城にて

シャルルは魔法陣で自分の部屋に移動した。


「…さて。これから何処に向かいましょうか。」

「…!シャーロット姫様!」

「!!貴方は…確か宮廷護衛隊の…!」

「はい!アンドリューと申します!」

「…貴方は何故私の部屋に?」

「はい!国王より命令を承り、そろそろシャーロット姫様がお見えになるとのことですので、私がシャーロット姫様の護衛につかせていただきます!」

「はぁー…。読まれていたということですか。流石はお父様。ぬかりはないみたいですね。」



シャルルは護衛を巻くために、暫く城の中を歩き回った。


(…やはり腐っても宮廷護衛隊は精鋭ですね…。これでは、巻けると思わない方が良いでしょうね。となると頼れるのは…。)


「…あの。アイリスと話がしたいのですが、案内していただけませんか?」

「申し上げます!只今アイリス隊長は遠征中ですので、城にはいらっしゃいません!」


(…っく!この手も潰されていましたか!)


「では、ソフィーは?」

「申し上げます!ソフィア姫様は入院中ですので、面会は致しかねます!」

「入院!?何があったんですか!?」

「申し上げます!先日、討伐隊が遠征に行った際、ソフィア様が彼らを追って現地まで赴かれ、そのまま負傷なされました!命に別状はありませんが、全治半年だそうです!」

「…。」


(…そのようなことがあったのに、何故私のところに一つの連絡も来なかったのでしょうか…。…いや…もしかして…。私に知られたくない何かがあった…?)


「…すみません。その事件の詳しい資料を見たいのですが、案内していただけませんか?」

「承知しました!こちらです!」



シャルルは書庫についた。


「…ありました!この書籍のここから10ページほどが討伐隊による記録となっています!」

「ありがとうございます。」


シャルルはその記録を読んだ。




『記録員 プカク

本日、西の森にて陸竜と接触。言語による意思疏通が可能だったため、相手に敵意がないことを確認。陸竜と交渉し、プカクのみ森に入ることで和解。その後、ルーク=カムイとの接触に成功。ただし、ルーク=カムイは記憶を無くしており、発現した魔法の制御が困難な為、現状では救出は不可能と判断。引き続き遠征を行う。以上。』




(ルークが記憶喪失…?…なるほど。だからソフィーも遠征先に行ったんですね…。)




『記録員 プカク

本日は変化なし。引き続き遠征を行う。以上。』



『記録員 プカク

本日も変化なし。引き続き遠征を行う。以上。』



『記録員 プカク

本日も変化なし。引き続き遠征を行う。以上。』



『記録員 プカク

ルーク=カムイに変化あり。暴走を始める。一度は森が浸水し、ソフィア姫様に危害を加えたが、その後記憶を取り戻し、魔法の解除に成功。救出可能と判断し、そのまま救出。また、陸竜は我々にルークを託して去った。これにて当初の目標を達成したため、遠征を終了する。以上。

追記:討伐証拠品として、陸竜の鱗を添付する。以上。』




(…なかなか淡白な性格をしていますね。あの少年は。…記述よりも資料のページの方が多いじゃないですか…。)


シャルルはその記録をさらに調べた。


(…ん?)


記録には添付すると書いていた鱗が、その記録が書いている書物に付いていなかった。

代わりに、ある一文を見つけた。




『この鱗には絶対防御の■■■■の一部があるそうだ。東には海竜、南には化物という■■■■の持ち主がいるそうだが、これもまた■■■■■■■■■■■の一部となるのだろうか。』




(…ビンゴみたいですね。不自然な塗り潰しを見つけました。恐らく、鱗がないのも同じ理由でしょう。…プカク…確かアイリスと同じ13番隊でしたね…。)


シャルルは記録をおいて歩きだした。


「姫様!どこへ向かわれるのですか!」

「少し、13番隊の隊室に行きます。」

「分かりました!お供します!」


(見たところ、お父様はただ北の住民に圧力をかける為だけにこのようなことをしているわけじゃなさそうですね…。何か手がかりがあればいいんですが…。)



13番隊の隊室についた。


「失礼します。」


中には一人、女性隊員がいた。


「…あら、シャーロット姫様。珍しいですわね。都に帰って来てらっしゃったんですわね。…どのような要件ですの?」

「…少し。あの、プカクさんの棚はどこですか?」

「…プカクの棚ならそこですけど…。」

「ありがとうございます。」


シャルルは棚を開けて、何か手がかりを探した。


「あの…シャーロット姫様?何をしておられますの?」

「…あった。」


シャルルは、棚に入っていたノートを読んだ。




『彼からは不思議な気配がした。』

『アルカナ』

『絶対防御』




「…何ですか?この散文は?」

「あの…それよりも、シャーロット姫様は自分の行動を客観的に見れていますの?大分頭の弱い人のように写ってしまっていますわよ?」

「…でも、これが気になりますね。『アルカナ』。」

「無視ですの!?」


(…そういえば、ヨシナカがこの前借りようとした本の題名って…。)


「…。」

「あの、シャーロット姫様?」

「…ありがとうございました。」

「えぇぇ!?」



シャルルは図書館に向かった。


(…私が読んだことのない魔法書なんてたかが知れています。…多分あれは歴史書の辺りにあるはずです。あの辺はあまり読みませんでしたからね…。)


図書館に着くと、シャルルは歴史書の棚を探した。


(…無いですね。とすると…。)


シャルルは司書に聞いた。


「…あら、シャルルちゃん。最近はよく来るわね。」

「すみません。最近の二ヶ月で、この図書館で書籍の入れ換えはありましたか?」

「書籍?えぇっと…。ああ、国王様が何かの研究のために、いくつかの魔法書を持っていかれたわね。」

「それ、何て言う本か分かりますか?」

「何て言う…と言われても、色々持っていかれたのよねぇ。」

「じゃあ、『アルカナ』というものに関する本を持っていきましたか?」

「…あぁ!それは持っていっていらっしゃったわ!何しろずっと探してたそうなのよ。」

「…なるほど。」


(やはり、その『アルカナ』に何かあるみたいですね。戻ったらヨシナカに聞きましょう。とりあえず、『アルカナ』について聞けるのはここまでですか。)


「シャルルちゃん?それだけ?」

「あ!あと!…都でのキメラの情報について聞きたいんですが…。」

「キメラ?…あー、何か話題になってるわね。上流階級の人達の間で。」

「…あまり関心は無いんですか?」

「まぁねぇ。そんなことで騒いで時間とお金を潰すくらいなら、中流、下流階級の所得を増やすようにしてほしいわね。ほら、貧困層への支援金の話。あれもそろそろ進めてほしいわ。」


(…なるほど。騒いでいるのは貴族だけですか。…やはり、お父様が意図的に起こしたみたいですね。)


「ねぇ。シャルルちゃんの力でどうにかしてくれなーい?なーんてね。」

「…そうですね。考えておきます。」

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