経験値稼ぎ 2

 食事が終わると、少し休憩をして、僕らはキャンピングカーのような居住馬車きょじゅうばしゃを出る。


「さあ、狩りまくって、今日中にレベルを上げようぜ」


 急ぐタカオに、僕が軽く忠告をする。


「まあ、無理をしないくらいで行こうよ。冒険者になって、まだ2日目なんだし」


「うーん、そうだな。じゃあ、レベルが上がらなくても、日がかたむいて来たら帰ろうか」


 そんな話をしながら、僕が倉庫魔法で居住馬車を格納する。休憩が終り、再び狩りの時間が始まった。



 僕らは畑沿いの道を散策さんさくしていると、偶然にもジャッカロープの群れに出くわした。どうやら縄張り争いをしているようで、二つのグループがにらみ合って威嚇いかくし合っている。


一網打尽いちもうだじんにしてやるぜ!」


 タカオはそう言いながら、両手にそれぞれ剣とナイフを持ち、二つの群れの中心に突っ込んで行く。おそらく両方のグループを同時に相手にするつもりなのだろう。


 そして、中央に突っ込む。すると、両方のジャッカロープが、同時にタカオを攻撃してきた。

 タカオは両側からの攻撃を、華麗かれいさばける…… ハズも無く、両側から角で激しくつつかれる。


「いた、いたた。二人がかりとは卑怯だぞ。ちょ、まっ、まって。た、助けて、ユウリ」


「分ってるよ。『回復の息吹ヒール』」


「あ、ありがとう。いや、そうじゃなくて」



 タカオへの攻撃から始まった戦闘は、いつの間にか群れの全体にも拡大していた。あちこちでジャッカロープ同志が、激しく角を打ちつけている。僕は回復役なので、あまり前に出て戦闘に巻き込まれるのは得策ではないだろう。


「タカオ、僕は後方支援に回るから、前線は任せるよ」


「えっ、ちょっと…… ああ、もう、こうなったら、やってやる!」


 戦闘は殴り殴られの、泥くさい戦いになった。角で叩き合い、HPヒットポイントを少しずつ削る持久戦だ。それぞれの体力が減っている中、タカオのHPだけ僕が回復させているので、そのうち決着がつくと思う。



 やがて、長い戦闘が終わり、二つのグループはそれぞれの方向へ逃げていった。

 激しい打ち合いの後には、ジャッカロープの死骸が6体ほど残されている。切り傷もいくつかあるので、タカオの攻撃も当っていたようだ。


 タカオが息を切らせながら言う。


「はぁ、はぁ、やってやったぜ!」


「怪我はない? 大丈夫?」


「ああ、ユウリが定期的にヒールを掛けてくれていたらか平気だと思う。一応、ギルドカードで確認してみるか」


 ギルドカードは、魔法の効果で、HPやMP、状態異常などをリアルタイムで表示してくれる、とても便利なアイテムだ。


「HPは大丈夫だ、最大値のままになっている。あれ? HPの最大が増えてるぞ、もしかして…… レベルが上がっている!」


「ちょっと見せてよ」



 僕はタカオのカードを見せて貰う。すると、最大HPが12だったはずが、16に増えていた。もちろんレベルの数字も2に上がっている。


 もしかして、僕も上がっているのだろうか?

 ギルドカードを見てみると、僕は最大HPが22だったが、34に増えていた。


 僕のギルドカードを覗き込みながら、タカオが言う。


「HP34って、俺の倍あるじゃん」


「ま、まあ、神様だから少し優遇されているのかも。あっ、ここにスキルポイントとかあるよ、これで何か新しくスキルが覚えられるかも」


「お、良いね。それじゃあ、さっそくギルドに戻って、スキルを習得しようか」


 僕らは近くにあったジャッカロープの死骸を倉庫魔法で収納すると、街へと帰りはじめた。

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