突き当りを曲がるとそこは・・・




とてつもない量のおれんじじゅーすの山だった


宝物庫なのか?


ここは?


あまりの神々しい光景に手に持った肌着を床に落とす


それをさっと拾うサクラ


すまぬな


あまりの光景にその・・・



!?


買うのか?


おれんじじゅーすを?



しかも私が選んで良いと!?


本当に?



ちょっと待って


こんなにたくさんある中から選べとはなんたる試練か


しかしこの試練を乗り越えねばおれんじじゅーすを飲む資格がないという事か


この一区画からのみ選べと?


酷な事を言う・・・貴様悪魔か?


いや、選択肢を狭めてくれたおかげで選びやすくなったではないか


気が利くではないか・・・貴様天使か?



よかろう魔王国パッヘルベルが第一王女


ソフィア・ディア・ノート私自らが餞別してくれる!


おれんじじゅーすの中のおれんじじゅーすをな!


取ってを引いて扉を開ける


!!!???


冷気だと!?


くぅぅぅぅ


思わず目を閉じる


バカな!!おれんじじゅーすを選別する為によもやこんな試練が待ち受けていようとは!?


冷気にも慣れ目を開くとそこには何十種類のおれんじじゅーすが・・・


いや、良く見ればすべて絵柄異なる上に中身の液体の色も異なる


全て別々の飲み物だというのか!?


全て購入したい所だがこの世界の貨幣を持たぬ以上、サクラに甘えられぬ


一本だけ選ばねばならない


中身が見えぬ物は除外だ


一本となると失敗は許されぬ


黒い飲み物も除外だ


泥水の様な物怖くて飲めぬ


そして出来るならばしゅわしゅわが良い


となると判別は泡だな


それを満たす商品となると・・・18種類


多いわ!!


たわけっ!


サクラよ・・・どれにすれば・・・!?





いない!?


どこへ行った?私を見捨てたのか!?


周りを見回すが見当たらない


・・・そうか


今朝知り合ったばかりだ


サクラが私の面倒を見る義理などないのだからな・・・


不安に襲われる


自分で思っていたよりもサクラに期待していたらしいな


我ながら情けな・・・


「ソフィア?××××?」


振り返ると後ろにはサクラがいた


「サクラ!」


思わず声を上げる


なんだこの安堵感は、異世界でしかも言葉が通じぬという事でかなり弱気になっているのか?


認めたくない所ではあるが・・


そんな心中を隠す様に私は飲み物を指差し


「おれんじじゅーす!」


サクラに選ばせるのが間違いあるまい!



サクラは飲み物の中から2本選んだ


おそらくそれがおれんじじゅーすに似た味の飲み物なのだろう


「ソフィア 行くよ」


サクラは指さし歩きだした


「いくよ!」


私も復唱する


言葉の意味は分からないが


復唱した気分だった




サクラの右手にはいつの間にか袋が握られていた


中には私の肌着が入っている様だ


先ほどはこれを先に購入しに行っていたのか


不安にさせおって



店の中央、店の者が待機している所へ向かう


サクラが飲み物を店の者へ渡し、私には硬貨を渡して来た




これはあにめで観たぞ


硬貨と商品を交換するのであろう


釣銭も貰うことももちろん忘れぬぞ


この世界での初めての取引だ


しっかりこなしサクラへ釣銭を渡す


店の者が袋に入れた飲み物を私に渡して来た


サクラが店の者に「ありがとう」と言うので


真似をして同じく「ありがとう」と店の者に告げた

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