第21話

「「・・・・・・」」


長い長い沈黙。

白のシスターにアイアンゴーレム印の薬を飲ませたのはいいものの何故か一向に目を覚まさないので黒のシスターとの間に重い空気が流れていた。生命の樹液を飲めばすぐさま完全回復するはずではあるのだが・・・・


(まさかユグドラシルの奴パチモンを掴ませよったか?)


だとすると困ってしまった。黒いのの交換条件で救ってやるだのと言ってしまった手前やっぱ偽物でしたと言うわけにもいかない。・・・・次こそ本気で殺されかねん。


「ねぇ」


「ん?なんだ黒いの」


どうしてやろうかと物思いに耽っていると黒いのが声をかけてきた。


「どうして私たちがあんな所に住んでいたのかとか素性も聞かずに助けてくれるの?」


と思えば神妙な面持ちで自身の現状が気にならないのかと問うてくる。確かに気にならないと言えば噓になるが、今の今まで聞くタイミングもなければ聞いたところで自分にはどうすることもできないだろう。


「知らんし興味もない。あの場から逃げおおせただけで我は十分だ」

(というか我のコア人質にしてたのはどこの誰だ?)


「・・・そう。ありがと」


何か小言を言ったような気もするが聞き取れなかったものは仕方あるまい。深く聞くつもりもないので再び沈黙の間を興じる。


―――――数時間後


「起きないじゃないの!!やっぱ変なもの飲ませたんでしょ!私の感謝返しなさい!」


「ぐぬぬぁ!我にもなぜ目覚めぬのかさっぱりなのだ!体力も魔力もしっかりと完全回復しているはずなのだがっ・・・おい白いの早く起きんか――っていない!?」


「お姉ちゃんにぃ、手を出すなぁぁぁぁ!!」


ドゴンというつい先日も聞いたような身体の一部が吹き飛ぶ音が聞こえる。


「体の一部が吹き飛ばされる音をこう何度も聞くことになるとはな・・・だが、良いか悪いかどうやら薬は無事効いていたみたいだ」


平静を装っているが本当に勘弁してほしい。助けてやった相手に殺されるなんて悪い夢どころの話ではない。

フシュー、フシュ―と黒いのの前に立ち、獣のようにこちらを威嚇してくる白いの。不意の一撃で片腕一本持っていかれた時点で状況は不利、約束も果たしたことだしどうにかして逃げるのが賢いか。


「今度こそ息の根を止めてあげる!」


白のシスターはダンと地面を力強く踏み込み一瞬にしてこちらとの距離を詰めると、その勢いのままハンマーを振り上げる。咄嗟にリインフォウォールの魔法で防ごうとするが、魔力はすべて自己修復に回していたため壁を作り出せるだけの魔力はまだ回復していなかったのだった。


「シラス止めなさい!」


「っ!?」


しかし壁を作る事も出来ず無防備なアイアンゴーレムにハンマーが振り下ろされることはなかった。何故なら黒のシスターが前に立ち塞がり、白いのの暴走を止めてくれたからである。

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