第10話 幼馴染と入浴



      ◇


 結局、『せめて目の届く場所にいて欲しい』というレーヴァテインの要望で、俺達は柊邸に一泊することとなった。レーヴァテインとそれに付き添う御園も心配だし、なんだかんだでへとへとだった俺達は、ありがたく用意された部屋に向かう。

 すると――


「ねぇ、御劔君。あなた、グレイさんのメンテナンスはしてあげているの?」


「え?」


 廊下で不意に呼び止められると、どこか浮かばない蒼い瞳と目が合った。


「先日、試験でレーヴァと剣を交えているところを見て思ったのだけど、剣戟の響きがどこか脆い気がしたわ。ひょっとして彼女……日頃の『鋼鉄浴』を怠ったりしているんじゃない?」


「あ~……」


 心当たりがありすぎる。

 それは先日、ダーインスレイヴさんにも指摘された通りだ。


(風呂に入れろって、言われてたっけ……?)


「魔剣は専用の入浴剤で『鋼鉄浴』をすることで、剣として必要な金属物質を体内に取り込み、補充する。それは生命維持に必要なことだし、剣としての強度を保つ上でも不可欠なことのはずだけど……?」


「学校でも、そう習うよな……」


 ……知っているさ。知っているけど、本人グレイに何も注意できていない。

 どこかバツの悪そうな俺を、御園は真っ直ぐに見つめた。


「きちんと注意するべきよ。それか、パートナーである貴方がメンテナンスをしてあげなさい? 『鋼鉄浴』は魔剣の強度と戦闘力に直結する。何かあってからじゃあ、遅いもの……」


 ふい、と逸らされる物憂げな視線。御園は、レーヴァテインを守り切れなかったことで自分を責めているようだった。


「御園……」


「魔剣と契約者同士の関係に他人が口を出すものではないことはわかっているわ。でも、私からも、お願い……」


「……わかったよ、心配してくれたんだろ? ありがとな。ただ、俺からもひとつ、口を出してもいいか?」


「何?」


「レーヴァテインは、その……お前を恨んでいないと思う」


「……!」


「確かに『ラスティの遺産』を奪われて、レーヴァテインは相当取り乱していたと思うよ。けど、それでパートナーである御園を恨んだかって言われると、俺は絶対、それは違うと思ってる」


「でもレーヴァは、『魔剣の強さは絆の強さだ』って。『だから僕らは負けたのか』って……」


 思い出しながら瞳に涙を浮かべる御園に、諭すように語りかける。


「きっと、そのときは頭に血がのぼってただけだ。俺が御園の傍に居るように言ったとき、レーヴァテインは落ち着きを取り戻していた。あのときのあいつの御園を見る目は、どこか心配するような目だった。きっと今頃は、反省していると思う」


「そうなの……?」


「そうだよ。だから、レーヴァテインとゆっくり話をしてこいって。魔剣と契約者は、ケンカした後は仲直りするもんなんだぜ?」


「あなたとグレイさんみたいな……仲のいいふたりでも、ケンカってするの?」


 きょとんと驚いたような眼差しに、俺は――


「あったり前だろ!? 俺達なんか、しょっちゅうくだらないことでケンカしてるって。やれ、『私のアイス勝手に食べた』だの、『服を脱ぎっぱなしにするな』だの。こないだなんて、朝食のトーストに塗ったジャムがいちごじゃなかっただけでキレられたんだぞ!? ブルーベリーの何が悪いんだっての! だから、パートナーなんて、ケンカしてなんぼだぞ?」


 そうドヤると、御園は口元にふわりと笑みを浮かべた。


「ふふっ……! なにそれ、変なの……!」



      ◇


 用意された部屋に入ると、既に案内されていたグレイがソファでアイスキャンディーを貪り食っていた。お借りした部屋着――というか、ホテルのバスローブのようなものから伸びる脚をぱたぱたと遊ばせ、スマホを片手に雑誌を読んでいる。相変わらず妙なところで器用な奴だ。


