第4話 真の死神

退院が決まったが暴れだしたせいでまだメンタル面で回復してないと判断されてもうしばらく入院することになった。あの日を境に私は感情をあまり表に出せなくなっていた。それから一週間がたちまた退院の許可が下りそうな段階まで来た。


「ねぇお母さん元気?」

 あんなことをされてもあの神が仕向けたのを知ったおかげでお母さんが心配になっている。

「お前がまた来てほしいと伝えてはいるんだが、まだ会うわけにはいかないって。一番つらいのは奈々なのにあんなひどいことを言っといて簡単には会えないって」

 神に施行をいじられただけで記憶には残っている。これも私のせいなのに、私のせいでお母さんにも傷を負わせてしまった。早く退院したい。退院すればもうお母さんとお父さん以外に合わなくていいんだから。

「よろっと俺は帰ろうかな」

「毎日ありがとう。お父さん」

「命を懸けてあいつが守ったんだ。お前を守るのがこれから俺たちのすることだからな」

 やっぱり翔の親は大好き。死神の呪いをかかってることが知らないにせよ自分たちも死ぬかもしれないのはわかっていると思う。それでも私に寄り添ってくれる。


 お父さんがいなくなるとすごく暇になる。かといってもう六花をよんだら何かが起こりそうで怖い。

「だったら俺と話すか?」

 心をよまれた。つまりまた来たんだ。

「何しに来たの?」

「今から友達がくるぞ」

「なんで?」

「お前が寝ている間にメッセージを送ったからだ」

「あっそ」

 何回私を振り回せば気が済むのかなこの神は。もう何をされても反応しないようにしたこいつは私の反応を見て楽しんでいるんだから。

「せっかくチャンスをやったのにその反応か」

「チャンス?」

「そうだ。お前はもう退院する。退院したら当たり前に六花たちが近づく。だったら退院前に関係を途絶えさせればいい」

 面白そうに思えた。友達の関係を壊す。そうすれば私にかかわらなくなって外部から私の邪魔をする人もいなくなる。そうすれば家から出たいという気持ちも少しも持つ必要がない。

「それ面白そう。いいよ乗ってあげる。その代わり条件あんたの力も貸して」

「それでいいんだ。それでこそ呪われた器」

 妙なことを言ってきた。私はただ自分のしたい正しいことをしているのに。


「奈々だいじょうぶ?びっくりしたよ昨日急にメールくるから」

「ごめんね退院前にあいたくて」

 六花は優しい。だからこそ私から精神的ダメージを折ったらどんな顔するのか楽しみ。絶望した顔を拝みたい。

「それで頼みって」

「私ね。退院したらもう家から出ないようにしようと思うと」

「ふーんそうなんだ。翔が死んで辛いからこもるならいいんじゃない?」

 何も知らない六花はいいね。翔が死んで辛い?殺しての間違いなのに。

「六花ってさ。翔と接触するために私と仲良くなったんだよね。だからさ、翔が死んだら私とかかわる気ないでしょ」

「なにそれ。確かに翔のこと好きだよ。でもそれは奈々とあってからだよ」

 これも知っている。そもそも私と仲良くなってから翔と会っているし。でも少し動揺している。

「そうやって嘘つくのうまいよね」

 何を言えば六花の心を折れるかわからない。だから神に力を借りるんだけど。

「さすがに頼るの早いだろ。だが、こいつはいい感じに染まっているからやりがいがあるな」

 神のかすかな声が聞こえた。

「奈々。どうしたの?様子変だよ」

 完全に罠にかかった。

「変っていつもの私を知らないからなんじゃないの?そうやって翔だけ見てさ。あの時だって翔を見て私に気づかなかったんでしょ?」

「違う。本当に違うから。だって変だよ」

 その困った顔最高にいいよ。もっと絶望した顔が見たい。

「もうさ。そうやって私を排除したいんだったら。別にもう会う必要ないよ」

「違う奈々が心配なだけ」

「いいよね偽善者って」

 完全に砕いた。だって何も言い返してこない。偽善、つまりあの子のやさしさは偽っている。彼女がそう思ってなくても私からの言葉は相当なダメージに…… 

 

!!


 何をやっているんだ私。こんなの間違っているのに。翔がなくなってからいつも心配して寄り添ってくれてたのは六花なのに。私が翔と喧嘩した時だって私の味方になって。

「正気になったか。だが、もう遅い。お前についた真の呪いは無意識にわれの性格と同等の性格になり周りの人を傷つける」

 その神の言葉を聞いて私はもうこの体は私だけの物じゃないのだと思った。どう抵抗しても思考が急に変わる。さっきだって本当に六花の絶望した顔が見たいと思っていた。

「ごめんね。私のせいであなたを傷つけていたんだね」

 違う。そういいたい。でも声が出ない。出そうとしても出すことを拒絶している。心が正気になってもまだ体は六花をつぶそうとしている。

「だったらもうあなたから会いに来るまで合わないようにする。安心して。大翔にもうまく話して合わせないようにするから。本当にごめん」

 涙を流した六花はそのまま病室を出て行った。


「どうだ?なかなかいい結果になったろ」

「あなたのせいで六花を傷つけた」

「何を言っている我は手を貸しただけ九割はお前がやったんだぞ」

 落ち着け私。今こいつに怒りを爆発させたらまた退院できなくなる。感情を殺してすぐにでも退院するんだ。そして呪われた私になってもだれも傷つけないようにしないと。


 それからの私は完全に戦意損失。医者の前では普通でいるが、ほとんど感情を殺している。そして退院できることになった。

「無事退院できたな」

「お父さん私今後外にでないから」

「言い伝えではこんなものがある」

 私の言葉を無視して急にお父さんが呪いのことを知ったように話し出した。

「この村には蘇る伝説があるが、もう一つ神が存在する。それは死神。死神は誰か一人にとりつきその人の周りを不幸にしていく」

 完全に私のことだ。やっぱりあれは死神だったのか。

「六花ちゃんから連絡を受けてもしかしたらと思ったが、お前が誰も不幸にさせないように行動したと思ってな」

「ごめん」

「俺たちはとめねーぜ。だが、自分が間違ったと思う方向にはいくな」

 

 その後私は学校を退学した。そして家から一歩も出ていない。お父さんたちは死神の呪いのことは周りには言わずただ、翔が死んだショックで外に出れないということにしてもらっている。

 トラックの運転手には一度電話をし、今は聞ける状態ではないことを話した。




 それからもう一年がたっていた。



 私は本当に一歩も外にでることもなくなり、お父さんやお母さんともほとんどあっていない。二人はそんな私をいい意味でほっといてくれている。しっかりご飯を作ってくれてほしいものを言えば買ってきてくれる。さすがに高いものは頼んでないけどね。それに、呪われた自分に意識が持っていかれてもなんとか抑えれるようにはなった。誰の連絡先もないパソコンしか触っていないから、六花から連絡がきているのかもわからない。

 さらに死神はあの日以来あらわれていない。面白くないし来る理由がないから。


 もう翔の一回忌だ。けど私は外に出る出ない以前に、現場にはいきたくなかった。

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