第4話 美人新米教師
ある日、私達の学校に新任の先生が来た。
美人でスタイル良くて、どうやら保健の先生らしいけど ――――
あれだけの先生が保健の先生というのはいかがなものかと思うけど ―――
ある日の事だった。
「なあ、保健の先生美人じゃね?」
「あー、大人の色気ってやつ?」
「そうそう!」
「良いよなぁ~♪」
保健の先生は、あっという間に男子生徒を虜にしていた。
でも、唯一、興味なさそうにしている奴がいる。
駿河 雄平だ。
珍しいと思っていたけど実際に本当の所は知らない。
「なあ、雄平。お前のカッコ良さで先生を落としてみろよ」
「えっ!?いやいや!美人は嫌いなんだよ俺」
「またまた~実は良いなぁ~って思ってんじゃねーの?」
「それはない!」
そんな私達も先生の話で持ちきりだ。
「男子って最低だよねー?」
「本当だよねー!」
「何だよ!別に良いじゃん!」
「そうそう!お前らと違って大人の色気あるんだし!」
「藤原さんには到底無理な話だね?」
≪駿河 雄平!本当!いちいちムカつく!≫
「そうだね~でも、別に美人目指してないし~そういう駿河君こそ興味ないって言ってるけど本当の所どうなの?実はメチャクチャタイプなんじゃない?駿河君レベルならやっぱ美人系か可愛い系がお似合いなんじゃない?」
「俺?俺は美人よりも藤原さんみたいな子がタイプかも?」
ドキッ
「えっ!?」
「な~んて言ってみる?」
ムカッ
≪ムカつく!≫
≪性格バラしてやりたい!この馬鹿男!≫
期待はしないし、しようとも思わない。
ただ、私以外知らない駿河君の性格をバラしてやりたくなる!
「駿河君はモテモテだし~みんなのアイドルだから~私なんかじゃ駄目駄目」
「好きになったら仕方ないんじゃない?」
「えっ?」
「みんなはどう?第一、両方良い人っている?」
「確かにいねーよな?」
「両方良い奴って神様に選ばれた奴しかいないんじゃ?」
「と、なると保健の先生は美人だから性格謎めいてる気がしない?この際、藤原さん怪我して調査してみて」
「自分がしなよ~それとも駿河君女装しちゃう?」
「えっ!?」
「雄平の」
「女装ーー!?」
友達が言った声にクラスに笑いが起こる。
「俺が女装する意味が分からないなぁ~藤原さん」
ピクピクしている駿河君の顔が伺える。
「女子トークで本性暴けば良い話じゃん!」
「だったら…藤原さん男装してみなよ!」
「この際、二人がカップルになりきって二人して怪我すれば分かるんじゃねーの?」
「カップルぅぅっ!?」
駿河君と私は叫ぶ。
「でも…いいかもよ。美人を良い事に男と遊んでるって話だし。男装女装しなくても、そのままで調査は出来るよ」
「つー事でクラス代表でやってみろ!」
「「やだ!」」
私達は同時に言った。
「学校を守る為だと思って!」
私達は騒ぐ。
その結果、私は授業中に偶然に怪我をしてしまい
「大丈夫?」
「うん、取り合えず保健室行って来る」
「うん分かった」
保健室に行くものの先生の姿はなく手当てしていると
「どうかした?」
「あっ!先生。足怪我しちゃって!」
「まあ、本当。酷い傷ね」
先生は手当てをしてくれた。
放課後、先生に来るように言われ足を運んだものの、何やら怪しい会話が聞こえていた。
「………………」
「先生、待って下さい!」
「静かにしないとバレちゃうわよ♪あっ!鍵かけなきゃ!」
私は身を隠す。
ガチャリと鍵が閉まった。
≪……嘘……まさか……≫
≪ていうか…先生から放課後来てって言っといてあり得ないんだけど?≫
私はしばらく近くで待機していた。
そして、保健室が開く。
男子生徒が出てきた。
「…マジ最高♪」
「………………」
「失礼します」
「あら?」
洋服を整える先生の姿。
「どうかした?」
「ガーゼ替えて貰おうと思いまして」
「そうだったわね。座って」
「あの…先生の美人の秘訣って何ですか?」