「ん。おふぁえり~」


「ただいま、随分ご機嫌じゃないか? そのアイス、柊家の人に貰ったのか?」


「んん! 美人なメイドさんにね! 『レーヴァテイン様を助けてくれたお礼に、欲しいものはなんでも』だって。いいれしょ~?」


(『なんでも』って言われてアイスって……)


「バニラ食べ終わったら、次はストロベリー貰うの!」


(随分安い女だなぁ……)


 そして能天気というか、肝が据わっているというか。俺共々凶悪犯に狙われているという自覚はあるのだろうか。


「ああ、わかったから。食べながら喋るなって。風呂は?」


「まら~」


「そっか。じゃあ俺が先に――」


 言いかけて、御園に言われたことを思い出し、先日ダーインスレイヴさんから渡されていた入浴剤を取り出す。


(風呂……入れるんだっけ? 見張るんだっけ?)


 曰く、魔剣は生命活動に必要な金属物質を温泉などの成分から吸収するのだとか。属性によって個人差はあれど、闇属性のグレイにはこの『秘湯・深紅の清血』が一番効果的らしい。もしくは『廃都の秘湯・ダークソウル』。闇属性の魔剣は希少でその絶対数が少ないせいか、こんなの店で売ってるところを見たことがない。名前からして相当物騒だとは思うが、まぁこれも個性か。ちなみに、裏面の成分表記は黒塗りで見えない。


(これに、俺も入るのか……?)


 ダーインスレイヴさんのお願いはふたつ。この風呂にグレイをちゃんと入れること。肩まで浸かって最低五分。そして、入浴後のオイルマッサージだ。要は魔剣としてのメンテナンスを行えばいいということだが……


(女子と混浴なんてレベルが高い……!! かくなる上は……)


 俺が思いついたのは、魔剣状態のグレイを『剣として』メンテナンスすることだった。

 そもそも通常であれば、契約者を持つ魔剣はパートナーの持つ鞘に収まっているのが常。グレイのようにこうして外に出続けていることの方が珍しかったりする。まぁ、学校のような安全が確保されている場所だと他の奴も魔剣を外に出してたりするし、レーヴァテインのように分身体レプリカを学校に行かせて家だと好き勝手してる……なんて、高度なサボりを行う魔剣だっているようだから、一概にはなんとも言えないが。ただ、鞘の外に出ている時間が長ければ長い程、剣としては摩耗するのも事実。


(剣を浴槽に浸して刀身を磨く程度なら……イケる気がする……!)


 今こそ、前に本で読んだ魔剣のメンテナンス法を試すときだ。


(意識しすぎないように……俺はただ『剣』をメンテナンスするだけなんだから!)


 俺はグレイにそれとなく声をかけた。


「グレイ……今日、一緒に風呂入る?」


「え?」


 その言葉に、みるみるうちに真っ赤になるグレイ。


「そそそ、それって……!」


 俺だってこんな台詞、まるで誘ってるみたいで恥ずかしいよ! でも、できるだけそれっぽく聞こえないように勇気を出してサラッと言ったのに! あからさまに俺と同じ妄想しやがって、流石は幼馴染だな!

 俺達が頭から発する熱で部屋の温度が三度は上がった気がする。

 そして――


「ばっ! バカッ!? 一緒にお風呂って……ななな、なんてこと言ってるのよぉ!?」


 ……やっぱりこうなった。


 両腕で胸をむぎゅっと隠すような仕草をするあたり、完全に裸体で混浴するもんだと思ってやがる。

 俺もダーインスレイヴさんに『娘の風呂の面倒を頼む』と言われたときは『何言ってんだこのパパ?新手のモンペか?』って思ったもん。俺は慌てて訂正する。


「勘違いすんなよ!? 言っておくけど魔剣のメンテナンスだからな!? 魔剣の! 風呂で薬湯すり込んで研磨するやつ! 『刃で手を切ったら危ないから』って今まではなんやかんや止められてたけど、高校生になればメンテ実習だってあるし、少し早いけど俺達ももうやってもいい頃かなーって……!」


