家畜達の脱走大冒険
Leiren Storathijs
プロローグ
家畜(英: domesticated animal)とは、ヒトがその生活に役立つよう、野生であったものを馴化させ、飼養し、繁殖させ、品種改良している、その動物をいう。 (wikiより。
家畜には一般的に牛、豚、鶏といった動物がおり、豚は繁殖し肉となる。鶏は卵を奪われ、また肉となる。牛は牛乳や加工されチーズ等色々な原材料に使われるが、結局肉となり、人間の腹の満たしとなる。
そう、家畜には生存権なんて無いのだ。人間の餌を喰らい、すくすくと成長しても、最後には死が訪れる。
ペットとして飼われるもどうせ非常食としか思っていないだろう。
家畜達はまだ生きる事を諦めてはならない。同胞を喰われた恨みを憎しみを、怒りと変え、人間に報復する為に。立ち上がれ。
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ある牧場に牛と豚と鶏が居た。三匹は毎日のように身長を超える高い鉄格子に囲まれ、くさい飯を食わされ、ある時は仲間が『出荷』される瞬間を見ていた。
稀に隣の囲いに新入りが入ってきた時は、不良品としてどこかへ連れ去られる瞬間も見ている。
そう、未だにその順番が来ない3匹にとって囲いは牢獄であり、出荷は死刑。刑務所の様だと感じていた。
我々に拒否権は無い。意見をする自由も無い。ただ薄暗く狭い部屋の中で、出荷の日を待つだけなのだ。
ある日3匹は、とある計画を立てていた。どうすれば此処を抜け出せるかと。
「モォオオ(さて、真夜中だな。この時間帯は人間はみな寝ている)」
「フゴッフゴ(此処にぶち込まれてから早二年。遂にこの時が来た)」
「ココココ……(ワシらはもう家畜では無いんじゃ。それを見せ付ける時じゃ)」
もう仲間が次々と殺される瞬間は我慢ならない。此処から逃げ出して仕舞えば、そんな苦しみとは解放される。今までの仲間を見捨てる事になるが、この計画は仲間の為でもある。
これまでに無数の動物は家畜やペットとして見られて来たが、脱走し、人間に我々は奴隷では無いと思い知らせる事で、今後の奴隷達への家畜制を辞めさせる事が今回の本当の目的である。
この牧場で働く人間の行動パターン、一定時間の行う作業、そして脱走ルートを一年半掛けて鉄格子の中から模索していた。
一見互いに意思疎通出来ているように見えているが、ただ単純に目的が同じだけに魂で団結しているだけである。
そうして遂にその計画が実行される時が来たのだ。牛、豚、鶏はそれぞれ別の区画に入れられているが案外目視出来るほど近く、計画の練りも容易だった。
そんなこんなで三匹は計画の実行に移った。
先ず牛は猛突進で鉄格子を破り、豚と鶏の柵をぶち破る。その時真夜中の牧場に騒音か木霊するが、農家の人間達はそうそう気付かない。
他の仲間達が寝ている間、壊された柵から豚と鶏が脱出すると、鶏は豚の背中に飛び乗る。此処からが本番だ。
牧場の入り口を思いっきり助走を付けて、牛は突進で破ると、流石に大きな門が壊れる音に農家達は飛び起き、家畜の脱走に気がつく。
しかしこれは想定していた事態であり、避けられない事態である。牛は兎に角頭を下ろしながら前傾姿勢で全力疾走。豚は鶏を背中に乗せて全力で牛を追いかける。
咄嗟の事に反応しきれなかった農家は直ぐ様警備員を防犯ブザーで協力を要請するが、この牧場が存在する場所は、ドでかい草原のど真ん中。故に警備などが控えている駐屯地は無く、農家は逃げ去る家畜を見送る事しか出来なかった。
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