第15話 聞き込み開始
ソリアン地方で迎える初めての朝。
朝食を終えたドミニクたちは、早速情報を求めて近くの町のギルドを訪ねた。
「らっしゃい! いいクエスト揃ってるよ!」
店に入るやいなや、威勢のいい声に出迎えられた。
明るく、ひょうきんな言動ながらも、鍛え抜かれた肉体と数々の傷跡――恐らく、彼がこのギルドの支配人だろう。
ドミニクは話しかけようとしたが、それよりも先にイリーシャの様子が気になった。
イリーシャは初めてのギルドに興味津々なようで、首を忙しなく動かしながら瞳を輝かせており、せっかくなので、アンジェにいろいろとギルドの説明をしてあげるよう頼む。アンジェもそれを了承し、ドミニクはひとりで支配人と思われる男へ話しかけた。
「あ、あの、ちょっといいですか?」
「なんだい? うん? 見かけない顔だが……よそから来たのか?」
「えぇ。昨日の夜こちらに到着しました」
「そうかい。んで、早速今日からクエストに挑むってわけか」
「まあ、それもありますが……まずはこれを見てください」
ドミニクは屋敷にあった絵を見せる。
途端に、男の表情が一変。
「こ、このふたりは……」
「! し、知っているんですか!?」
「あ、ああ、何年か前にここを拠点としていた冒険者夫婦だ。よく覚えているよ。竜人にエルフというコンビなんて他じゃ聞かないし、何よりふたりとも恐ろしく強かったからな。誰もが達成できなかった討伐クエストを次々とこなしていったよ」
遠い目で語る男性。
思い出に浸っているようだ。
「今はもういないんですか?」
「ああ。新しいダンジョンを探しに行くといって旅立っていったよ。今頃はその新しい拠点でも、大活躍していることだろうよ。――で、なぜ君はそのふたりを?」
「実は――」
ドミニクはアンジェとイリーシャ(+アンジェの肩にとまるエヴァ)を呼び、事情を説明する。
「!? この子があのふたりの娘!?」
男――支配人ザックの驚愕する声がギルド内に響き渡る。
それを引き金に、他の冒険者たちも集まって来た。
「ヴェロニカとギデオンの娘だって!?」
「おお! 言われてみれば面影があるな!」
「角と耳以外も、目元は母親似だ!」
大勢の冒険者たちが、イリーシャの顔を見て嬉しそうに語る。
しかし、これだけの人数に囲まれた経験がない(しかも全員厳つくて怖い顔)イリーシャは怯えてしまい、アンジェの足にしがみついて顔を隠してしまった。
「おっと、いけねぇ。怖がらせちまったか」
「気をつけろよ、ダン。おまえの顔は人一倍怖ぇんだからな」
「どういう意味だ、コラ!」
「わははは」と、ギルド内が笑いに包まれる。
見た目は怖そうな人ばかりだが、根は優しいようでホッとひと安心するドミニク。
落ち着いたところで、早速ドミニクはイリーシャの両親の現在について話を聞こうとするが――
「すまねぇ、今あいつらがどこにいるかは知らねぇんだ」
「俺もだ」
「ワシも」
さすがに数年前の人物とあって、現状を知る者はいなかった。
ここへきて手掛かりが消えたかとあきらめかけたその時、
「アルムなら、何か知っているんじゃないか?」
ひとりの冒険者が、ある人物の名を口にした。
すると、周りの冒険者たちも「そうかもしれないな」と賛同する。
「だ、誰なんですか、そのアルムさんって」
「この町で一番の古参冒険者さ。かれこれ三十年はいるかな。あの夫婦との付き合いはもっとも長いし、ふたりも彼をとても信頼していた。ヤツなら、ここを出ていってからの足取りについて何か知っているかもしれない」
これもまた有力な情報だ――が、問題がひとつある。
「そのアルムさんという方は今どこに?」
「あいつならダンジョンだ。かれこれ三日はこもっているかな」
「えっ!? そんなに!?」
「まあ、ダンジョンバカだからなぁ、あの人は」
その言葉に、全員が頷いた。
「兄ちゃんたちも冒険者なんだろう? 行ってみるか?」
「もちろん!」
「当然よ」
「うん」
「ダンジョンか……これもまた一度行ってみたいと思っておったところじゃ」
満場一致で決まった。
イリーシャの両親の足取りを知っているかもしれない冒険者アルムを探すため、ドミニクたちはダンジョンを目指すこととなった。
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