初クエスト
タカオが僕の手を引っ張りながら言う。
「クエストを見てみようぜ。あのボードでクエストの一覧が分るハズだ」
僕は手を引っ張られて、掲示板のようなボードの前に来た。
ボードには、様々な依頼の紙が貼り付けてある。
隣町までの荷物の配達、下水道の大掃除、居なくなった猫の捜索、現代社会にあるような依頼から、商隊の護衛、ダンジョンの調査、モンスターの討伐、異世界ならではの依頼も多くあった。
タカオが依頼を見ながら、受けるクエストを選んでいる。
「ドラゴンとかの討伐は…… 無いのか。じゃあ、ダンジョンの調査とかが良いかな」
「そこに依頼が貼ってあるけど、ダンジョンの調査は『Cランク』冒険者じゃないと受けられないよ。僕たちは『Eランク』冒険者なんだから」
「そうか、そうなると受けられるヤツは、荷物の配達か、掃除とかか……
「一度、エノーラさんに相談してみようか? アドバイスも貰えると思うし」
「そうだな。そうしよう」
僕たちは受付に移動した。タカオがエノーラさんに話しかける。
「俺たち、クエストを受けようと思うんだが、何かオススメのクエストはあるかな?」
「それでしたら、この『下水道の大掃除』のクエストが良いと思います。とても安全ですよ」
「違う、そういう一般職でも出来るクエストじゃなくて、もっと冒険者らしいクエストが良い。ダンジョンの攻略とか、モンスターの討伐とか」
「危険性の高いクエストは、初心者にはあまりお勧めできないのですが…… そうですね、これなんてどうでしょうか?」
エノーラさんはそう言って『ジャッカロープの駆除』と書かれた紙を出して来た。これを見てタカオが興奮しながら声をあげる。
「おお、『ジャッカロープ』強そうな名前のモンスターじゃないか。どんな姿をしているんだ?」
「鹿の角が
エノーラさんが両手を使って大きさを示す。その幅はおよそ40~50センチ、だいたい柴犬くらいの大きさだろうか? ウサギとしては大きいと思うが、これなら僕でも何とかなりそうだ。
タカオがウサギと聞いてガッカリしながら言う。
「違うんだ、もっと凶暴なモンスターとか居ないかな?」
「ここら辺に凶暴なモンスターは居ませんね。たとえ凶暴なモンスターが居たとしても『Eランク』冒険者に
それはそうだ。初心者が強いモンスターと戦えば、負けるのは目に見えている。僕はタカオを説得する。
「僕らは駆け出しの冒険者なんだし、最初はこのクエストで行こうよ」
「うーん。まあ、それもそうだな。散歩がてらにジャッカロープを狩り尽くして、さっさと冒険者としてのレベルを上げるか」
タカオが簡単そうに言うと、エノーラさんが忠告をする。
「ジャッカロープの駆除は意外と大変です。臆病な性格なので、すぐに逃げ出しますから」
「大丈夫だ。俺はそれ以上に素早いからな!」
タカオは自信満々に言う。その自信は、どこから湧いてくるのだろう?
エノーラさんがクエスト受注の書類を出しながら確認をする。
「では、この書類に名前の記述をして下さい。『ジャッカロープ』は一匹につき銀貨2枚、そこに死体の買い取り料金が追加されます。死体からは素材として、肉、毛皮などが取れるので、およそ銀貨3~5枚の報酬になります」
銀貨という単位が出てきた。
タカオは書類をザッとみて、サインをしようとする。
「分った、ここに名前を書けば良いんだな。おっ、パーティーで
知らない部分は、エノーラさんが説明してくれる。
「まだパーティーについて説明していませんでしたね。パーティーとしてクエストを受諾すると、入ってくる経験値が公平に分配されたり、人数がそろっていれば冒険の難易度レベルが上のクエストを受注できたりします」
「なるほど、じゃあ俺とユウリが二人でパーティーを組めば、『Eランク』以上のクエストを受けられるわけか」
「いえ、さすがに二人ですと、まだ戦力不足ですね。ただ、今後も二人で行動を共にして行くなら、パーティーでの申請をオススメします」
「よし分った。とりあえずパーティーの形で受けておくか。ユウリもそれで良いだろ?」
「うん、良いよ」
「じゃあ、とりあえずパーティーのリーダーは俺にしておくぜ」
タカオは現地の言葉でスラスラと記入して、僕らの初クエストが決まった。
クエストを受けたタカオは、すぐに出発しようとする。
「さて、クエスト受けたから、さっそく討伐をしに行こうぜ!」
「ちょっと待って、準備とかしなきゃ。それに今は何時くらいなんだろ?」
疑問に思うと、エノーラさんが答えてくれた。
「さきほど11時を告げる教会の鐘が鳴ったので、今は11時15分程度でしょうか」
タカオがギルド内を見回しながら答える。
「じゃあ、ちょっと早いけど昼飯を喰ってからでかけるか。このギルド、レストランみたいな事もやっているんだろ?」
「はい、レストランと宿屋も経営しています。ギルドメンバーなら割引が効きますよ」
「分った。さっそく喰おうぜ」
僕とタカオは腹ごしらえをする。
ここのレストランは、味は普通だったが、量がとてつもなく多かった。さすが冒険者ギルドといった所だろうか。食べきれない物は、僕の倉庫魔法に収納する。
腹が膨れた僕たちは、いよいよ冒険へと出かける。
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