「ああ……メンテか! な~んだ……」


(あれ? 今なんかちょっとがっかりした? まさか、本当は一緒に風呂入りたかったなんて……)


 思わず顔が熱くなる。俺は勢いよく頭を振って一瞬沸いた煩悩を霧散させると脱衣所に向かった。


「俺はちゃんと腰にタオル巻くし、準備できたらグレイは風呂場の前で剣になって待っててくれればいいから」


「えっ、本当にやるの!?」


「だって、ダーインスレイヴさんに風呂の世話とマッサージしてあげてってお願いされたし……」


「パパってば……!」


 両頬をおさえて『もう~!』とじたばたするグレイの様子に、俺はちょっぴり不安になった。


「……俺のメンテじゃイヤ?」


 すると、グレイはぴこーん!と背筋をのばし、両手をぶんぶんと振って全霊で否定する。


「そそそ! そんなことない! 研斗からメンテに誘ってくれるなんて嬉しい!」


「そ、そう? ならよかった……」


(う、嬉しいんだ……)


 そんなグレイの態度になんだか気恥ずかしくなった俺は、タオルを片手にそそくさと脱衣所へ向かった。


(っと、その前に……)


 俺は最終確認のため、以前から密かに購入していた教本に目を通す。

 エロ本をしまうかの如く厳重に表紙を偽装され、鞄に隠された本――『魔剣と仲良く暮らす本』だ。同居するにあたってこんなのを購入しているなんてグレイにバレたら恥ずかしくって目もあわせられないだろう。けど、俺は密かに上中下とあるこの本を愛読している。だって、やっぱり仲良くしたいし。

 俺は読み過ぎて少しヘタレたページをめくってメンテナンスの項目を開いた。


(ええと……)


『魔剣は普通の刃物と違って『生きた刀剣』ですので、水で錆びるということはありません。しかし、定期的に専用の薬湯を擦り込まないと輝きが鈍って錆び、細胞が綻んでしまいます。きちんと食べて眠らないと疲れが取れない人間と同じですね。だから、魔剣はみんな温泉が大好き!』


(ふむふむ……)


『また、メンテナンスは魔剣との大切なコミュニケーションです。綺麗な道具で丁寧に行いましょう。魔剣は空気中の水蒸気からも薬の成分を吸収します。刀身からの吸収効率を上げる為、薬湯をはったあたたかいお風呂場などにマットを敷いて行うと良いでしょう。魔剣がリラックスできる環境が一番です。また、ただピカピカに磨こうとするばかりでなく、気持ちいいところはどこか魔剣の声に耳を傾けてあげましょう』


(気持ちいいところ、ねぇ……?)


「…………」


 なんかエロくね?

 そう思うのは俺が思春期男子だから? それともパートナーの魔剣が女の子だから? 意識し過ぎ?


「と、とにかく。実践あるのみだ……!」


 俺は本をしまうとメンテ道具とタオルを手に風呂場へ足を踏み入れた。

 程よい温度の浴槽に薬の粉を入れ、マットの上に道具を並べて椅子に腰掛ける。


(きちんと腰にタオルも巻いたし、よし!)


「グレイ、もういいかー?」


 脱衣所に向かって声をかけると、扉のすぐそばからくぐもった声が聞こえる。


『もういいよぉ……ねぇ、研斗ちゃんと腰にタオル巻いた? いくら私が魔剣フォームで目が付いてるように見えなくても、こっちからは見えちゃうんだからね!?』


「わかってるって。ちゃんと巻いてるから、風呂場に入れていいか?」


『うん……』


 返事を確認して扉を開けると、ちょこんと床に横たわる黒い刀身の魔剣が一振り。俺はその魔剣姿のグレイをそっと手に取った。


「じゃあ、まずは薬湯に五分浸かる。良い感じに薬が染み込んできたら浴槽から出て刀身を磨くから。薬が効いてきたなって思ったら声かけてくれよ?」


『は~い!』


(俺は魔剣を片手に風呂に入って磨くだけ。うん……これならイケそうだ!)


