♯4.5 村人Aとしてタブレットを貸す

目の前でオレンジジュースを飲んでいる


金髪碧眼


エルフ耳


身長は160cm程だろうか


華奢な体つきの


ソフィアという名の少女とのコミュニケーションを図る




やはり言葉の壁は厚い


名詞だけであれば、指を差しながらなんとか理解してくれる


オレンジジュースとコップは理解してくれた


動詞、形容詞等はジェスチャーで伝えるのはとてもハードルが高い


細かいニュアンスは伝わらない







映像で見せるのがてっとり早いだろうか


うちの子供の小さい時(1~2歳くらいだったか)に動画を見せるとリアクション良かったしな



初めてアニメーションを見せた時に声を出して喜んでいたのを良く覚えている


言葉は分からずとも視覚的な情報である程度この世界の事を自分なりに解釈してくれるのではないか


となるとスマホよりもタブレットの方が見やすいかな


動画サイトを見せてみる事にする




寝室からタブレットを取ってくる


ソフィアの前に座り電源を入れ


お気に入り登録されている動画サイトを開く


オススメ動画に動物の映像が表示されている


そういえば一昨日の夜、猫動画を観ていたな





この世界の動物から見てもらおうか


ソフィアは画面をタップしスライドさせる指をじっと見ている


興味津々といった感じだ




ソフィアはタブレットに手を伸ばして来た


自分で操作したいのだろう


彼女の方へ画面を向け


実際に触って見せ、操作方法を教える


自分が見たい動画画像をタッチするだけなので簡単だろう


感覚的に操作可能なこのデバイスは本当凄いよな





まずはアフリカの生態系の動画を見せてみる


動物と言えばアフリカのイメージだし


魔法がある世界だ


モンスターはいるだろうという俺の固定観念による選択だ


だとすれば猛獣は外せないだろう


野生動物を見ればこの世界と彼女のいた世界との比較する事も出来るかもしれない




彼女にアフリカの生態系動画を再生させる


音が出た事に驚いたのか


タブレットの裏側や音が出ているスピーカー部分を確認していた


仕組みが気になるのだろう




彼女にタブレットを指差し


「タブレット」と告げる


彼女のもタブレットを指差し


「たぶれっと」と復唱した


どうやら覚えてくれた様だ


物の名前に関しては指差し確認で今後はやって行けそうだ



アフリカの肉食動物、草食動物、爬虫類と動画が流れる


ソフィアはその動画を食い入る様に見ていた


ひとまずここががどんな世界か朧気でも理解してくれると良いが・・・




そのまま次の動画が自動で再生される


今度は海の生態系だ


サメの捕食シーンでも特に驚いた様子はない


似たような動物がいるのだろうか



食い入る様に見ていた彼女の指が画面に触れてしまい


別の動画へ飛んでしまった




どんな動画に飛んでしまったか確認する




・・・あ



ハリウッド映画の予告動画だ


世界的にヒットした魔法学園に入学する主人公を描いた映画だ


これを見て現実と認識してしまうと、こちらの人間が魔法を使えると勘違いしてしまうのではなかろうか


案の定、ソフィアは驚愕の表情を覗かせた


動画から目を離さず、オレンジジュースに手を伸ばし飲み干す




はいはい、おっさんがオレンジジュース注いでおきますね




今度はハリウッドでリメイクされた怪獣映画だ


こんな怪獣は存在しないのだけれど


今はそれを伝えられる程、コミュニケーションが取れない



あ、今度はゲームのPVに



しかたがない


いずれこの世界に旅立つのだ


警戒しておくに越した事はないだろう


いずれ日本語を理解出来る様になれば


その時、誤解だと誰かしら説明してくれるだろう


ソフィアには申し訳ないけども




彼女はしばらくタブレットから流れる様々な動画に夢中になった


ソフィアが落ち着いたら


この世界の倫理観と日本語を同時に学べる様な作品を見て改めて学んでもらおうか

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る