第40話 次の目的地は?
銀狐リーダー・ベイツはその後、駆けつけた兵士たちによって取り押さえられた。
どうやら前々から目をつけられていたようで、今回のセルジオ暴行以外にも余罪がたっぷりとあるらしい。
また、リーダーが捕まったことで他のメンバーの悪行も次々と露呈。芋づる式に捕まっていった。
かつて栄華を極め、さまざまな冒険者が憧れた銀狐は、こうしてなんとも寂しい最後を迎えたのである。
ドミニクとしてはまだまだ怒りが収まらないところではあったが、駆けつけたベテラン兵士から「それ以上は君の剣が汚れるだけだ」と諭され、落ち着きを取り戻す。
その後、負傷したセルジオを背負うと、兵士から街の診療所までの道を聞き、連れて行ったのだった。
診療所にセルジオを預けた後、ドミニクは急いでアンジェたちのもとへ戻る。
宿屋の前で待っていたアンジェは、ドミニクを見つけるなり、
「ドミニク!」
と、叫んで抱きつく。
「!? ど、どうした!?」
「あ、ご、ごめんなさい!」
周囲が騒がしくなり、なかなかドミニクが帰ってこないという不安が重なって、いろいろな感情が爆発したようだ。
しばらく気まずい沈黙が流れたが、エヴァの「さっさと用件を言わんか」の言葉にハッと我に返ったドミニクが状況を説明。
時間的に、子どもたちはもう寝ているらしい。
さすがに子どもだけを残してはいけないので、アンジェは宿屋に残ることとなった。
ドミニクが再び診療所へ戻ってくると、セルジオは意識を取り戻しており、ベッドへ横になりながらも、上半身は起こしていた。
「セルジオさん!」
「おぉ……ドミニクさん」
弱々しく呟きながら、セルジオの顔がドミニクへと向けられる。
「話はここの医師から聞きました。あなたがベイツさんを……」
「は、はい……」
ドミニクは少し戸惑う。
ベイツは弁明の余地がないほど最低な男だったが、結果としてセルジオが長らく所属していたパーティー・銀狐は消滅してしまったのだ。
「あ、あの、セルジオさん……銀狐についてなんですが……」
「それでしたら平気ですよ。どのみち、もう長くはなかったでしょうから」
そう語るセルジオの顔はどこか晴れ晴れとしており、ドミニクの想定していたものとはだいぶ違った。
「なんだか、気持ちが吹っ切れましてね」
「は、はあ……」
「銀狐もなくなったことですし、田舎に帰って畑でも耕そうかと思って」
それは冒険者としての現役引退を示唆していた。
「セルジオさん……」
「そんな顔をしないでくださいよ。あなたには感謝しているのですから」
その言葉に、ドミニクは救われた。
それから、セルジオには「あの子に会わせてあげてください、ギデオンとヴェロニカに」と言葉を贈られ、「必ず!」と力強く誓うのだった。
◇◇◇
翌朝。
支度を終えたドミニクたちは検問所を出た。
「ここからまた長い旅路になるな」
「とりあえず、今日の目的地は?」
「カクノ峠を越えて、イヴァン村ってところを目指そうと思って。ここには温泉宿がいっぱいあるらしいから、長旅の疲れを癒せれるよ」
「「「温泉!?」」」
イリーシャ、シエナ、エニスの三人が荷台から顔をのぞかせる。
「村と言っても、観光地として栄えているみたいだから、情報も集められる。もしかしたら、仕事の疲れを癒すために、滞在していたりしてな」
「可能性はゼロじゃないですね」
「だろ? そう決まったら出発だ。頼むぞ、ランド」
「めぇ~」
ランドの引く荷台に乗り込み、大都市ゴルトーをあとにする。
次の目的地は温泉地・イヴァン。
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