何処にでも、誰にでも、異世界でも、秘密はある。(1)

次の日。


「ヨシナカー。起きろー。」


今日は長に起こされた。


「ん…。ちょっと待って…。今起きるから…。」


そう言って、俺は布団を被った。


「…んむー…。」


すると、布団がモゾモゾと動き始めた。


「…どうしたの?長。」

「ヨシナカと一緒に寝るー。」

「そう…。」



俺達は深い眠りについた…。



「起きろ!!」


今度はアニキに起こされた。


「ん…あと5分…。」

「今日は都に行くのだろう!支度しろ!」

「あぁ…そうだった…。」


俺は何とか起き上がった。


「…今何時くらい?」

「朝の4時だ!」

「…おやすみ…。」


俺は布団を被った。


「朝だと言っているだろう!」

「4時は深夜だよ…。ギリ…。」

「いいから起きろ!!」


アニキに布団を剥がされた。


「何でそんな早くに起こすのさ…。」

「都まではかなり時間がかかるだろう!最低でもあと30分で出ないと、今月中に都に着かないぞ!」

「…移動魔法があるんだよ…。」

「移動魔法?」

「魔法陣でね…。シャルルが書いてくれるはず…。」

「知らん!とにかく起きろ!!」

「理不尽な…。」


俺は渋々起きた。


「まだ日が昇ってないじゃん…。」

「何を言う。朝の気配を感じるだろう。」

「スピリチュアルなこと言わないでくれ…。」


俺は水を一杯飲んだ。


「…シャルルは?」

「今は外で薪を割っていらっしゃる。」

「薪…。」


何だか、女の人に薪割りを任せるのは申し訳なくなってくる。


「…俺、ちょっと様子見に行ってくる。」


俺はドアを開けて家の裏に行った。

すると、シャルルは薪を割るでもなく、ただしゃがみこんでた。


「…何やってんの?」

「うぇ!?」


シャルルからすごい声が出た。


「なななな、何ですか?」

「…何してたの?」

「見ての通り、何もしていませんでした。」

「本当は?」

「…都に行くのが嫌になってきたので逃げてました。」

「よろしい。…何でそんなに都に行くのが嫌なの?」

「…別に都自体は嫌いじゃないんです…。ただ…。」

「ただ?」

「…貴方と一緒に行くのがあまり…。」

「あれ?なんで俺が急にdisられるの?」

「あ!違うんです!そうじゃないんです!」

「じゃあ何?」

「…ヨシナカは、私がどんな人でも友達でいてくれますか?」

「…?うん。」


すると、シャルルは何か決意を決めた顔をした。


「…じゃあ、都についてから説明するのも面倒くさいので、今説明しちゃいますね。」

「何を?」

「私の秘密です。」

「秘密?」

「そう。秘密。」

「…ほう。」

「実は私…。」


そこから結構なタメが続いた。


「…実は何?」

「…実は私、姫様なんですよ。」

「…うん。知ってる。そう呼ばれてるよね。」

「いえ、そうじゃなくて。」

「…?」


「本物の姫様なんです。」


「…は?」

「私の正式な名前はシャーロット=スプヤ。スプヤ国第一王女です。なので、スプヤ国の現国王は私の父にあたります。」

「…。」


俺は言葉を失ってしまった。

そういえば、この前の手紙の最後、『シャルル=スプヤ』と書いていた気がする。

スプヤって、何処かで聞いたことがあるなーと思っていたが、まさか王女とは…。


「…これはこれは、今までとんだご無礼をいたしました。」

「あーっ!やっぱりそうなりましたね!それが嫌だったんですよ!」

「敬語がですか?」

「直ってない!」

「敬語が?」

「はい。…私と同年代の人達は、私の身分を恐れてすぐに私から距離をおいてしまうんですよ…。だから、タメ口で話せるくらい本当に仲のいい友達は一人か二人くらいしかいなくて…。だから、あなたには変わってほしくなかったんです。あなたは私に積極的に話しかけてくれましたから…。」

「…はぁーあ。つまんな。」

「何ですか急に!」

「そんな下らないことで悩んでたわけ?」

「…そうですよ?」

「大丈夫。俺は一度腹を割った相手には遠慮しないタイプなんでな。」


シャルルは少し恥ずかしがってうつむいた。


「…そうですか。」

「そう。だから、王女だろうと何だろうと、仕事になったらこき使うから。覚悟しといて。そういうわけで、今日も魔法陣よろしくお願いしまーす。」

「…はい!分かりました!」


シャルルはビシッと敬礼した。


「じゃ、俺は今から薪を割るよ。シャルルは朝ごはん作ってくれ。」

「…あれー?王女に朝ごはんを作らせるんですかー?」

「安心した途端にめっちゃ強調してくるじゃん…。」

「フフフフ!朝はパンと卵焼きでいいですか?」

「うん。何でもいい。」

「分かりました!」


シャルルは鼻唄を歌いながら家に戻っていった。


「…さて。薪を割るか。」


俺は鉈を持って薪を叩いた。


「…切れねぇ。」


もう一度叩いてみた。


「…薪割りって、コツがいるんだな…。」

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