第5話 魔女と空の精霊
──玲風さんが風をひいてから、一週間が経った。
無事に風邪の治った玲風さんとは、告白以降も一緒に登校している。しかし今までのような間はない。手こそ繋いでいないが、触れるくらいの位置で肩を並べて、登下校をするようになった。
『なあ、氷雨と玲風さんは付き合ってるのか?』
ある日の夜。自室で茫然としていた僕のスマホに来た通知には、そんな事が書かれていた。送信者は武志だ。
『そんなわけないでしょ。第一、僕と玲風さんとじゃあ釣り合わないよ』
『そりゃあ氷雨からしてみれば、だろ? 今日だって恋人並の距離感で見せつけてくれてよ!』
そんな返信と共に送られてきた画像に、僕は息を飲むこととなった。
ダウンロードされた画像に写しだされたのは、少しボサッとした黒髪の目付きの悪いメガネの男子生徒と、深海を連想させる綺麗で艶のある長髪をなびかせる美人な女子生徒。言わずもかな、僕と玲風さんの登校風景だ。
『……盗撮は止めてよ』
『それについては本当にスマン。けど実際のとこどうなん?』
何にもないよ──そう打とうとした僕の指が止まる。
先日の件……玲風さんからの告白の場面が、脳裏を過り、本当に何もないと言えるのか。それが引っ掛かり、どうも打てそうにない。
『告白されたよ』
そう、返信する。既読はすぐについた。けれど返信は、こない。
『そうか』
少しして、そう返ってきた。それ以上武志は聞いてこなかった。
「……」
僕はスマホを元の位置に戻して、仰向けに寝転ぶ。
告白……玲風さんの表情……様々な記憶がフラッシュバックする。
今思い返すと、僕は玲風さんといる時間が多いように感じる。登下校は当然として、休み時間や合同授業。課外学習でも、僕と玲風さんは隣であった。
「……」
──長い長い、思考をした。苦ではない、逆に暖かくなるような思考に、溺れそうになった。
だから、決意できた。
玲風さんへの返事──その答えが、準備できた。
本当、僕は馬鹿だ。魔女より道化師がお似合いな馬鹿だ。そう思いながら、小馬鹿にするような笑みを浮かべて睡魔に身を委ねた。
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