#3.5 村人Aとして飲み物を出す
椅子に座った少女に飲み物を出す準備をする
異世界人であるならば、定番のカルチャーショックを与えたいところだ
冷蔵庫の中にオレンジ味の炭酸飲料がある
普段は購入しないが、来客があったのでその為に購入しておいた残り物だ
これにしよう
炭酸飲料、マヨネーズあたりはカルチャーショック鉄板の物だろう
準備していると
自分の飲み残しのコーヒーを見て怪訝な顔をしている
そちらの世界では黒い飲み物はなかったか
そうであれば黒い飲みなんて飲もうとは思わないよな
彼女の前にコップを置き炭酸飲料を注ぐ
しゅわしゅわと音を立てている飲み物を不思議そうに眺めている
他文化に触れる瞬間のリアクションは微笑ましい
動画配信サイトでも海外の人に日本食を食べさせてみたなどの企画動画は
マイリストに入れているくらいには好きだ
彼女は匂いを確認し、コップを手にして一口飲む
!!!!!!!!!!!!!
目を丸くして驚いている
やはり微笑ましい
彼女はそのままコップの中の飲み物を飲み干した
『××××××!?××××!?』
何か問いかけているようだが分からない
きっと美味しいといった様な飲み物の感想だろう
『×××× ×××××××××』
彼女は何かを訴える様にコップを俺の目の前に差し出した
気に入ってくれた様だ
冷蔵庫からペットボトルを持って来て彼女の前に置いた
目が輝いている
好きなだけ飲むといいよ
彼女のコップに注ぐ
彼女は再び飲み干した
その時
!!!!!!!!!!!!!!
彼女は胸を抑え、立ち上がった
もしかしてこちらの世界の飲み物は合わなかったのか
こちらの世界の物を与えたのは迂闊だったかもしれない
下手をしたら体に合わずに命を落とす危険すらあるかもしれな・・・
『ゲフォォォォォォォォォォ!!」』
「・・・」
『・・・』
なかなか出せるような大きさのゲップじゃないが
それが金髪碧眼の美少女から放たれた
放たれたのだ!!
そのギャップがツボだった
笑っては流石に失礼だろう
必死に笑いをこらえる
彼女に気付かれてしまった様で顔を真っ赤にしている
すると彼女は俺に掌を掲げた
その手に光が収束していく
おお!
魔法だ!
CGではない光の収束は実際に目で見るとこういった物なのか
などと冷静に見ている場合ではない
今まさにその魔法は自分に放たれようとしているのだ!
今度はゲップではなく魔法が!
ブフッ!
ダメだ完全にツボに入ってしまっている
「ごめん、ごめん!ちょっと待って!」
頭を下げ彼女に謝る
頭を上げると彼女は掌を閉じてくれた
光は霧散し彼女の中へと還って行った様に見えた
彼女が人に害を成す様な魔法が使えるであろう事は分かった
気を付けなければ
この世界に来たのも侵略目的という可能もある訳だ
異世界転移とエンタメ脳でいてはいけないな、実際は・・・
気を取り直してまずはお互いの名前を知る所からだろう
自分を指さし名前を告げる
「桜庭 亮」
「サ・ク・ラ・バ」
彼女は俺を指さし復唱してくれた
「サクラ?」
惜しい
「バ」が足りないが発音が難しいのかもしれない
別段問題もないのでそれで良しと頷く
今度は彼女が自分を指さし
「ソ・フィ・ア・ディ・ア・ノ・オ・ト」
「ソ・フィ・ア」
と彼女の名前であろう言葉を教えてくれた
ソフィア・ディアノート
で良いのだろうか
彼女を指さし
「ソフィア?」
彼女もそれに対し頷いてくれた
どうやらソフィアという名前らしい
こちらの世界では古代ギリシア語だかで、智慧・叡智を意味する言葉だったか
自分がプレイしているMMORPGにもそんな名前の女神がいる
意味はこちらの世界とは異なるのだろうけど
ひとまず名前は聞き出せたな
「サクラ」
彼女が名前を呼んでくれた
『×××××××××』
何かを訴えながらコップをオレに突き出した
もう一杯ね
まだまだ先は長そうだ
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