遺跡とダンジョン 8

 タワーブリッジにお風呂を作り、入浴をする。

 お風呂を上がると、僕らはキャンプをする為に最初の塔へと戻った。



 階段を上り、キャンプ場で夕飯の支度をし始めると、マクダさんがニコニコとしながら僕に聞いてくる。


「今晩の晩ご飯は、何がでるのかなぁ?」


 するとタカオがこう言った。


「今日は疲れたから、簡単やヤツでいいぜ。そうだな、チャーハンとかどうだ?」


「既に炊いてあるお米があるから、簡単にできると思うよ。じゃあ、適当に食材を入れて作っちゃうね」



 鍋の神器、エルビルト・シオールに、中華鍋に変身してもらい、まずはタマネギを細かく切って炒める。

 タマネギが飴色あめいろに変ってきたら、タマゴを落とし、タマゴに熱が伝わり始めたら、ご飯を入れてフワッと空気を入れながら鍋を振っていく。

 チャーシューは無いので、以前に作ったワイルドボアの角煮を、少し大きめに切って入れる。

 塩、コショウ、醤油で味を整えれば、5分とかからずチャーハンの出来上がりだ。



 皿に盛り付けると、マクダさんがすぐに口に放り込む。


「ん~、おいしぃ。これ、最高だねぇ」


「パラパラで、ふわっとした食感だ。チャーハンとして完璧だな」


 ガツガツとタカオがチャーハンを口にかき込む。

 みんなに少し遅れて、僕も食べ始めた。口の中に入れると、チャーハンがほどけて旨みが広がる。角煮をつかったので、味付けは少し甘辛い感じだ。



「ユウリくん、おかわりぃ~」


「ユウリ、こっちもだ」


 味わって食べていると、2人からおわかりを要求された。チャーハンはかなり多めに作っておいたので、2人によそう。チャーハンは食べやすいせいか、よそったそばから消えていった。



 3度ほどおかわりを終えると、ようやく2人は落ち着いたようだ。


「うう、調子に乗って食い過ぎた。もう動けねぇ~」


 伸びているタカオを横に、マクダさんが真面目な顔で、話を始める。


「食事がおいしくて、何日もここに居たいけど、明日の午後には帰らないとねぇ」


 すると、タカオが寝転がったままで反論してきた。


「マクダのあねご、せっかくここまで来たんだから、攻略していきましょうぜ」



 マクダさんがタカオに言い聞かせるように語る。


「いや、これ以上、日にちが経つと、ギルドの職員さんが心配するよ。とりあえず報告をしに、いったん戻ろう。本格的な攻略は、後であらためてもできるからさ」


「う~ん、確かにエノーラさんに心配をかけるのは悪いな。じゃあ、明日の午前中に、1回だけ行けるところまでアタックさせて下さい」


「それなら良いよ。ただし、私やユウリくんが、これ以上は危険だと判断したら、そこで終りだからね。ユウリくんもそれで良い?」


「ええ、それでかまいません」



 マクダさんと僕がOKをすると、タカオがその気になったようだ。スクッと立ち上がる。


「よし、ユウリ。入場料の小銭を貸してくれ、ダンジョンに1人で行ってくる」


「えっ、1人でなんて危険だよ」


「大丈夫だって。地下2階のトレーニングエリアまでしか行かない。明日の本番の為に、罠の位置を予習しておくだけだから」


「うーん、でも……」



 僕が渋っていると、マクダさんがタカオの後押しをする。


「行かせてあげなよ。地下2階までは安全だと分ってるし」


「……わかりました。本当に地下2階までだからね」


 僕がタカオに小銭の入った袋を渡す。


「分ってるって。俺も1人で突っ走って、死にたくはないからな。約束は守るぜ!」


 そう言いながら、走って塔の階段を降りていく。



 僕が心配そうにタカオの行った方向を眺めていると、マクダさんが声をかけてくる。


「私らは一足先ひとあしさきに寝ていようか。冒険者として、休んで明日に備えるのも必要だよ」


「……そうですね。少し横になっておきましょう」


 横になって、体を休めつつ、タカオが戻ってくるのを待つつもりだったが、疲れているのとお風呂に入ったせいで、いつの間にか寝てしまった。



 翌朝、日が上がって来て、僕は目覚める。

 タカオの姿が見えないのだが、トイレだろうか?


 ひとりで朝食の準備をしていると、タカオがトイレから戻ってきたようだ。


「おかえりタカオ。今、朝食を作っているんだけど…… どうしたの?」


 血走った目でタカオは答える。


「バッチリ、罠の位置を覚えたぜ! 飯を喰って早く行こう!」


「もしかして寝てないの? それなら、少し寝てから行かない?」


「いや、ダメだ。忘れちまう、すぐに行こう!」


「……待ってね、マクダさんを起こしてくるよ」


 僕はマクダさんを起こして、冒険に行く準備をする。

 徹夜明てつやあけというコンディションで、ダンジョン攻略は出来るのだろうか……

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