「えっ?急にどうしたの?」
「いや、先生美人だから学生の時から目立っていたんじゃないかな?って」
「そうでもないわよ?」
「そうですか?」
「そうよ。はい終わり」
「ありがとうございます」
「ねえ…」
「はい?」
「あなたのクラスに駿河君っているでしょう?」
「駿河君?あ、はい」
「駿河君って彼女いるのかしら?」
「さ、さあ?どうなんでしょう?私、転入生なんで…ここの学校の事とか余り分からなくて。モテモテらしいのは知ってますけど」
「やっぱり?カッコイイし無邪気な感じ、可愛い系男子だものね。人気あるのは当たり前よね? 先生、あーいう子大好きなの♪」
「そうですか……」
「あっ!これ内緒ね♪」
「はい……そ、それじゃ失礼します。ありがとうございました」
「いいえ~」
私は保健室を後にぼんやり教室に戻る。
≪タイプ……いやいや、本性知らないから≫
≪ある意味、二重人格だし!≫
教室の出入り口に差し掛かった時だ。
ドンッと誰かとぶつかった。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
「ごめん!」
二人同時に言う。
顔をあげる視線の先には
「駿河君っ!?」
後ずさりすると同時に駿河君の制服のボタンに私の髪が絡まっている事に気付く。
「えっ?……髪が……」
私は無理に取ろうとした。
「馬鹿っ!動くな!余計に絡まるだろ!?」
「切って良いよ」
「辞めとけよ!」
「どうって事ないし」
「良いから!じっとしろ!」
「やだ!」
「お前なぁ~」
抱きしめられてる訳じゃないのに不思議な感覚。
体が触れ合うか触れあわないかの距離感。
「ねえ」
「何?」
「駿河君、あの美人の先生のお気に入りみたいだけど?」
「えっ!?」
「それに……噂は本当っぽいよ」
「何で?」
「私、足怪我して放課後にまた先生に来るように言われて保健室行ったら男子生徒といる所見たし。鍵掛けてしばらくして男子生徒は保健室を出て行った」
「えっ?お前悪趣味?何、ヤってる見たの?いや、見てたの、の間違い?」
「違っ!ヤってるとか……ていうか見てないから!入る前に鍵が閉まったの!痛い!」
「じっとしねーから!ほら、また絡まったし!」
「もう良いよ……髪すぐに伸びるからハサミで切って!」
「あーもう!面倒くせーな!」
「だから切って良い……」
ブチッとボタンを制服から引きちぎった。
「ボタン事お前にくれてやる!切りがねーし!じっとしねーから!で?バレたの?」
「えっ?すぐに隠れたからバレてないみたいだけど」
ボタンに絡まった髪が解ける。
「………………」
≪あ、ボタンちぎっちゃたんだ≫
「つーか……狙われてる俺って……」
「モテモテ君は大変だね~」
「つーかさ、何で、あの女がそういう事言ってきた事が気になるんだけど!」
私は保健室の事を話した。
「なるほど!じゃあ無邪気な俺しか知らないから。おもしれーじゃん!」
「えっ?」
「場合によってはお前に協力してもらうから」
「えっ!?私は転入生で、駿河君がモテモテって事は知ってるって言ったけど、彼女がいる事知らない事になっている私が何故?」
「何かあった時お前、俺の彼女役だからな!」
「やだ!断る!」
私達は騒ぎつつ帰る事にした。
アパートでの別れ際
「ブレザー貸して」
「どうして?お前は変態趣味あんの?」
「あのねーっ!ないから!ボタンつけてくるから貸してって事」
「別に良いし!」
「駄目だよ!モテモテ君だからきちんとしときなって」
「はいはい。奥さん」
「お、奥さんじゃないから!」
クスクス笑う駿河君。
パサッ
私に羽織らせ、頭をポンポンとした。
ドキッ
「じゃあ宜しく!藤原 梨生さん」
ムカつくけど、こういう事を平気でしてくる。
私達は別れた。
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