異世界でも、計算は狂っていく。(5)
≪さっさと地に伏せろ獣ども!!!≫
キヤイは、微弱な電気を発生させる魔法でキメラを操ろうとした。
しかしキメラには魔法の耐性があり、キヤイの攻撃は効かなかった。
そこでキヤイは、大量の石礫をキメラたちに向かって空から降り注がせた。
俺は扇子でキメラ達に防御の魔法を使い、キメラ達を守った。
≪くっ…!小賢しい…!やはりあの人間は確実に殺しておくべきだった…!≫
「おい。目の前の敵に集中しないとは、随分余裕そうだな。」
アニキはキヤイの腹部に一撃加えた。
≪グフ…!≫
「どうやら、頭脳やら魔法やらは立派らしいが、肝心の肉体運動はそうでもないらしいな。」
≪…せいぜい粋がっていろ。どうせ、お前達には私を倒すことは不可能だ。≫
「…何だと?」
≪私には不老不死のアルカナがある…。お前がどれだけ努力しようが、お前がどれだけ私を痛め付けようが、私が死ぬことはない…!そして私が生き続ける限り、夢の魔法は発動し続ける…!≫
「…なるほど。だが、それは風車がこの村にあった場合の話じゃないのか。…今ならあれを壊せるはずだ。」
≪…風車を破壊するつもりか。だが、あの風車は特に厳重に守っている。お前達には破壊できない。≫
「そうだな。俺達キメラにも、村民にもそんなことはできない。…だが、一人だけそれができてしまう人物がいる。」
≪…!?≫
「…ちょうど、やって来たみたいだ。」
すると、村の外から馬に乗った人がやって来た。
≪…あいつは…!≫
「…この国の…いや、俺達の姫。シャーロット=スプヤ様だ。」
シャルルが、村に入ってきた。
「シャーロット様!風車を壊してください!それで全てが解決します!」
「…!分かりました!」
シャルルは馬を走らせて風車に向かった。
≪まずい…あいつ、王家の人間か…!王家の魔法を耐える耐久性は風車にはない…!あいつを通したら私の負けだ!≫
キヤイはアニキを飛び越えて、シャルルに攻撃しようとした。
≪止まれ娘!貴様を風車に行かせはしない!≫
キヤイがシャルルの方に向かうのを、今度は黒い人が阻止した。
≪…!何故貴様まで起き上がっている!お前はさっき完膚なきまでに叩きのめしたはずだそ!≫
「…お前がヨシナカの腕を踏んだとき。」
≪…!?≫
「…あのとき、俺はヨシナカの回復の魔法によって回復してもらっていた。そして、俺の回復の魔法でヨシナカを回復させた。」
≪…あのときか…!だから、ヨシナカがあり得ない回復を見せたのも…!≫
「俺とヨシナカの連携の賜物というわけだ。」
≪…っ!≫
「…さて、喋っている間にそろそろ決着が着くみたいだ。」
シャルルは馬に乗りながら両手を広げ、片手に炎の渦、片手に水の渦を作った。
そのまま二つの渦は風車を呑み込みながら削り取っていき、跡形もなく消し去った。
ついでにその渦で街を幾らか破壊していき、もう夢の魔法が発動しない状態にまで追い込んだ。
≪そんな…。私が負けることなど…。≫
不老不死の魔法が破壊され、キヤイの体がどんどんと老いていった。
≪あ…あぁ…。私の体が…。≫
黒い人はキヤイの喉を掴んだ。
「…ここまでの過ちを犯したんだ。老衰で死ねると思うなよ。お前は、俺の殺した幾万の亡霊達に呑まれて消えろ。」
黒い人の手が黒い霧で覆われ始めた。
「…先に消えるのは、お前の方だったようだな。」
≪や…やめろ…!≫
「さらばだ。」
黒い人は、キヤイを魔法で殺した。
戦いは、終わった。
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