♯06 村人Aにといれの使用法を教わる
そう
確かに右手の下から音がしたのだ
箱らしき物が椅子に設置されている
水魔法の準備をしていた矢先に
尻の下からも音がする
!?
一体何が起きている?
まさか厠を模した罠だったか?
サクラを迂闊に信用しすぎたか
よくよく考えれば胡散臭い顔をした男だった気がする
このまま立ち上がるか?
ダメだ
まだ処理が終わっていない
水魔法で洗い風魔法で乾燥させてからだ
王女としてこのままにはしておけぬ
詠唱中断をしてしまった水魔法の術式を組み立てる
その時
「はぅあっ!!」
尻の割れ目に水が飛んできた
死角からの攻撃に成す術もなく
尻の割れ目を蹂躙される
『はわわぁ〜』
しかし痛みはない
まさか
これも厠に搭載された魔道具なのか
尻を清潔に保つ為に?
こんな所にまで魔道具を?
正気の沙汰ではない
こんなところにまで気を回すとは・・・
異世界おそるべし!
しかしもっと前なのだが・・・
自分で腰を動かし位置調整を行う
人には見せたくない姿だ
しかしこれはどうやって止めるのか
サクラに助けを求めるしかないが言葉が通じぬ
そうだな少し戸を開けるくらいであれば見られる事もあるまい
「サクラ!」
呼びかけると正面の扉の下の隙間から白い紙の様な物が入って来た
どうやらサクラが入れたらしい
拾い上げるとそこには椅子の右側の■の部分を押せという旨が絵で描いてある
ここを押すと水が止まると図解で説明がある
分かりやすい絵だ
なんと察しの良い男か
気が利くではないか
その通りに■の表示された部位を押してみる
すると水が止まった
これが魔道具の魔力供給を切る所なのだな
覚えておかねば
水で洗われた事により水魔法は不要となった
ありがたい
魔法力(マナ)の無駄な消費は避けたいからな
厠の前方の扉から紙がまたも入って来た
どうやら次は先ほどの柔らか紙で秘部を拭けという事らしい
水で洗った後で拭くのであれば・・・
許容範囲だ!
しかしこれは前から拭くか後ろから拭くか
確かに悩ましい所である
なにぶん今まで魔法で行ってきた作業だ
待って
よくよく考えれば今回は小さい方だったのだ
前からでなんの問題もなかろう
位置的にもわざわざ遠回りをする様な事もあるまいよ
前からの一択だな
しかしこれ大きい方だった場合は・・・
やはり後ろからが衛生的のも良いかもしれぬな
などと考えていたら次の指示がまたも
扉の隙間より入ってくる
拭いた後の柔らか紙は椅子のくぼみに落とすらしい
立ち上がりズボンを上げてくぼみに使用後の柔らか紙を落とす
入る時は見る余裕がなかったがここに排泄物が溜まるのか・・・
図解によると椅子の後ろにあるレバーを引くらしいな
レバーを引いてみる
すると椅子の内側の隙間から水が溢れ出す
どういった仕組みなのかは分からぬが
中央の排泄物の溜まっていた所が浄化され透明な水になった
浄化魔法が込められた魔道具なのだろう
厠ひとつに一体いくつの魔道具を使用しているのだ
何にせよ助かった
厠のこちらでの名称をサクラに聞いておかねばな
扉を開けると少し離れた所にサクラは立っていた
厠を指差してみる
サクラが同じように厠を指さし
「トイレ」と告げた
「といれ」だな
サクラは平民にしては知能が高い様だ
助かる
サクラは何かに気付いた様な顔をして再度私をといれの中へ
椅子の後ろの箱から水が流れ出ている
いつの間に・・・
ここで手を洗えという事らしい
この世界の人間は綺麗好きなのだな
洗い終わった後この布で拭けという事らしい
覚えておこう
部屋へ戻って続きだ
たぶれっとでこの世界の事を調べるとしよう
「サクラ」「たぶれっと」
サクラはたぶれっとを手に取り何やら操作してから私に渡した
そこには人を模した絵が映し出されていた
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