第2話 恐怖の帰り道
ある日の放課後 ―――
「駿河君、ちょっと起きてよ! 放課後」
机に顔を伏せ寝ている彼・駿河君を起こす。
「あ、ごめん」
目を覚ます駿河君。
「…つーか…お前、何してんの?」
「掃除」
「いや、それは見れば分かるし!お前、当番じゃないはずだけど?」
「代わったの」
「代わった?」
「うん。用事あるから代わってって頼まれて引き受けた。どうせ暇だし」
「馬鹿じゃねーの?」
「ば、馬鹿……?」
「馬鹿は馬鹿だろう?そんなの適当に断れば?」
「転入生は大人しく従うべし!生意気って思われたくないし!」
「…やっぱ馬鹿」
「何?さっきから馬鹿、馬鹿って。駿河君、馬鹿しか知らないんだ。第一、馬鹿って言う人が馬鹿なんだよ」
「うるせーな!馬鹿に馬鹿と言って何処が悪いんだ?言っておくけど…」
グイッと手首を掴み引き寄せる駿河君。
ドキッと胸が大きく跳ねる。
「俺は、お前よりはマシだと思うけど?」
そう言うと手首を離し帰り始める。
「…何?嫌な感じ…モテモテなのが気がしれないんだけど…」
「俺は好きでモテてねーんだよ!」
「だけどモテモテなんでしょう?…しかも性格使い分けてる感じだし」
「…あー、お前しか知らない俺な」
「…えっ…?」
「それは本当(マジ)だから」
頬笑む駿河君。
ドキッ
胸が大きく跳ねる。
「じゃあな。気を付けて帰れよ!…それとも…一緒に帰る?藤原 梨生さん」
再び頬笑む駿河君。
ドキッ
「結構です!モテ男と帰ったりしたら周囲の目が怖いから!」
クスクス笑う駿河君。
「そうだよね~転入生だもんね~藤原 梨生さんは。それじゃまた」
笑顔を見せ帰って行く駿河君。
「明らかに絶対からかってる!クールだったり無邪気だったり…調子狂う…」
それから数日後 ―――
「あ、あの…すみません」
「はい」
「駿河…先輩…いますか?」
「駿河君?いるよ。ちょっと待ってね」
私は男友達と話している駿河君の元へ。
「駿河君、廊下。人が呼んでる」
「誰?」
「女子生徒。駿河先輩って事だから1年生でしょう?」
「お前、また告白?」
「マジ、どんだけ呼び出し?」
「お前用のポスト作ってた方が良くね?」
「じゃあ、藤原さん作って!」
と、駿河君が冗談を言ってきた。
「私?いや、無理だから。私、転入生だから良く分からないけど、そんなにモテモテなら駿河君がマイポスト作るか持ち歩いた方が良いんじゃないかな?」
「ぶっ…アハハ。ナイス藤原!」
「それ良いんじゃね?」
「女子も呼び出さなくて済むし」
「そうそう!」
私以外、知らない駿河君の性格。
今、絶対ムカつくって思っている事が想像つく。
同じアパートの住人の特権だろうか?
逆に弄り甲斐があるかもしれない。
それから数か月ヶ過ぎ学校にもなれクラスの女子生徒と寄り道する機会が増えるのだった。
そんなある日の学校帰り ―――
「梨生ちゃん、真っ暗だけど平気?」
「うん大丈夫だよ。またね!」
「うん、またね!」
私達は別れる。
帰っている途中の事だった。
グイッと誰かが背後から口を塞ぐと車の後部座席に引き摺られるように乗せられた。
「や、やだ!な、何!?」
相手は私を押え付けた。
「は、離してっ!」
抵抗し暴れている私の足がどうやら相手の股間に偶然当たったようだ。
私は車から慌てて降り走って無我夢中で帰る。
アパートの建物に入り、閉まり掛けているエレベーターに駆け込んだ。
「うわっ!ビックリした!」
「す、すみません…」
私はエレベーターの側面に寄り掛かった。
「藤原?」
「…えっ?…あっ、駿河君…だったんだ…ごめん……」
「……大丈夫か?」
「えっ?あっ、うん大丈夫だよ」
「………………」
エレベーターが止まる。
「……ここ……2階だよね……」
「ああ」
「あれ?私…ボタン押したっけ?」
「俺が押したけど?」
「そうだったんだ。ごめん……ありがとう……」
グイッと引き止め駿河君も降りた。
「何かあったのか?制服乱れてるけど」
「えっ!?あー、ごめん……色気ないのに…暑かっただけだから。大丈夫」
「だったら良いけど……今、女子高生狙いの事件起きてるし」
「そうなんだ!気を付けないといけないね。それじゃ」
私は走り去った。
「藤原っ!…明らかにおかしいだろう?」
俺は気にはなっていた。
血相変えてエレベーターに乗り込んできた彼女の行動に何かあった気がしてならなかった。
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