新しいスキルの効果 2

 スキルをいくつか試したが、あまり戦闘能力が上がっていない事に気がつくと、僕たちはいつもの様に、タカオが注意をきつけ、僕がトドメを刺すという狩り方に戻す。

 2匹ほどジャッカロープを倒した後、お昼をつげる鐘の音が、街の方から聞えてきた。


「おっ、もう昼か。昼飯にしようぜユウリ」


「わかったよ。じゃあ、居住馬車を出すね」


 道端みちばたに居住馬車を設置すると、僕たちは中に入った。



 部屋の中に入ると、収納魔法から今日のお昼を取り出す。屋台で買った羊肉の串焼きと、昨日の夜に炊いたご飯だ。さらにテーブルの上にIHヒーターのような『赤熱せきねつ石板せきばん』を出し、普通の鍋で、味噌と乾燥ダシ、昨日のカレーの食材の残りを使って、簡単な味噌汁みそしるを作る。


 具材が煮えてきて味噌汁が出来上がると、いよいよ食事だ。


「「いただきます」」


 羊肉にかじりつくと、中から肉汁があふれ出てきた。なにかのタレで味がついていて、意外とご飯に合う。

 タカオは味噌汁をズズッっと吸い込んで言う。


「味噌汁も美味いよな。やっぱ日本人には味噌汁だろ」


「まあ、ほとんどインスタントみたいなものだけどね」


「そういえば、ユウリが作るところをみてたけど、味噌汁って乾燥ダシとか使うんだな」


「あっ、うん、そうだよ。元の世界だと、味噌にダシが入ったヤツもあるけど、ここじゃ無いと思うから」


「そうなんだ。俺は味噌汁って、味噌だけで作ると思ってたぜ」


 やはりタカオは料理の知識がほとんど無いようだ。料理は全て僕がしなくてはならないだろう……



 僕が1回、タカオが2回ほどおかわりをして、昼食が終わった。


「あー、もう食えない。ちょっとゆっくりして行こうぜ」


「そうだね。あっ、そういえば、薬草の本を借りていたんだった。ちょっと読み直してみようかな」


 食後の休憩時間に、図書館から借りてきた本を読む。窓の外には畑と森、そして草むらが広がっている。僕はソファーに座りながら、本と草を見比べる。もしかしたら、何かの薬草があるかもしれない。


 本をパラパラとめくっていると、一つの薬草が目に止まった。どうやら『チビヨモギ』という、傷薬になる薬草が生えているようだ。


「タカオ、そろそろ休憩を終わらせない? すぐそこに薬草があるから、採取さいしゅしてから、またジャッカロープの狩りに戻ろうよ」


「いいぜ、おっと、その前にトイレを済ませたいな」


「分ったよ。じゃあトイレを出すね」


 僕は倉庫魔法で居住馬車をしまってから、移動式のトイレを出す。このトイレは『洗浄』の生活魔法で、いつまでも綺麗に保てる、とても便利な魔法道具の一つだ。できるならコレを現代社会にも持ち込みたい。



 タカオが用を済ませた後、ついでに僕も済ませてからトイレをしまう。

 その後は、薬草採取に取りかかる。僕はタカオに本の図を見せながら、説明をする。


「ええと、ここら辺に『チビヨモギ』という薬草が生えているみたいだから、それを集めようと思うんだ。採取の仕方は、下から半分くらい残してみ取れば、また成長してきて、繰り返し採取ができるみたい」


「へぇ。この草の上半分を集めれば良いわけだ。俺に任せろ!」


 僕らは二手に分かれて採取を始める。


「おっ、ここにも生えているな、こっちにも生えてるぞ」


 タカオが次々と薬草を集めていく。どうやらここら辺は、『チビヨモギ』の群生地だったらしく、簡単に見つける事が出来た。



 それぞれ20分ほど採取を続けていると、両手一杯に『チビヨモギ』を抱えたタカオが、僕の方へ近寄ってきた。


「ユウリ、この薬草を倉庫魔法で格納してくれ」


「いいよ。はい、格納したよ。まだまだ『チビヨモギ』が生えているね」


「ああ、うん。そうなんだが、摘み取るのがちょっと飽きてきた。薬草は、そんなに金にならないみたいだし、そろそろ切り上げないか?」


「でも、もうちょっとだけ採取を続けない?」


「うーん…… あっ、そうだ! 倉庫魔法で直接、薬草を倉庫に格納するっていうのはどうだ?」


「えっ、それは無理なんじゃないかな? 生き物は格納できないみたいだし」


「それだったら、ジャガイモやニンジンだって生きていて、格納できないハズだろう? とりあえず出来るかどうか、やってみようぜ!」


「うん、じゃあやってみるね。倉庫魔法で、ここら辺のチビヨモギの草の、上の半分だけ格納っと」


 僕がそう言うと、密集していた草むらの上の方がなくなって、さっぱりと視界が開ける。これを見て、タカオがあきれながら言う。


「なんか草むらがゴッソリ無くなったぞ。だいぶ格納したみたいだな、もう薬草集めは充分だろ」


「……うん、そうだね。そう思う」


 薬草を採り終えた僕らは、再びジャッカロープの狩りに出発をする。

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