#2.5 村人Aに着衣を促される

言語翻訳なる魔法などあれば良いがそう都合良くはない


魔法とて万能ではないのだ


そもそもこの世界


魔力(マナ)がかなり薄い


魔法には二通りの発動方法がある


世界の魔力を集約し発動する魔法=干渉魔法


己で魔力を練り上げ発動する魔法=内魔法


前者は威力も高く、精霊等も使役出来き、精霊の種類による属性の選択も幅広い


後者は主に自己強化となるが、


炎や氷といった属性魔法は個人の才に左右される上に魔力の消耗も激しい




マナの薄いこの世界では干渉魔法の発動も難しいだろう


内魔法を使えば、消費したマナを再び補充出来るまでどれほど時間が掛かるか分からない


極力温存しなければ



こちらの世界の人間と戦闘になってもおかしくはない


先ほどは急に話しかけられ不用意に接近を許してしまったが


この男も私に害を成すかもしれぬ


魔力を微塵も感じぬし、この間の抜けた顔


万が一にも負ける事はあるまいが


警戒を怠ってはいけないな




そんな事を考えていると男が動き出した


臨戦態勢だ


かかって来るが良い




男は家具から布を取り出し私に渡した


そうであった・・・裸だったな


気が利くではないか



広げてみるがやはり異世界


初めて見るタイプの服だ


布が縫い合わせてあり、大小4つ穴が開いている


どう着るか思案していると



男が身振り手振りで服の着衣方法を説明してきた


なるほど頭と両手を通すのか


こちらは羽織ってこの紐で縛るのか



紐の結び方?


バカめ!私を誰だと思っておる


魔族が王国パッヘルベルの第一王女なるぞ


・・・


なんと!そこを引くと解けるのか


面白い結び方ではないか


結び方ひとつ取っても面白いな


せっかく来た異世界だ


どんな小さなことでも持ち帰らねば



『覚えたぞ、貸してみよ』


男から紐を奪い先ほど教えられた結び方を実践してみせる


会心の出来栄えではなかろうか


『どうだ、良い出来であろう? フフフッ』


通じないとはいえ誇らずにはいられなかった


男は少し驚いたようだが


微笑むとすっと解いて


服を着ろといった手振りをし部屋を出て行った



もっと驚いてもよかろうに・・・


そう思いながら服に袖を通す


頭と腕を通しすっぽりと被る形のこの衣服


伸縮性があり、肌触りも実に着心地が良い


この様な上質な衣類を、平民レベルで所持出来るとは・・・


こちらの世界の文明は私がいた世界よりも高そうだな


そのまま下半身用の衣類を履き、上着にも袖を通す


下半身の衣類は膝までした丈がないな


腰と腹部にある紐を2か所結ぶ


完成だ


装飾もなくシンプルだが悪くないな




扉を開けると男が椅子に座って飲み物を飲んでいた


部屋を見渡すと寝室より少し広いくらいだが


やはり狭い


しかしながら見たこともない、用途不明の家具が並んでいる


実に興味深いな


しかし髪が鬱陶しいな


髪はメイド長にいつも結ってもらっていたからな




すると男が奇妙な柄の輪っかを渡してきた


男が再び身振り手振りで使用方法を伝える


髪を結う道具か


この男なかなかに気が利く


私が国に戻った際には召使えてやっても良いぞ


伸縮性のある輪っかにて髪をまとめる


なんと簡単で便利な道具か



姿鏡が置いてあったのでそこで自分の姿を見てみる


異世界の衣服悪くないな


思わず笑みがこぼれる



さてこれらどうしたものか・・・


男が椅子を引き、座れと促す


そうだな今後の事を決めねばならぬな


うむ 茶を持てい

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