遺跡とダンジョン 1

 ジェフリーさんの牧場から戻り、数日が経った。街は相変わらず平和で、僕たちはジャッカロープを駆除するクエストをこなしていた。

 この日は朝から歩き回り、3匹ほど狩ると、昼過ぎにギルドへと戻ってきた。


「さて、昼飯を食おうぜ、今日のランチは…… ソーセージとマッシュポテトか。おばちゃん、ランチを二つ」


「あいよ。二つで銀貨1枚だよ」


 2人分で銀貨1枚を渡す。日本円に直すと1000円くらいだろうか。お金を渡し、引き換えにランチのプレートをもらう。

 プレートには、パンと大きなソーセージ、あと山盛りのマッシュポテトが乗っている。あいかわらず値段の割りにボリュームが凄い。体力勝負の冒険者ギルドらしい食事だ。



 食事を持って、そこら辺の席に着くと、タカオが僕に言ってくる。


「ユウリ、チーズを出して、マッシュポテトにかけてくれ」


「良いよ。すこし温める?」


「もちろん」


「じゃあ、一瞬の炎で温めよ『火柱ファイヤーピラー』」


 マッシュポテトにチーズを乗せて、魔法を唱えると、一瞬でチーズが溶けて、軽く焦げ目がついた。簡単な料理なら一瞬でこなせる、魔法って本当に便利だ。



「「いただきます」」


 食事をしながら、タカオが話しかける。


「このチーズはやっぱりうめぇな。ところで、明日の冒険はどうする?」


「明日もジャッカロープの狩りだよ。今度は北西の方へ足を伸ばしてみようと思ってるんだ」


「またジャッカロープかぁ…… 他に何か冒険は無いのかよ……」


「掃除とかの依頼ならあるけど」


「……掃除は辞めてくれ。それならまだ輸送のクエストの方が良い。旅が出来るからな」


 そんな話をしていると、エノーラさんがランチのプレートを持って、隣に座ってきた。どうやらエノーラさんも、ちょうどお昼休みらしい。



耳寄みみよりな情報がありますよ。マッシュポテトにチーズをかけてくれれば、おおしえしましょう」


 そう言って、エノーラさんがランチプレートを突き出してくる。


「ユウリ、チーズをたくさんお掛けしろ」


「わかったよ。一瞬の炎で温めよ『火柱』」


 少しチーズを多めに出して、火であぶる。すぐに美味しそうな匂いが漂ってきて、それにつられてエノーラさんが食べ始めた。


「これはかなり上質なチーズですね。ポテトとの相性も最高です」


 かなり熱いと思うのだが、エノーラさんは次々と口に放り込んでいき、あっという間に食べ尽くした。



 食べ終わると同時に、タカオがエノーラさんにせまる。


「エノーラさん、それで耳寄りな情報って何なんだ?」


「こちらのクエストですね。これからこの依頼を、掲示板に張る所でした」


 そう言って、依頼書を見せてくれる。そこには『遺跡とダンジョンの調査』と書いてあった。



「おっ、ダンジョンか! やっぱり冒険者と言えば、ダンジョン攻略だよな!」


 タカオが興奮気味こうふんぎみになると、エノーラさんが落ち着かせるように言う。


「新たに遺跡が見つかっただけです。まだダンジョンは確認されていません」


 僕が質問をする。


「依頼には『ダンジョンの調査』とありますけど?」


「遺跡があると、その付近にダンジョンへの入り口がある場合が多いのです。確率的には、だいたい9割以上でしょうか」


「なるほど、遺跡があると、だいだいダンジョンが見つかるわけですね」


「ええ、そうです。見つけたダンジョンが大規模だった場合は、本格的な調査は後日となりますね。何ヶ月、何年と、攻略に掛かる場合もありますから」



「俺がその依頼を受けよう! そして、あっという間にダンジョンの攻略をしてやるぜ!」


 タカオが強く言い切ると、それをエノーラさんが否定をした。


「いいえ、ダメです。このクエストは、冒険者レベルが『C級』以上でないと受けられません。あなた方はまだ『D級』です」


「そ、そんなぁ~」


 膝から崩れ落ちるタカオ。そんなにもダンジョンに行きたかったのだろうか……



 なんとかならないか、僕が聞いてみる。


「僕らがそのクエストを受ける方法はあるんですか?」


「二つ、方法があります。一つは冒険者レベルを上げる方法です。しかしこの方法は、どんなに早くても数ヶ月かかるでしょう。もう一つは、『C級』以上の冒険者が依頼を受けて、それに同伴どうはんする方法ですね。こちらは回復魔法が使えるユウリさんが居ますので、比較的、他の冒険者に声を掛けやすいかと思います」


 それを聞いてタカオがやる気を出す。


「よし! 高レベルの冒険者に声をかけて、同伴してもらえば良いんだな。エノーラさん、条件に当てはまる冒険者を紹介してくれ! できれば若い女性の冒険者で!」


 さすがタカオだ。こんな状況でも女性と親しくなるという下心を忘れない……


「女性ですか? その条件だと、かなり限られますね…… あっ、あそこに居る方はどうでしょう。C級冒険者のマクダさんです」


 エノーラさんが指さした先には、大柄の女性が居た。

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