異世界でも、こういうときは大体黒幕が存在する。(2)
ある一室に着き、プカクさんはシャルルをソファーの上に置いた。
「…ここならもう大丈夫です。」
「…シャルル!」
肩を揺すったが、シャルルは起きなかった。
(…まさか…。)
すると、プカクさんが説明してくれた。
「心配いりません。ただのツボ押しです。」
「ツボ押し?」
「一定時間気絶するツボで、速効性がありますがその分回復も早いので、そろそろ起きます。」
「…首もとを刀で打ってるように見えたんだけど。」
「刀は魔法をかいくぐる為に使いました。その後、ツボを押しました。」
(あの一瞬でそんなことができるのか…。)
「…それより、何があったんですか。」
「…キメラの一人が殺されたんだ。」
「…!本当ですか。」
「ああ…。」
「傷はどんなかんじでしたか。」
「傷?ああ…そういえば無かったような…。いやでも俺が回復魔法をしただけかも…。」
すると、アニキも話に入ってきた。
「いや、確かに言われて見れば傷は無かった。」
「…となると毒殺か…」
「いや、毒殺はない。キメラは毒に免疫がある。」
「…では魔法ですか。」
「いや、17は魔法にも耐性がある。」
「…17…30番より前ですか。…だとすると…老衰の可能性は。」
「無い。17は作られてからまだ60年ほどだ。…何故そんなことを聞く?」
「被害者の状況から敵がどのような人物か推測するんです。俺の知っている範囲なら誰がその方を殺したか分かるかもしれない。」
「…なるほど。」
すると、シャルルが起き上がった。
「おはよう。シャルル。」
「…夢…?」
「…残念ながら、現実なんだけどね。」
「…17さんは…?」
「…。」
「…そうですか…。」
すると、シャルルは立ち上がった。
「…行ってきます。」
「待てシャルル!もっと冷静になれ!」
「ヨシナカは冷静で居られるんですか!?大切な友が殺されたのに!?」
「…っ!」
「…私はもう止まりませんよ。」
すると、プカクさんが口を開いた。
「…何かおかしくないですか。」
「…はい?」
「キメラの討伐の要請が来たときに色々とキメラの情報を調べたんですが、元々キメラはアルカナの再現を目的に作られたそうじゃないですか。」
「…それがどうかしましたか?」
「30番代以前の個体で魔法に耐性がある個体というのは、恐らく絶対防御のアルカナの再現を目的として作られた個体なんです。そんな個体のキメラが外傷も無し、毒殺でもなし、魔法でも老衰でもなしで殺されたとすると、いよいよ死因が分かりません。」
「…そんなの、後で調べればいいでしょう?」
「いいえ。姫様。あれほどの戦闘力を持つキメラの方をそのように殺すことができる騎士団員はいないんですよ。誰一人。俺でさえ、刀を使いますから。」
「…!」
「つまり、ここから考えるとすれば、可能性は大分限られてきます。」
「…例えばどういう可能性ですか?」
「アルカナの力が使われたんじゃないですか。もしかすると。」
「…あり得ませんね。北には化物も海竜も陸竜もいませんし、アナイさんは既に亡くなっていらっしゃるんです。」
俺はこの前の話を思い出した。
「…いや、シャルル。考えたくないけど…キメラにもアルカナの欠片があるって長が言ってたから…。」
「キメラ同士で殺したと!?本気で思っているんですか!?」
「一応可能性としてだけど…」
「キメラの方達は本当に優しいんです!そんなキメラの方がいるわけないじゃないですか!」
シャルルがそう言うと、俺達は黙りこんでしまった。
「…とにかく、武器で攻撃されていない以上、騎士団による刺客の可能性はほぼありえません。」
「…。」
「…急いで戻られた方が良いのでは。むしろ今、村に犯人がいる可能性の方が高いです。」
「…もう一度だけお父様に会ってきます。」
「何故ですか。」
「お父様に、今回のことはお父様の仕組んだものではないのかどうか聞きます。」
「…分かりました。ただし、私も同行します。それが条件です。」
「分かりました。」
「…こちらです。」
プカクさんは歩き始めた。
「…どうぞ。お入りください。」
俺達は部屋の中に入った。
「…失礼します。」
「…おや、シャーロット。もう大丈夫なのかい?」
「はい。…一つ聞きたいことがあって来ました。」
「何かな?」
「…お父様はキメラを殺すように命じましたか?」
「…そこにいる彼に一度だけね。でも、彼はキメラの体毛だけ持って帰ってきた。私としてはそれで納得した。それ以上は、何とも言えないね。彼がキメラを殺したのなら私が命じたことになるし、彼が殺していないなら私は命じていない。」
「…なるほど。」
シャルルは少しの間考えた。
「…その言葉、信じますよ?」
「ああ。嘘は言っていないよ。」
「…もし嘘なら、次は城を壊します。」
「それは楽しみだね。」
「…では。」
「いつでもまた来るといいよ。」
「私はそうならないことを願ってます。」
そう言って、シャルルは出ていった。
俺達もそれについていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます