第6話 噂

ある日の朝、いつも通りエレベーターに乗ろうとした、その時、閉まりかけるドアに駆け込もうとしたその時。



「あっ!乗りまーす!」



ガクッとバランスを崩しエレベーターの中に倒れ込むように転び始める私。



「きゃあっ!」



ドサッ

誰かに抱き止められた。


エレベーターのドアが静かに閉まる。



「…お前は朝から何してんだよ!」

「うわっ!」




ドキッ

私の目の前には見覚えある男の子の姿。


駿河 雄平だ。




「ご、ごめん!」

「お前、目開いてんのかよ」

「開いてます!」



私達は騒ぎながら学校に行く。




「ねえ、二人って付き合ってるの?」




クラスの女友達が尋ねてきた。




「えっ?二人って?」

「梨生ちゃんと雄平君」

「えっ!?付き合ってないよ!」

「そうなの?」

「うん」


「でも二人は仲良いのは事実だよね?」

「そうそう」

「アイツの性格が無邪気だし社交的たからじゃない?」

「そうなのかな?」

「そうだよ」





≪まあ、外面だけの良い奴だけで性格悪いし≫

≪ムカつくし誰も知らないからな~≫





そんなある日の事だった。




「すみません。雄平君、帰って来られてますか?」




私の母親が駿河君の家に訪れ尋ねた。



「ええ、とっくに帰ってゲームしてるみたいですよ」


「そうですか……」

「梨生ちゃん、まだ帰っていないんですか?」

「ええ。普段なら娘も帰っているんですけど、ここまで遅い事なかったものですから心配で」


「娘さんなら俺より先に学校出ましたよ」

「そう、ありがとう。すみません」

「アイツ…何して……」



時間は夜 8時を廻っていた。




「ヤッバー、寝過ごした!」



私は足早に帰る。



そして、アパートに帰り着くとアパートの建物の前に人影。



「帰って来た」

「駿河君!?何してんの?」

「何してんの?じゃねーし、お前の母親がスッゲー心配してたぞ!」


「だよね?」


「何してたんだよ」

「図書館に行ってて睡魔に襲われ閉館まで爆睡してた」



「…………」



「とにかく戻るぞ!」

「うん……ごめん」

「全く!」



私達はエレベーターに乗る。



「俺ん家の親には俺から伝えておくから家にわざわざ来なくても大丈夫だから」

「分かった。御迷惑お掛けします」

「全くだ!じゃあな」

「うん、ありがとう。ごめん!」



私達は別れた。




次の日 ――――



「あっ!おはよう。昨日はごめん!」



駿河君と偶然に同じエレベーターに乗る。



「ああ。ご無事で何よりだな。正直、何かあったんじゃないかと思ったよ」


「えっ!?」


「お前、前に襲われ掛けたみたいだし」

「あー…まあ…」

「今回は何もなかったから良かったけど」

「そんな何回もあったら命いくつあっても足りないよ。それに学校行く気もなくなるから」


「なぁ、お前携帯は?」

「持ってるよ」

「教えろ!」

「えっ!?」

「お前と同じ学校だし同じクラスで同じアパートなんだから何かの手助けになるだろう?」



私達は番号を交換しあった。













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