第7話 心の変化
ある日の学校帰り、アパートでの事 ――――
「あ、乗りまーす」
閉まりかけるエレベーターの扉が開く。
「すみません。ありがとうございます。わっ!駿河 雄平!」
「やっぱりお前か!フルネームで呼んでくれてありがたい事だな?藤原 梨生!ほら、2階だ!2階位、階段使えば?太るぞ!」
「失礼極まりない言葉をどうもっ!」
私はエレベーターを降りた。
ある日の休日 ――――
外がやけに騒々しく目を覚ました。
「朝からやけに騒々しいんだけど」
部屋の窓を開ける私。
すると、子供達と遊んでいる駿河君の姿。
「駿河君……?へぇー意外」
そして振り向く駿河君。
ドキッ
目が合った。
「よー、寝坊助さーん!休日だからってダラダラしてんじゃねーぞ!」
「うるさいなっ!起きますぅーーっ!」
私は起きる事にした。
普段言い合っている私達だけど、面倒見の良い奴だと……。
「つーか……そんな私の事も良く世話やいて面倒見てるっけ?」
ある日の放課後、帰る前の事だった。
「ちょっと!あんたが藤原 梨生?」
「はい? そうですけど……」
≪3年生?先輩?私……何かしたっけ?記憶にないんだけど……≫
「ちょっと!良い?」
「えっ?あっ…はい…」
私は先輩の後についていく。
私を屋上に連れて来たかと思ったら私を押し飛ばした。
「きゃあっ!な、何ですか?」
「あんた駿河 雄平君と同じアパートらしいじゃない!」
「あー、それがどうかしたんですか?偶々なんで住んでいた事すら知らなかったんですけど…あのそういう事でしたら私忙しいので帰らせていただきます!失礼します!」
「待ちなよ!」
グイッと腕を掴まれ再び押し飛ばした。
「きゃあっ!……っ……」
「彼と仲良くしてんじゃないよ!」
アイツがモテモテなのは知ってた。
アパートにしても学校のアイツをまだ良く知らない私がどうして?
ただ引っ越してきただけなのに……
逆恨みも良い所だ。
「これ以上近付いたら……」
「近付いたら何ですか?先・輩」
私達の間に割って入る男の子の声。
「えっ!?あっ!雄平ちゃん!」
≪雄平……ちゃん?えっ?駿河君?≫
「彼女、先輩達に何かしたんですか?何か俺の事で女子生徒達に呼び出されてるって噂があって……」
≪えっ!?つまりそれって……他の女子生徒も呼び出されてたって事?≫
「いや……えっと……」
「彼女ずっと同じ学校に通っていなくて学校の事、良く把握していないので多目に見て貰って良いですか?先・輩」
「それは……」
「クラスメイトなだけだし他の情報も入っているかもしれないですけど何かあったら先輩も困るでしょう?」
「…………」
「納得いかない事あるなら俺通じて言って貰って良いですか?まあ、彼女は何も悪い所はないと思いますけど……」
「………………」
「い、行くよ!」
先輩達は去って行った。
「お前も大変な目にあったな」
「まあ、それより私以外の子達も呼び出されてたの?」
「俺が入学した後、あの先輩達が勝手に俺のファンクラブみたいなの作って」
「ファンクラブぅっ!?あんたはアイドルかっ!」
駿河君は笑う。
「一年の時は結構呼び出されてた子いたけど、2年になってなくなったかな?元々、モテモテな俺だし」
「自分で言うなっつーの!」
「だけど誤解すんなよ!好きでモテてる訳じゃねーし頼んでもいねーからな!正直、良い迷惑なんだよ!変なファンクラブあるし自由ねーし」
「自由がない?えっ?何で?」
「監視されてる気がしてならねー」
「監視?」
「彼女いるだの、いないだの。街に出たら自分の行動全て見られてたし去年」
「ええっ!?……まるで……芸能人扱い……追っかけじゃん!いや……ある意味ストーカー行為だよね」
「1年の後半に、それが発覚して俺、真っ直ぐに帰るようにしたんだよ。友達とは休日に会うようにして。当時の事、考えるだけでゾッとする」
「そうだったんだ……」
「そうしたら、お前が呼び出されてるの聞いて」
「そっか……」
「とにかく何かあったら何か言え!」
「……うん……」
「帰るぞ!」
「ごめん。その前に保健室に寄るから先に帰ってて良いよ」
「保健室?」
「うん」
「何処か怪我したのか?」
「かもしれない。肘が痛くて」
「肘?あー、確かに怪我してるな。荷物持って保健室行くか」
「あ、うん」
そして、私は駿河君と保健室に行く事にしたというより付き合ってくれた。
「先生いないみたいだけど?」
「そっか…じゃあいいや。仕方ない」
保健室出ようとする私の腕を掴む。
ドキッ
「座れよ!」
「えっ?」
「手当てする」
「やだ!あんた乱暴に……」
グイッ
椅子に座らせる。
「良いからっ!つーか……俺のせいだし…」
「えっ?もしかして気にしてんの?」
「うるせーな!」
「案外良い奴だね」
「お前なぁ~」
「じゃあ…お願いします。駿河 雄平先生」
「えっ?」
「手当てしてくれるんでしょう?」
「…まあ…」
「優しくしてね♪」
「…………」
「…駿河君?」
「痛くしてやるっ!」
「ええっ!」
「…反則なんだよ……」
私に聞こえない声でポツリと呟く。
「何?何か言った?」
「何も言ってねーよ!」
そして、手当てしてもらう。
「ありがとう♪肘って案外、やりにくいんだよね~助かった!」
「別に」
「さて帰ろうっと!駿河君、付き合わせて……」
ふわりと背後から優しく抱きしめられた。
ドキン
「……悪かったな……巻き込んで……」
≪…えっ…?≫
「駿河君?……ちょっ……」
≪ヤバイ……≫
私の胸がざわつく。
「し、仕方ないよ。だって駿河君の事何も知らなかったんだし。でも助けてくれたじゃん!だから良いよ」
「良くねーよ!何の罪もねーのに俺のせいで呼び出しくらって」
向き合う私達。
スッ
両頬に触れる駿河君。
ドキッ
次々に不意にされる駿河君の行動に私の胸はドキドキ加速する。
「……マジ……悪い……」
「い、良いって!ほら、帰るよ!」
私は押しのけると保健室を出て行き始める。
≪早くここ(保健室)出なきゃ心臓持たない≫
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