 と、思った俺が浅はかだった。

 風呂に入って浴槽に浸かり、いざ研磨を始めると――


『……ひゃんっ♡ くすぐったい! ソコやめてぇ!』


 グレイの奴は聞いたことも無いような可愛い声で反応し出したのだ。


(魔剣がこんなになるなんて聞いてない! 何? メンテってこんななの!? それとも俺の触り方が下手なだけ? なんか声がどエロいんですけど!!)


 俺は研磨用のスポンジを手にしたまま、マットの上に置かれた魔剣と格闘する。


「ご、ごめん! え、柄はダメなの?」


『そうじゃなくて、柄の根元の刃先がダメなのぉ~!』


(ぜんっぜん意味わからない! 俺はいったい、グレイのどこを触ってるんだ!? 尻? 太腿? こわくて聞けない!)


「わ、わかった。とにかく気を付けるから、変な声出さないで……!」


『好きで出してるわけじゃないもん! 研斗が出させてるんだもん~!』


「へ、変な言い方すんな! 俺だって一生懸命ごしごし――」


『はわぁっ!? ソコ! ソコ気持ちいい~!!』


「どこ!?」


『側面ひたひた~ってするやつ』


「も~~~わかったよ! 言う通りにすればいいんだろ!?」


『うん! あ、手を怪我しないように気を付けてね? 私も刃先は敏感だから……』


「そ、そっか……」


(敏感なんだ……)


 そんなこんなで顔を真っ赤にしながら剣を磨く姿はさぞ滑稽だったろう。

 ようやく全身をピカピカに磨き終えた頃、俺達は揃って声を発した。


『「お、終わった~!」』


『はぁ~、気持ちよかった! 自分でするのと全然違う! 研斗、上手だね? ふふふ!』


「あ~疲れた! でも喜んでくれたなら良かったよ。おかげで刀身もすっごく綺麗になったし。見ろよこの刃の輝き! 漆黒から紫に、光の当て具合によっては深紅にも見える美しさ! さてはグレイ、今までメンテナンス適当にしてたな?」


『あ。バレた~? でも、これからは研斗がしてくれるからいいでしょ?』


 グレイの心底満足そうな声と言ったら、なんという達成感。

 最初は苦戦もしたし、スポンジでこする度にグレイが変な声を出すから色んな意味でどうなることかと思ったが、教本に『メンテナンスは魔剣との大切なコミュニケーション』と書いてあった意味を俺はひしひしと感じていた。なによりこの、一緒にピカピカになることの嬉しさと楽しさといったら!


(メンテナンス……イイな……!)


「さ、そろそろ出ようか」


 俺がメンテナンスの道具を片付けながら足元のグレイに声をかけると、湯けむりに混ざるようにして漆黒がどこからか立ち込める。


『ふぁ~……気持ちよかったぁ~……!』


 気の抜けきったグレイの声。


(まさか、脱力しすぎて変身が解け――!?)


 気づいたときには遅かった。一瞬視界を覆った闇が晴れると、全裸のグレイが俺に背を預けるようにしてうとうとと船をこいでいる。


「ちょ……! グレイ起きて! 変身が解けてる!! 見えてる! 見えちゃって……見えそうだからぁ!!」


 湯けむりが無ければ確実にアレやコレやが見えてしまっていただろう。俺は『風邪をひかないように』と熱めに湯をはった自分を全霊で褒めたたえた。

 俺の慌てた声で飛び起きたグレイは、はわはわと顔を赤くしながら両手で胸と下を隠す。


「へ、変身がぁ……! 研斗出てって! 早く出て行って~!!」


「そっか! 俺が出ればいいのか!!」


 慌てすぎて盲点だったわ。

 俺は即座に浴室を出て、扉をピシャリ!と閉めた。


「はぁ……はぁ……」


(メンテナンス……やべぇ……!)


