女神の実力 2

 骨折をヒールで治した後、僕が治療費を決めるみたいな流れになってしまった。

 上級のヒーラーを雇うと、金貨20~40枚が相場らしい。



 僕は親方とエノーラさんに向って言う。


「治療費は、僕が決めるんですか? それじゃあ、金貨2~3枚で良いんじゃないでしょうかね?」


 これでも2~3万円くらいの収入になる。僕はちょっと『ヒール』をしただけだし、これでも充分だろう。


「はぁ? 安すぎだろ!」「あなた正気ですか?」


 親方とエノーラさんの二人から突っ込まれた。そんなに安かったのだろうか?


「え、ええと、じゃあ金貨5枚くらいで……」


「お前なぁ、命に関わる大怪我を治したんだぞ。都会の司祭の連中は、大したことない怪我にヒールをかけて、金貨10枚とか20枚とかふっかけてくるんだ。これは大した怪我なんかじゃなく、大怪我だったんだぜ。それに骨折したら、普通はギプス生活で、1ヶ月はまともに仕事ができねぇ。それを一瞬で直しちまったんだぞ。お前は胸を張って、もっとふんだくれ!」


「ええと、そ、それじゃあ金貨10枚で」



 エノーラさんがため息を付きながら言う。


「はぁ~、話になりませんね。それではユウリさんのには金貨20枚、仲介料としてギルドの取り分が金貨2枚、合計で22枚でどうでしょうか親方?」


「ああ、まだ安いと思うが、それで構わねぇ」


「では、その金額にしますね。領収書を作りますので、しばしお待ちを」


 この後、エノーラさんが書類を持って来て、僕はサインをする。そして金貨20枚を受け取った。

 お金を払うと、親方は僕に挨拶をして帰っていく。


「そうそう、自己紹介がまだだったな。俺は建築ギルドでマスターをやっているアンドレアンって者だ。また何かあったら頼むぜ!」


 去って行く後ろ姿を見ながら、タカオが言う。


「あのヒールをもらえるなら、俺はかなり無茶をしても平気そうだな」



 気楽に考えているタカオに僕は忠告をする。


「やめてよ。MPマジックポイントの消費とかあるから、そんなに回数を掛けられないと思うよ」


「そういえば、あのヒールは、1回でどれだけMPを消費するんだ? 効果が凄いから、消費も凄そうだな」


「そうだね。一日に使える回数を把握しておきたいね。何かあった時に困るし」


 こんな会話をしていると、僕たちの後ろをたまたま通りかかったエノーラさんが教えてくれる。


「そういった時は、ギルドカードを見て下さい。現在のHPとMPがリアルタイムで表示されています。状態異常の時にも内容が表示されるので便利ですよ」


「「おお~」」


 僕とタカオは感心して声を上げる。さすが魔法が使える世界だ。このカードも魔法の力が働いているのだろう。



 ギルドカードの現在値を確認してみる。


『HP 22/22』『MP 32/32』


「あれ? ヒールを使ったはずなのにMPが減ってない?」


 それを見ると、タカオが僕のギルドカードのスキル欄を指さしながら言った。


「あれだ、スキル『魔力の自動回復』で、MPが回復したんじゃないか。試しにもう一度、俺に回復をかけてくれ」


「わかった『回復の息吹ヒール』」


 タカオにヒールを掛けるとMPが32から27に減った。僕がカードを見ながら言う。


「1回につき5を消費したね。MPの最大値は32だから、一日に使える回数は6回か」


「もっと使えるだろ『魔力の自動回復』があるんだから」


「あっ、そうか。でもそんなにすぐに回復しないんじゃ…… あれ? もう『3』回復している……」


 ギルドカードをジッと観察する。すると、10秒も経たないうちにまたMPが回復して、あっという間に満タンになった。


 タカオが僕にだけ聞えるようにつぶやく。


「チートだな、さすが女神様だ」


 こんなに早くMP回復するなら、気軽に何度でも使える。

 やはり金貨20枚は貰いすぎだった。今度からはちゃんと値段交渉をしよう。

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