第2話 王子様と人魚姫

 言葉は便利だ。

 しかし文字は身勝手だ。

 文章は滑稽で、手紙は呪い以外の何物でもない。

 それでも僕達は、今日も言葉に《おもい》を乗せる。

──決して届かない《想い》を。

 理解のされない《思い》を──


■■■■


 放課後になった。

 日が傾き、空が段々と茜色に染まり始める頃。まだ青空の多い頃から、その日の清掃を終えた僕は、差出人不詳の手紙の主の指示通り、放課後の教室で待つ。

 暇潰しにスマホをいじり、だらだらと色々なサイトを巡ることしばし。ガタッと、隣から席を立つ音がした。


「あ……、天草くん……」


 か細い。しかし美しく、透明感のある美声が、僕と玲風さんだけの教室で響く。

 改めて向かい合わせになると、玲風さんは僕にお店のように綺麗な包装をした箱を渡してくる。

 しかし商品名のようなものはない。となると──


「……?」


 僕はどういうことだかわからず、困惑を禁じ得ない。

 だって、これが示すのは──



「『あの日』から……ずっと、好き……でした……」



 その時カチリと、何かが嵌まる音がしたような気がした。けれど、その時の僕は、その言葉を聞いても、その場で固まっていることしかできなかった。

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