♯05 村人Aに厠へ案内される

もよおして来た


小さい方である


おれんじじゅーすを飲みすぎたか・・・




厠はこちらの世界ではなんというのだろうか


目の前にいるのは男


サクラに身振り手振りで伝えるのは


王女であるプライドが・・・





許さぬ!




だからと言ってこのままでは決壊してしまう・・・


刻限はゆっくりと、しかし確実に近づいてくる



「サクラ」『厠はどこだろうか・・・』


サクラは一瞬考え込み






おれんじじゅーすを空になっているこっぷへと注いだ



違う!


違う!!!


そうでは・・・!!


そうではない!!




この狭さだ、おそらく厠は家の外であろう


しかし、先ほど見た映像を見る限り迂闊に外に出ては命の危険があるやもしれぬ



・・・やはり身振り手振りでサクラに伝えるしかないか


しかしどういった仕草で伝える?



股から手で出ている様子を再現するか



ダメだ



王女の品位が・・・!





・・・屈んでで態勢で伝えるか・・・



いやいや男性に嫁入り前の王女が見せる姿ではあるまい



何より




恥ずかしい!




しばらくたぶれっとを置き思案しているとサクラが席を立ち



私の前に掌くらいのサイズだろうか透明な容器にを差し出した


容器の上には絵が描いてある


横から覗いてみると果実の様な物が浮いている様に見える


透明な液体に浮いているのだろう


食べ物だろうか




とても気になる


「××××××× ×××××××」



サクラが何か言いながら目の前の容器の絵を剥がしてくれた


そうかこの絵は容器の蓋なのか



上から覗き込む


やはり果実の様だ


半月型の少し黄色がかった色をした果実だ


このまま液体と一緒に果実を飲む(食べる)物だろうか



今水分を摂取しては追い打ちになってしまう・・・


サクラは私に何かを差し出した


それを受け取る


透明で軽いがスプーンの様な物だろう


食べ物を食べる道具は似た様な物があるらしい




これで果実をすくって食べるのだな



透明な液体の中にスプーンを差し込む




!???


液体ではない


スライムの様な物体だ



果実のスライム漬け・・・か?



スライムを食す文化があるのか


私自身は初体験だ




中型の魔物がたまに捕食しているのを見かけた事はあるが・・・


何より興味が勝った


容器も冷たいのか・・・


一口食べてみる事にした





美味しい


このスライムにもほんのり味が付いている様だ


さらにこの黄色がかった半月型の果実もかなり美味だ



こちらの世界の飲み物、食べ物は元居た世界の物を上回るな


そんな事を思いながら全て食べてしまった



サクラは容器を指差しながら


「ゼリー」と告げる


この食べ物の名は


「ぜりー」


だな!


覚えたぞ・・・





っ違う!


腹が減っていたのではない!


厠へ行きたかったのだ





しかも割とすぐそこまで来ている


何がとは言えぬが・・・



立ち上がり


サクラに声をかける


「サクラ」『厠へ 厠へ行きたい』


「・・・」


サクラは呼ばれた事には気付くが


こちらの言葉はやはり伝わらなかった様だ



くぅぅぅ






冷や汗が出て来た


内股になり太腿をこすり合わせる



焦ってはいけない


深呼吸だ



するとサクラは何かに気付いた様に部屋の隅にある扉の前まで移動し扉を指さす


来いという事だろうか




察してくれたのだな?


サクラよそこは厠だな?


厠でいいんだろうな?


私はそこまで歩くのがおそらく精いっぱいだぞ・・・


扉を開けてサクラが私を誘導する





そこで私が見たのは・・・


個室になっており


内側が繰り抜かれた白い椅子だった



これは十中八九厠であろう?



そうだと言って




サクラはズボンを脱ぎその椅子に座る仕草をして見せる


なるほどやはり厠か



なんと察しの良い男だ


褒めて遣わす


サクラよ


とりあえず出て行ってもらっていいだろうか?





サクラは椅子の横に設置してある白い筒の様な物を引っ張りむしり取った


そしてそれを私に渡して


これは・・・紙か?


身振り手振りで使用法を説明す


いやもう、前とか後ろからとかいいから


こっちで勝手にやるから出て行って?



サクラを思いっきり押し出し、扉を閉め


ズボンを一気に下ろし腰掛ける


滝の様に流れ出る


何とは言わぬ













・・・間に合った








しかし腰掛けてするのはなんとも楽だな




あちらの世界に戻ったらこれを作らせねば




しかしこちらの人間は事が終わった後はこれで拭くのだな


先ほどサクラに渡された物を見てみる


薄い紙の様だが


紙をこの様な用途で使用するとは・・・


こちらの世界で紙は高級品ではないのだろうな




私達の世界では、風の魔法と水の魔法を使用する


紙で拭いて拭き残しがあってはならぬ








やむを得ぬ





ここは魔法を使用するしかあるまい







回復手段があるか分からない魔力を消費するのはリスキ-ではあるが


これは仕方あるまい?


王女としてのエチケットであろう




その時



右手の下から「ピッ」と音がした

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