経験値稼ぎ 1

 買い物が終わると、だいたい10時半くらいだろうか。僕たちは弁当を買い込んで、ジャッカロープの討伐へと出かけることにした。


 門番さんに挨拶をして、城門の外に出る。

 畑沿いの農道のうどうをあるきながら、タカオが僕に言った。


「今日は何匹狩れるかな? 大金を使ったから、稼がないとな」


「そうだね。あの馬車の分は頑張って稼がないと。宿代とかもあるから、一日あたり3~4匹くらいは狩りたいね」


「ウサギなんて雑魚ざこモンスターとかじゃなく、もっと稼げる強いモンスターが相手ならなぁ」


「まだ僕らじゃ無理だよ。あっ、そうだ。こんどジャッカロープを探しながら、薬草も探してみない。それなら同時にクエストが進行できると思うよ」


「薬草か…… いまいちパッとしないけど、まあ、しょうがないか。おっ、あそこに一匹目のジャッカロープを発見! やあやあ、我こそは漆黒しっこく堕天使だてんし、タカオなり! いざ尋常じんじょうに勝負だ!」


 タカオがそう言いながら、刀を抜いてジャッカロープに突っ込んで行く。ジャッカロープは逃げる様子も無く、頭に生えた鹿の角を構えると、タカオに向って突進してきた。


 ガキンともの凄い音がして、刀と角の打ち合いになった。



 しばらく様子を見ていると、やはりと言おうか、タカオが押され始める。ジャッカロープの打撃の方が、かなり強いようだ。


「ユ、ユウリ、助けて、こいつ力が強い!」


「ええ? 『尋常じんじょうに』って言ってたから、僕が手を出しちゃまずいんじゃないの?」


「なにを言っているんだ。俺たちはコイツを倒して金を稼がないといけないんだぞ! は、はやく横から殴って倒してくれ!」


 不意打ちのようで悪いが、僕はジャッカロープの死角から、一撃をふり下ろす。

 ジャッカロープは、グゥ、と一言、泣き声を上がると、動かなくなった。死んだようなので、さっそく倉庫魔法で中にしまう。


「さすがだぜ、ユウリ。この調子でガンガン狩ろうぜ」


 タカオは笑顔で親指を立てながら、僕に言う。ただ、腕の筋肉が、かなり疲労しているらしく、プルプルと震えていた。



 この後、さらに2匹ほどジャッカロープを狩り、僕らはお昼休みを取る事にした。昼食を取り出そうとすると、タカオが目を輝かせながら言う。


「なあユウリ、せっかく『居住馬車きょじゅうばしゃ』を買ったんだから、使ってみないか?」


「それもそうだね。使わないともったいないよね」


 道端の空き地のスペースに、倉庫魔法で居住馬車を出してみると、馬車は音もなく現われた。

 僕らは馬車に付いている小さな階段を上がり、ドアから中へと入る。すると、そこは別荘のような居住空間が広がっていた。窓の外には絵画のような田園風景でんえんふうけいが広がる。


「ユウリ、テーブルの上に飯を出してくれ。外の景色をみながら食べよう」


「わかった、今、並べるね」


 屋台で買った弁当と、川魚の串焼きをテーブルの上に並べた。僕の倉庫魔法の中では、ほとんど時間が止まっている。取り出した弁当からは湯気がでて、串焼きからは香ばしい匂いが漂って来る。



「あー、馬車に、ちょっと匂いが付いちゃうかもね」


 僕がそう言うと、タカオは明るく笑いながら言う。


「匂いなんて気にせずに楽しもうぜ。それより、早くしないと弁当が冷めちまう」


「そうだね、では、いただきます」


「いただきます」


 お弁当は、餅米入りの麦飯を、チキンライスのように味付けしたものだった。もちもちしていて、なかなか美味い。魚の串焼きは、オリーブオイルが塗ってあってうまみがあり、こちらも美味しく頂いた。

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