 俺の感想が一瞬にして書き換わった瞬間だった。


      ◇


 風呂から出てなんとか部屋着に着替え、動揺を抑えながらベッドで悶々と転がる俺。そして忘れた頃にメンテナンスという試練はやって来る。


「ねぇ、入浴後のマッサージもしてくれるんでしょう? オイル塗りこむやつ。タオル巻いてるからさ、このまましてよ! その方が絶対気持ちいいもん!」


「えぇ~……」


(またそうやって無理難題を……)


 俺の抗議の視線に目もくれず、ごろんとベッドにうつ伏せになるグレイ。バスタオル一枚巻いただけの姿で何を隠せていると思ってるんだ? そんなことをされると思わず理性がグラついてしまうのをこいつは全くわかっていない。

 肩甲骨が露出した真っ白な背中はすべすべで、いかにも手触りが良さそうだ。肌のキメも細かくて、風呂上りだからか全身からいい匂いがする……


(ここにオイル塗って揉み揉みしろって? 本当にいいの? これ、気持ちいいのはグレイじゃなくて俺の方なんじゃ……?)


「ね~? まだ~?」


 ――ハッ……!


「わ、わかってるって。今やるから……」


(いかんいかん。これはただのマッサージ、マッサージ。メンテの一環で、決してやましいことじゃない……)


 けど、ドキドキするもんは仕方ないだろ? 期待と動揺が入り混じる中俺はなんとか煩悩を振り払い、用意していたオイルを手に広げようとしていると、スマホが短く揺れた。


(こんな大事なときに、誰だよ?)


 若干イラつきつつ視線を向けると、そこには短いメッセージが届いていた。


(ダーインスレイヴさんから? 『娘を頼む』って……まさか、どこかでこの光景を見て――!?)


 バッ!と振り返るが、部屋には(なんとなくそうした方がいい気がして)厳重に鍵が掛けてあるし、カーテンだって閉め切っている。この部屋には俺とグレイしかいない、完全な密室だ。そう思うと余計に胸がドキドキするが、そんな思春期脳全開の俺にグレイが不思議そうな顔をして問いかけてきた。


「ねぇ、今お父様からメッセ来たんだけど……」


「ああ、グレイにも来たのか? 実は、俺のとこにも……」


「なんか変じゃない? 急にこんなの……」


 身体を起こして、胸の谷間が見えるのも気にせずにぐい、とスマホの画面を見せられる。そこには――



 ――『グレイ、お前を愛している。ケント君と仲良く、どうか幸せに』



「んん?」


 もう一度、自分に届いたメッセージを読み返す。



 ――『娘を頼む』



「え――」


(これって……!)


 俺の手元を見たグレイの表情も同じように凍りついた。まさに以心伝心。だが、これは幼馴染じゃなくてもわかるだろう。


(どう考えても、ダイイングメッセージだ……!)


「どうしよう!? お父様に何かあったのかな!?」


「いや、絶対あっただろ!?」


「ヤダヤダヤダ! どうしよう研斗!?」


「お、落ち着け! まだ電車は動いてる! すぐに丘の上の実家に様子を見に行こう!」


 俺が声をあげるや否やガバっとベッドから飛び降りるグレイ。

 その拍子にバスタオルが床に落ちて――


「きゃっ!?」


「……!?!?」


 真っ白で、彫像のように美しい裸体が目に焼き付いて離れない。


「あ、あわわ……!? 早く着替えなきゃ!?」


 顔を赤くしつつも焦るあまりにそのまま着替えだすグレイ。

 俺は、タオルの下にはせめて下着くらいつけていると思っていたよ。だって、そうじゃないとあまりに無防備じゃ――


「いいから! 早く履いてください!?!?」


 幼馴染が目の前で生着替えを披露しているというのに、錯乱した俺の口からはそんな言葉しか出ない。生着替え? それがどうした。だって、さっきの全裸に敵うモノなんてないのだから。


(ああ、ダーインスレイヴさん。なんてタイミングでメールしてくれたんだ……!)


 ……ちゃんと無事なんだろうな?

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